現代的形態の奴隷制に関する特別報告者[注1]などの国連の人権専門家[注2]は、2026年1月22日、中国の新疆ウイグル自治区および中国各地におけるウイグル族、カザフ族、キルギス族等の少数民族やチベット人を対象とした国家による強制労働の申し立てが後を絶たないことについて、深刻な懸念を表明しました。以下はその概要です。
1 「貧困緩和」を名目とした強制労働の実態
専門家らによれば、中国政府は「労働移転による貧困緩和」プログラムを義務付け、ウイグル族やその他の少数民族を新疆内外の労働に従事させています。
伝えられるところでは、対象者は組織的な監視・追跡下に置かれ、処罰や恣意的拘禁への恐怖から、仕事を拒否・変更する選択肢がありません。専門家らは、これが国際法上の「人道に対する罪」としての「強制移送」や「奴隷化」に相当する可能性があると警告しています。新疆の5カ年計画(2021〜2025年)では1,375万件の労働移転が予測されていますが、実際の件数は過去最高に達しています。
また、チベット人にも「訓練および労働移転行動計画」が適用され、強制労働の対象とされています。2024年には約65万人が影響を受けていると推定されます。「農村部の余剰労働力」の組織的訓練として、軍隊式の職業訓練といった強圧的な手法が正当化されています。
2 「同意」の強制と文化的アイデンティティの破壊
これらの政策は、少数民族の文化的アイデンティティを強制的に作り変えようとする政府方針の一環であると専門家らは警告しています。
チベットにおける「村全体の移転」プログラムでは、繰り返しの家庭訪問、処罰の示唆、公共サービスの停止といった脅しを用い、居住者の「同意」を強制して立ち退きを迫っています。このプログラムは、住み慣れた土地を離れ、伝統的な農業や遊牧生活を捨てて賃金労働に従事せざるを得ない状況にチベット人を追い込むことで、彼らの言語、宗教、生活様式を侵食し、取り返しのつかない損害と喪失を引き起こしています。
3 世界のサプライチェーンへの影響
専門家らは、強制労働によって生産された製品が、第三国を経由して世界のサプライチェーンに流入している現状に対しても、強い懸念を表明しました。
専門家らは、サプライチェーン規制での対象を絞った貿易制限や人権デュー・ディリジェンスの有効性に疑問を呈しており、中国で事業や調達を行う投資家・企業に対して、自社の事業やバリューチェーンが強制労働によって「汚染」されていないことを確認する責任があるとして、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デュー・ディリジェンスの実施を求めています。また中国に対して、国連の独立した調査団による制限のない現地調査を認めるよう改めて要請しています。
世界人権宣言第4条は、「何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷取引は、いかなる形態においても禁止する」と定めています。伝統的な奴隷制度が法的に廃止された現代においても、強制労働、債務労働、奴隷的条件下での児童労働などは依然として根深い問題です。
「現代的形態の奴隷制」の特徴は、貧困や差別を背景に、地理的・政治的に孤立した脆弱な人々が標的となる点にあります。処罰への恐怖や生存の必要性から、拒否する選択肢のない労働に従事させられるため、外部からの実態把握や被害者自身による告発が極めて困難となっています。
今回警鐘を鳴らした特別報告者は、特定国の人権状況やテーマを調査・監視・報告するため、国連人権理事会から任命された独立した専門家です。彼ら/彼女らは無報酬のボランティアとして活動し、政府や組織から独立した中立的な立場で職務を遂行します。
・現代的形態の奴隷制に関する特別報告者
小保方 智也
・文化的権利に関する特別報告者
アレクサンドラ・クサンタキ
・現代的形態の人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容に関する特別報告者
アシュウィニ・K.P.
・人身取引(特に女性と子ども)に関する特別報告者
シボーン・マラリー
・ビジネスと人権に関する作業部会のダミロラ・オラウィ(議長)、ロバート・マククロコダーレ(副議長)、フェルナンダ・ホッペンヘイム、リラ・ヤクレヴィチエネ、 ピチャモン・イェオファントン
<出典>
<参照>
<参考>
(2026年05月07日 掲載)