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原則3

保護する義務を果たすために、国家は次のことを行うべきである。

(a) 人権尊重し、定期的に法律の適切性を評価し、ギャップがあればそれに対処することを企業に求めることを目指すか、またはそのような効果を持つ法律を執行する。

(b) 会社法など、企業の設立及び事業活動を規律するその他の法律及び政策が、企業に対し人権の尊重を強制するのではなく、できるようにする。

(c) その事業を通じて人権をどのように尊重するかについて企業に対し実効的な指導を提供する。

(d) 企業の人権への影響について、企業がどのように取組んでいるかについての情報提供を奨励し、また場合によっては、要求する。

解説

国家は、企業が常に国家の不作為を好み、または国家の不作為から利益を得ると推定すべきではなく、企業の人権尊重を助長するため、国内的及び国際的措置、強制的及び自発的な措置といった措置を上手に組み合わせることを考えるべきである。

企業の人権尊重を直接的または間接的に規制する現行法が執行されないことは国家慣行上の著しい法的ギャップである。それは、差別禁止法や労働法から、環境、財産、プライバシー及び腐敗防止に関する法にまで及ぶ。したがって、国家は、そのような法律が、現在、実効的に執行されているか、もし執行されていないのであればなぜそのような事態に至ったのか、どのような措置をとれば状況がそれなりに改善するのかについて考察することが重要である。

同様に重要なことは、これらの法令は常に進化しつつある状況に照らして必要な対処ができるか、関連した政策とともにこれらの法令は、企業の人権尊重に資する環境を作りだしているかについて、 国家が再検討することである。例えば、土地の所有や使用に関連する権原を含む、土地へのアクセスを規律するような、法令や政策の分野において明確性をより高めることが、権利保持者と企業の双方を保護するために、必要となることも多い。

会社法や証券法など、企業の設立と継続的な事業活動を規律する法令や政策は、企業の行動に直接的に枠付けをする。しかし、それが人権に対してどのような影響を持つかということについては、ほとんど理解されていないままである。例えば、会社法や証券法において、会社及びその管理職が人権に関して何を求められているのかということは言うまでもなく、何を許されているかに関しても、明確な規定はない。この分野の法令や政策は、取締役会など既存の統治組織の役割に配慮しながら、企業が人権を尊重できるように十分な指導を提供すべきである。

人権尊重に関する企業への指導は、結果として何が期待されているのかを示し、最良の慣行の共有を促進すべきである。そこでは、人権デュー・ディリジェンスを含む適切な手法や、先住民族、女性、民族的または種族的少数者、宗教的及び言語的少数者、子ども、障がい者、及び移住労働者とその家族が直面する具体的な課題を理解したうえで、ジェンダー、社会的弱者、及び/または排斥問題をいかに実効的に考慮するかについて助言すべきである。

パリ原則に基づいた国内人権機関は、関係法令が人権義務に合致し、実効的に執行されているかどうかについて国家が確認するのを助け、人権に関する指導を企業や他の非国家アクターにも提供するという、重要な役割を有している。

人権への影響にどのように取り組んでいるかについての企業からの情報提供は、影響を受けるステークホルダーとの非公式なエンゲージメントから公式な報告書による公表まで幅広い。国家がそのような情報提供を奨励し、また場合によっては、要求することは、企業による人権尊重を促進するために重要である。適切な情報を伝えることを促すための方策のひとつに、司法または行政手続の過程でなされる自発的な報告に重きを置く規定がある。情報提供を求めることは、事業活動の性質または活動状況が人権に対し重大なリスクをもたらす場合には特にふさわしいであろう。この分野における政策や法律は、情報へのアクセス可能性及びその内容の正確性双方を確保することに役立つとともに、企業が何をどのように伝えるべきかを役に立つように明らかにすることができる。

どんな情報提供が適切であるかについての規定は、人と施設の安全や保安、正当な商取引守秘義務、及び企業の規模や構造が同じでないことに与えるリスクを考慮すべきである。

財務報告が触れなければならないのは、人権への影響が、場合によっては企業の経済的パフォーマンスに対し「重要」または「顕著」となることを明示することである。