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原則17

人権への負の影響を特定し、防止し、軽減し、そしてどのように対処するかということに責任をもつために、企業は人権デュー・ディリジェンスを実行すべきである。そのプロセスは、実際のまたは潜在的な人権への影響を考量評価すること、その結論を取り入れ実行すること、それに対する反応を追跡検証すること、及びどのようにこの影響に対処するかについて知らせることを含むべきである。人権デュー・ディリジェンスは、

(a) 企業がその企業活動を通じて引き起こしあるいは助長し、またはその取引関係によって企業の事業、商品またはサービスに直接関係する人権への負の影響を対象とすべきである。

(b) 企業の規模、人権の負の影響についてのリスク、及び事業の性質並びに状況によってその複雑さも異なる。

(c) 企業の事業や事業の状況の進展に伴い、人権リスクが時とともに変りうることを認識したうえで、継続的に行われるべきである。

解説

この原則は、人権デュー・ディリジェンスの大枠を定義し、一方で原則18から21ではその不可欠な構成要素を詳細に述べる。

人権リスクは、企業の人権に対する潜在的な負の影響であると理解される。潜在的な影響は防止あるいは軽減することを通して対処されるべきであり、一方で、現実の影響-既に生じたもの-は是正の対象となるべきである(原則22)。

人権デュー・ディリジェンスが、単に企業自らに対する重大なリスクを特定し、対処するばかりではなく、権利保持者側に対するリスクをも含むのであれば、これをより幅広い企業のリスクマネジメント・システムのなかに入れることができる。

人権リスクは、契約やその他の合意が形作られる段階で増大または軽減されうるものであり、また合併や買収を通じて継承されるかもしれないことを考えると、新たな事業または取引関係を展開するにあたっては、人権デュー・ディリジェンスはできるだけ早く着手されるべきである。

企業のバリューチェーンに多数の企業体がある場合、企業がそれら全てにわたって人権への負の影響に対するデュー・ディリジェンスを行うことは不当に難しくなる。そうであるならば、企業は、関係する供給先または受給先企業の事業状況、特定の事業活動、関連製品やサービス、または他の関連する考慮事項によって、人権への負の影響のリスクが最も大きくなる分野を特定し、人権デュー・ディリジェンスのためにこれらを優先的に取り上げるべきである。

他者による人権への負の影響を企業が助長している、または助長しているとみられている場合、加担の問題が生じうる。加担には、法的でない意味及び法的な意味のふたつがある。法的でないものとして、例えば、他者が犯した侵害から利益を得ているとみられる場合など、企業はその当事者の行為に「加担して」いると受け取られる可能性がある。

法的なものとして、大半の国の法制は、犯罪への加担を禁止し、なかにはそのような場合には企業の刑事責任を認めるものもある。概して民事訴訟も、人権という観点から構成されていないかもしれないが、企業の加害関与があったという申し立てに基づくこともありうる。国際刑事法の判例は、幇助、教唆に関する基準が犯罪の実行に実質的な効果をもたらすような実際的援助または奨励を故意に提供することであるという点に重きを置いている。

人権デュー・ディリジェンスをしかるべく実行すること、申し立てをされるような人権侵害への関与を回避するためにしかるべき手段をすべて講じてきたことを示すことにより、企業は自社に対する訴訟リスクに対処する助けとなるはずである。しかしながら、そのようなデュー・ディリジェンスを実行する企業は、それをもって、人権侵害を引き起こし、あるいは助長することに対する責任から自動的にそして完全に免がれることになるだろうと考えるべきではない。