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原則19

人権への負の影響を防止し、また軽減するために、企業はその影響評価の結論を、関連する全社内部門及びプロセスに組み入れ、適切な措置をとるべきである。

(a) 効果的に組み入れるためには以下のことが求められる。

(i) そのような影響に対処する責任は、企業のしかるべきレベル及び部門に割り当てられている。

(ii) そのような影響に効果的に対処できる、内部の意思決定、予算配分、及び監査プロセス。

(b) 適切な措置は以下の要因によって様々である。

(i) 企業が負の影響を引き起こしあるいは助長するかどうか、もしくは影響が取引関係によってその事業、製品またはサービスと直接結びつくことのみを理由に関与してきたかどうか。

(ii) 負の影響に対処する際の企業の影響力の範囲。

解説

人権への影響評価の特定の結論を企業全体に横断的に組み入れることは、人権方針のコミットメントが関係する事業部門すべてに根付いている場合にのみ、効果的でありうる。このことは、評価の結果が正確に理解され、しかるべき重みを与えられ、これに基づいた措置が確実にとられるようにするためにも必要である。

人権への影響を評価するときには、企業は実際及び潜在的な負の影響の双方を探っていることであろう。潜在的な影響は、評価結果を企業横断的に組み入れることによって、防止または軽減されるべきである。他方、実際の影響(既に生じたもの)は是正の対象となるべきである(原則22)。

企業は、人権への負の影響を生じさせ、または生じさせうる場合、その影響を止め、または防止するために必要な手段をとるべきである。

企業が人権への負の影響を助長し、または助長しうる場合、その助長を止め、または防止するために、その企業は、必要な手段をとるべきであり、残存するどんな影響をも軽減するため、可能な限りその影響力を活用すべきである。影響力は、害を引き起こす企業体の不当な慣行を変えさせる力を企業が有する場合に、あると考えられる。

企業が人権に対する負の影響を助長してはこなかったが、その影響が別の企業体との取引関係によって企業の事業、製品またはサービスに直接関連している場合、状況はより複雑である。そのような状況において適切な措置を決定するにいたる要素のなかには、関係する企業体に対する企業の影響力、企業にとってその取引関係がどの程度に重要なものであるか、侵害の深刻度、及びその企業体との取引関係を終わらせることが人権への負の結果をもたらすかどうかなどがある。

状況とそれから予想される人権に対する影響が複雑になればなるほど、企業がその対応を決定する際に独立した専門家からの助言を求めることも強くなる。

企業が負の影響を防止または軽減する影響力をもつ場合には、それを行使すべきである。もし企業が影響力を欠くならば、それを強める方法があるかもしれない。例えば、企業力強化またはその他のインセンティブを関係企業体に提供したり、他のアクターと協力したりすることで、影響力が強くなりうる。

企業が負の影響を防止または軽減する影響力を欠き、影響力を強めることもできない状況がある。そこでは、企業は、取引関係を終了することによって人権への負の影響が出る可能性について信頼できる評価を考慮した上で、その取引関係を終了することを考えるべきである。

取引関係が、企業にとって「極めて重要」である場合、取引をやめることは更なる難題を提起する。その企業の事業にとって必要不可欠な製品またはサービスを提供し、適当な代替供給源が存在しないならば、取引関係は極めて重要であるとみなされるであろう。ここでも、人権への負の影響の深刻さが考慮されなければならない。人権侵害が深刻であればあるほど、企業は取引関係を終了すべきか否かを決定する前に、状況に変化が起こるかどうかをより素早く見る必要があるだろう。いずれにしても、侵害が長期にわたり継続し企業が取引関係を維持している限りにおいて、その企業は、影響を軽減するための継続的な努力をしていることを証明できるようにしているべきであり、取引関係を継続することが招来する結果-評判、財政上または法律上の結果-を受け入れる覚悟をすべきである。