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原則26

国家は、企業活動に関連した人権侵害に対処する際に、国内の司法メカニズムの実効性を確保するため、救済へのアクセス拒否になるような法的、実際的及びその他これに関連するような障壁を減らすための方策を考えるなど、しかるべき手段をとるべきである。

解説

実効的な司法メカニズムは、救済へのアクセスを確保するということの核心をなしている。それがビジネスに関連する人権侵害に対処する能力は、その公正性、信頼性及び適正手続の能力にかかっている。

司法の活用が救済へのアクセスに不可欠であるか、または実効的な救済の代替手段がない状況において、国家は、正当な事案が裁判所に持ち込まれることを妨害するような障壁が設けられないようにすべきである。国家はまた、正義の実現が司法プロセスの腐敗により妨害されないこと、裁判所が他の政府機関や企業アクターからの経済的または政治的圧力から独立していること、及び人権活動家の正当で平和的な活動が阻害されないことを確保すべきである。

ビジネスに関連した人権侵害に関する事案が当然取り上げられるべきにもかかわらず、これを妨げるような法的障壁が生じるのは、たとえば次の場合である。

  • 国内の刑事法及び民事法で、法的責任を企業グループのメンバー間で振り分ける方法により、しかるべき責任の回避を容易にさせる場合。
  • 当該申し立ての本案に関わりなく、申立人が企業の受入国において裁判拒否に会い、本国の裁判所にもアクセスできない場合。
  • 先住民族及び移民など特定の集団が広く市民に適用されるのと同レベルの人権の法的保護から除外される場合。

司法的救済にアクセスするための実際的で手続的な障壁が生じるのは次の場合である。

  • 申し立てを提起するコストが濫訴を適切に抑止するための程度を越えており、かつ/または政府の支援、「市場原理に基づく」メカニズム(たとえば訴訟保険及び弁護士費用設定)、またその他の手段を通じても、合理的なレベルまで下げることができない場合。
  • 申し立て側に資金がなく、また弁護士がこの分野で申立人に法的な助言をするインセンティブを欠いているため、法定代理人を確保することが難しい場合。
  • 複数の訴えを集約し、または代表訴訟(例えば、集団訴訟及び他の合併訴訟手続など)を行うには選択肢が不十分であり、このことが申立人の実効的な救済を阻害している場合。
  • 検察が人権に関連する犯罪への個人及び企業の関与を捜査するという国家の義務を果たすために適切な資源、専門性及び支援を欠く場合。


これらの障壁の多くは、財源、情報や専門家へのアクセスといった、企業関連の人権侵害訴訟の当事者間にしばしば見られる不均衡の結果あるいはこれらの不均衡が組合わさったものである。さらに、積極的な差別を通じてか、あるいは司法メカニズムが設計され、運用されるにあたって当初の意図とは異なる結果を生んでいるかを問わず、社会的に弱い立場に置かれ、または排除されるリスクが高い集団や民族に属する個人が、これらのメカニズムへアクセスし、活用し、そしてその恩恵を受けることに関して、より一層の文化的、社会的、物理的及び金銭的障壁に直面することが多い。そのような集団や民族の諸権利及び具体的ニーズに対する特別な配慮を、救済のプロセス、すなわちアクセス、手続及び結果の各段階ですべきである。