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法務局、在日コリアン女性の申立を「人権侵犯」と認定するも、救済機関としての機能は不十分

 2016年の国連女性差別撤廃委員会にNGOのメンバーとして参加した在日コリアン女性3人が、杉田水脈衆議院議員のSNSへの投稿などが差別的で侮蔑的であり、ヘイトスピーチであるとして2023年2月に大阪法務局に人権侵犯被害の申立をしました。その一部を人権侵犯と認定し、杉田議員に啓発をしたとの報告が10月18日に大阪法務局より申立人にありました。
 2016年2月17日付の杉田氏のブログやフェイスブックには「日本国の恥晒し」というタイトルではじまるブログに「...小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります...」という文章が掲載され、無断撮影されたアイヌ女性やコリアン女性の写真が掲載されていました(現在は削除)。さらに杉田議員の自著にはSNSと同じ写真が無断で使われ、当人たちに批判的なキャプションがついていました。
 申立をしたコリアン女性たちは日本で生まれ育ちましたが、女性でかつ朝鮮半島出身であること、日本国籍をもたないことによる複合的な差別を被っている実態を伝えるために、2016年におこなわれた女性差別撤廃委員会の日本政府報告審査の際に他のNGOのメンバーとともにスイス・ジュネーブに赴きました。
 申立人は、大阪法務局に対し、ブログなどが掲載されてから6年以上、怒りを感じつつ訴えることに恐怖を感じ黙らざるをえなかった状況について訴え、杉田議員からの直接の謝罪および一連の表現がヘイトスピーチであるという認定を要求しました。
 今回の調査結果について、代理人の弁護士は「日本の「国民」でない人たちが、現在、国会議員である人による人権侵犯被害を申立てたことに対し、人権侵犯と認定されたことは大きい」と語りました。申立人はまた、認定を一定評価するとともに、「法務省の人権相談はヘイトスピーチの判断をおこなうためのものではないという理由によりヘイトスピーチであるとは認定されなかったこと、書籍における無断撮影の写真掲載は人権侵犯事実不明確という理由で調査終了とされたこと、杉田氏に対しておこなったとする「啓発」についての詳細は不明であること」など、自分たちが求めた救済としては不十分であったことを指摘しています。
 また、法務省が過去から現在に至るまで、在日外国人を厳しく管理してきた行政機関であり、これまでの自分たちの経験から「外国人の人権」をまもる機関とは思えず、調査結果がどうなるか不安を感じていたことから、今回の決定に一定の「安堵」は感じたものの、法務省による人権救済には限界があるということも述べています。
 マイノリティ女性としてジュネーブで行動を共にしたアイヌ女性も札幌法務局に人権侵犯被害の申立をし、9月に人権侵犯であると認定されたことが先にニュースになりました。本件は杉田氏による人権侵犯認定の2件目となります。ネット社会では、在日コリアンをはじめとするマイノリティを貶め、侮蔑する攻撃的なヘイトスピーチが続き、現実社会ではヘイトクライム(犯罪)が起きています。今回の申立人の願いに沿った課題解決のために、グローバルスタンダードに届く人権救済や政策提言の機能を持ち合わせた国内人権機関の設立や、差別を禁止する包括的差別禁止法の制定が求められます。それは、日本が繰り返し国連から勧告されており、至急に実現するべきものです。

<参考> ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ
「『ヘイトスピーチ、許さない。』〜杉田水脈議員に謝罪を求めます!」署名を法務省に提出(2/7)、 在日コリアン女性が人権侵犯申立を大阪法務局に提出(2/10)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/02/27-210.html


(2023年11月01日 掲載)