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性と生殖に関する権利は、特に危機的な状況において尊重されなければならない 国連専門家たちが声明を発表(9/25)

 2023年925日、国連の専門家たちは特に緊急事態や人道上の危機的状況において、国家は差別なく性と生殖に関する健康の権利を確保しなければならないと訴えました。

 到達可能な最高水準の健康を享受する権利に関する国連特別報告者であるトラレング・モフォケング氏、性的指向と性自認を理由とする暴力と差別からの保護に関する独立専門家であるヴィクトール・マドリガル-ボルロス氏、そしてドロシー・エストラーダ・タンク氏(議長)を含む5名からなる女性と少女に対する差別に関する作業部会は、世界避妊デーを926日に、国際セーフアボーション(安全な中絶)デーを928日にむかえるにあたって声明を発表しました。

 "いくつかの国において中絶が非犯罪化されたことを私たちは歓迎します。しかしながら、他の多くの国々では、性と生殖に関する健康と権利が慢性的に軽視されているか、あらゆるところで後退の危機にさらされています。そのリスクが、女性と少女への悲惨な結果を伴って現実のものとなった事例もあります。

 性と生殖に関する健康と権利は、生命に対する権利、拷問を受けない権利、健康に対する権利、プライバシーに対する権利、教育を受ける権利、実質的平等に対する権利、差別の禁止を含む他の人権と相互に依存しています。また、これらの権利は、公正で持続可能な開発、国連事務総長が発表した「私たちの共通の課題」、さらには目標1「貧困をなくそう」や目標5「ジェンダーの平等」を含むSDGsの達成にも直結しています。それにもかかわらず、これらの権利は反人権派によって最も政治利用されています。

 世界が複数の危機に直面し続けるなか、私たちは、性と生殖に関する健康と権利の侵害リスクが緊急事態や人道的状況、紛争状況において悪化することを思い起こします。女性と少女は特に深刻な被害を受けやすくなります。LGBTIQA+の若者たち、周縁化された民族・人種集団に属する若者たち、避難民の若者たち、そして政治的迫害に直面している若者たち、こうした若者たちはすでに脆弱な状況に置かれていることが多く、危機的状況下、あるいは複数の危機が重なった場合、さらなる社会的疎外を経験します。

 私たちは、多くの国々で悪化する状況を深く憂慮し、緊急避妊薬を含む現代的避妊法の持続的な供給とアクセス、そして合法的で安全な中絶へのアクセスを確保するために、各国が資源を投入することを強く勧告します。また、医療提供者は、資源に制約のある環境でも安全な中絶と中絶後のケアサービスを提供できるよう訓練されなければならず、医師による良心的中絶拒否は規制されなければなりません。危機的状況は予期せず勃発する可能性があり、すべての人がいつでも自分の身体について自律的な意思決定ができるよう、包括的性教育を受けることが重要です。

 性と生殖に関する健康に関する情報、紹介、サービスへのアクセスを促進する上で、ステークホルダーは、十分な人権保障措置が講じられたデジタル・イノベーションとテクノロジーが、不公正を克服する重要な機会を提供することも念頭に置かなければなりません。それらは、COVID-19のパンデミックの時のように、遠隔地や十分なサービスを受けていない地域社会、社会的スティグマに直面している人々へのアクセスを拡大することができ、緊急時や人道上の危機的状況において大きな支援となりえます。そのためには、このような技術へのアクセスにおけるジェンダーに基づく格差を埋めるための投資が必要です。

 私たちは、包括的な政策、エビデンスに基づく提案、持続可能で十分な資金が提供されるサービス、そして国際人権法と国際人権基準に基づく監督を通じて、性と生殖に関する健康とそれに関連するすべての権利を促進し、保護し、尊重する必要性を強調します。私たちは、非差別、平等、エンパワメント、参加、説明責任という人権の基本原則が尊重されなければならないことを再確認します。政治的動機やイデオロギーに基づいた女性の権利を後退させるような試みに対しては、それらを一体として非難し、打ち負かさなければなりません。

 政府、地域のNGO、国連機関、その他のパートナーは、私たち全員のために、より健やかで公正な社会を築くことができるよう、私たちの中で最も弱い立場にある人たちが健康に育つことができるように取り組むことから始めなければなりません。身体の自律性に対する女性の権利を擁護し前進させ、すべての人のためのジェンダー平等に献身するフェミニズム運動は、世界中のさまざまな危機の最前線において重要な働きをしており、その働きに対してより多くの評価と支援を与えられなければなりません。"

 国連人権理事会、第4回UPR審査(普遍的定期的審査)において、日本政府は包括的性教育を行うことや、中絶の非犯罪化と配偶者同意要件の見直しについて勧告を受けていますが、これらについて「受け入れない」と回答しています(2023710日)。

 また、20234月に経口中絶薬が承認されましたが、薬価が高額であり、医療機関に入院しての投与か、外来の診療で投与した後に数時間程度は院内での待機が必須であることから入院が可能な医療機関・診療所だけで処方が可能となっているなどアクセス面で深刻な課題が残ります。緊急避妊薬については一部薬局で試験的運用とモデル的調査研究を2023年夏より実施することが決まっていましたが、いまだ実施には至っていません。

参照

Sexual and reproductive rights should be respected, particularly in situations of crisis, UN experts say
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2023/09/sexual-and-reproductive-rights-should-be-respected-particularly-situations


緊急避妊薬の薬局販売、2023年夏に試験的運用開始へ
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/08/2023.html


国内初となる経口中絶薬が承認される(4/28
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/06/428.html


国連人権理事会、第4回UPR審査の勧告に対する日本政府の回答結果文書を採択_「受け入れない」編(7/10
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2023/07/upr710-1.html

(2023年10月03日 掲載)