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難民および移民に関する国連「グローバル・コンパクト」の原案まとまる (2018年1~2月)

 20169月に開催された国連「難民と移民に関するサミット」において、国連加盟国は、大規模の難民や移民の移動について協力して取り組み、難民や移民の基本的人権を尊重することなどを掲げたニューヨーク宣言を採択し、「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」(移民グローバル・コンパクト)、および「難民に関するグローバル・コンパクト」を2018年に採択することに合意しました。それを受けて、二つのグローバル・コンパクトの起草に向けた準備会合が始まり、2018131日に難民グローバル・コンパクト、25日に移民グローバル・コンパクトのゼロ・ドラフト(原案)が公表されました。
 
難民に関するグローバル・コンパクト
 ニューヨーク宣言は、大規模な難民の発生に対する国際協力と責任分担の原則に基づいた「包括的難民対応の枠組み」(CRRF)をまとめ、難民の受け入れ国の負担を軽減し、難民の自立を促し、難民の自発的帰還、第三国定住など恒久的な解決策に取り組むことなどに関する国際社会としての対応を提示しました。
 難民高等弁務官事務所(UNHCR)の2016年の難民に関する統計によると、多く難民を受け入れている国はトルコ、パキスタン、レバノン、イラン、ウガンダ、エチオピア、ヨルダン、コンゴ民主共和国、ケニアなど発展途上国に集中しています。途上国の難民への対応の財政負担が大きいことが、難民に関するグローバル・コンパクトの背景にあります。
2017年の第72会期国連総会に提出された難民高等弁務官の報告によると、タンザニア、ウガンダなど9カ国で「包括的難民対応の枠組み」の実施がすでに始まっています。このほど公表されたゼロ・ドラフトは、その経験も含めてUNHCRが中心となってまとめました。
 ゼロ・ドラフトは、79パラグラフで構成されており、ニューヨーク宣言の「包括的難民対応の枠組み」がそのまま採用され、この枠組みの実施のための行動計画へと続きます。
行動計画は、一般的措置として、国連機関、国際開発機関、国際金融機関、国際地域機関、市民社会、メディア、難民自身など広範なステークホルダーの関与を通した、難民および難民受け入れ国に対する持続的な支援のための基盤強化、難民や受け入れ国のコミュニティの教育や経済的機会の支援、難民発生の原因に対する取り組み、自発的帰還、第三国定住を含む解決策を計画すること、などをあげています。
 具体的には、行動計画の前半で、難民受け入れ国を国際社会全体で支援するよう、広い分野で支援の基盤を広げることとしています。負担と責任を分担する措置として、多岐にわたるステークホルダーの取り組みを調整・推進する国内の機関を設置すること、UNHCRが必要に応じて、負担や責任を分担する関係国を集めた「グローバル・プラットフォーム(会合)」を招集すること、UNHCRなどが難民と受け入れ国のコミュニティによる協議を支援すること、難民を受け入れている市町村などのネットワーク、市民社会組織の関与、官民連携、大学・研究機関などによるグローバルな連携などをあげています。
 行動計画の後半は、難民の受け入れにあたって、受け入れ国が取り組むこと、およびUNHCRおよび関係諸国・機関などが専門知識や技術も含む協力や支援措置などについてあげています。
 難民に関するグローバル・コンパクトの策定に向けて、20182月から7月にかけて国連加盟国の政府間会合でこのゼロ・ドラフトをもとに協議が行われ、2018年末の国連総会において、UNHCRが最終案を提出することになっています。
 
移民に関するグローバル・コンパクト
 ニューヨーク宣言は、政府間交渉を通して移民グローバル・コンパクトを策定するとしていることから、政府間、および国際機関や市民社会組織を含めた会議が開かれています。201712月にはメキシコで、それまでの議論を振り返る会議が開催されました。
 ゼロ・ドラフトは、46のパラグラフで構成されており、前半はグローバル・コンパクトの指導原則として次のような前提を掲げています。
 ・個人を中心に据える
 ・法的拘束力がない一方、コンセンサス、および信頼や国際社会が共同して実施するという考え方に基づいていること
 ・国家が自国の移民政策について主権的管轄を行使する権利を有していること
 ・法の支配と適正な手続が 移住のガバナンスの基本であること
 ・「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に沿ったものであること
 ・国際人権法および国際人権基準に基づき移民の人権を保障すること
 ・ジェンダーに配慮すること
 ・常に子どもの最善の利益を支持すること
 ・政府の特定の政策担当セクションだけで対応するのではなく、政府全体による対応が必要であること
 ・移民/移住者、市民社会、研究者、経済界など民間分野、議会、労働組合、国内人権機関、メディアなど広範で多様なステークホルダーによる移住問題への対応を促進すること
 
 ゼロ・ドラフトの後半は、協力の枠組みとして、以下の22の目標、および行動に向けた具体的な取り組みを列挙しています。
1)証拠に基づく政策を立案するための正確で細分化されたデータ収集と活用
2)人びとが自国を離れざるを得なくなるような不利な原因や構造的要因を最小化する
3)移住のあらゆる段階における十分でタイムリーな情報を提供する
4)すべての移民/移住者に身分を法的に証明する身分証などの適当な書類を提供する
5)正規移住の方法を広げるとともに、柔軟に対応する
6)公正で倫理的なリクルートを促進し、働きがいのある人間らしい働き方(ディーセントワーク)を確保するための条件を保障する
7)移住における脆弱性に対処し、緩和させる
8)生命を守り、行方不明の移民/移住者に関する国際協力の取り組みを確立する
9)移民/移住者の密輸に対する国際的な対応を強化する
10)国際移動における人身取引の防止および対策を行う
11)国境管理を一貫性のある安全かつ整備された方法で行う
12)在留資格の判断のための手続きやメカニズムを強化する
13)収容を最後の手段としてのみ行い、代替措置に向けて取り組む
14)移住の各段階における、領事館による保護、援助および協力を拡大する
15)移民が基本的な社会サービスにアクセスできるようにする
16)完全なインクルージョンと社会的団結を実現するために移民と社会をエンパワーする
17)移民/移住者に対するあらゆる差別を撤廃し、移住に関する人々の認識を形づくるための事実に基づいた公の議論を促進する
18)スキル開発に投資し、スキルや資格、能力の承認を促進する
19)移民およびディアスポラがあらゆる国において持続可能な開発に十分貢献できるための条件をつくる
20)より迅速で安全、安価な送金を促進し、移民の金融サービスのインクルージョンを促す
21)尊厳のある持続可能な帰還、再入国、再統合を促進するための協力
22)社会保障の受給資格や取得した年金などを(国を超えて)移管するための制度をつくる
 
移民グローバル・コンパクトは、このゼロ・ドラフトをもとに、20182月から7月にかけて毎月開催される政府間会合や、他のステークホルダーを交えた非公式会合において協議され、12月にモロッコで開催される会議において採択される予定です。
(構成:岡田仁子、藤本伸樹)
<出典> 
http://www.unhcr.org/news/latest/2018/1/5a71f6914/unhcr-releases-draft-outlining-new-global-refugee-deal.html
UNHCR releases draft outlining a new global refugee deal (31 January 2018)
http://refugeesmigrants.un.org/intergovernmental-negotiations
Zero draft of the Global Compact for Safe, Orderly and Regular Migration (5 February 2018)
<参照>
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2017/11/ngo1020171011.html
「難民・移民に関する国連「グローバル・コンパクト」の作成の議論が進むなか、国際NGOネットワークが「10のアクション」を提案(20171011月)」(ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2017/12/122.html
米国、「移民に関するグローバル・コンパクト」策定プロセスから離脱(122日)

(2018年02月13日 掲載)