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難民・移民に関する国連「グローバル・コンパクト」の作成の議論が進むなか、国際NGOネットワークが「10のアクション」を提案(2017年10-11月)

難民と移住に関する国連「グローバル・コンパクト」
2016年9月の国連総会において、「難民と移民に関するサミット」が開催され、難民および移住者に関する各国のコミットメントを掲げた「ニューヨーク宣言」が採択されました。その中で、国連難民高等弁務官事務所が中心となって「難民に関するグローバル・コンパクト」、また政府間交渉を通して「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」を、それぞれ2018年の採択に向けて作成することを決めました。
 それを受けて、各地で政府間会合が開かれ、草案作成に向けた議論が行われています。2017年11月6日から9日にかけて、国連アジア太平洋経済社会理事会(ESCAP)がバンコクで「移住に関するグローバル・コンパクトのためのアジア太平洋地域準備会合」を開催しました。日本をはじめ40か国超の加盟国の代表が出席しました。会合にはまた、移民・移住の課題に取り組む、国連と協議資格のあるNGOも参加し、意見表明をしました。
 
「グローバル・コンパクトのための10のアクション-市民社会のビジョン」
そうした準備プロセスのなか、アムネスティ・インターナショナル、アジア太平洋難民の権利ネットワーク(APRRN)、アジア移住フォーラム(MFA)、移住と発展に関する市民社会ネットワーク(MADE)などによるNGOネットワークは、「グローバル・コンパクトのための10のアクション-人の移動、移住および発展のための変革を目指す市民社会のビジョン」を2017年10月に発表しました。この「ビジョン」は、難民と移民を含む、移動するあらゆる人についてのNGO版のグローバル・コンパクトとして提案したものです。NGOネットワークは、政府間会合などの際のロビーイング、または各国で、国内の政府機関への働きかけのためにこれを活用するよう提唱しています。
この「ビジョン」は、グローバル・コンパクトが移民、難民および社会にとって、あらゆる人の生命、権利と尊厳を守るものであること、既存の国際基準に沿って、それをさらに発展させること、さらに、市民社会、特に移民、難民などの組織が十分に参加するものでなければならないという考えのもとで「10のアクション」を提示しています。また、2030年までの数年ごとの目標を設置し、コンパクトの採択後には、実施に向けて指標や地域行動計画、国内行動計画を立てることを求めています。NGOが提示する「10のアクション」の概要は以下の通りです。
 
1.強制移住の原因を除去し、選択による移住を正規化し、促進する。
1.1不安定および強制的な移住の問題に対処するための責任分担。紛争、暴力、人権侵害、構造的不平等や気候変動、環境の悪化など強制移住や危険な状況の移住の原因に取り組むための国際的、および国内の開発計画、戦略や資金をつくる。
1.2移民、難民およびその出身国の住民に対して人間らしい仕事を提供する労働市場をつくる。
1.3移民が十分な情報に基づいて決定できるよう、入国・出国の優先事項、機会、課題などを明らかにする、権利を基盤にした、移住計画や国際的な合意をつくる。
1.4移民管理を開発援助や貿易などの国際協定の条件としない。
 
2. 人権を守りながら、安全で、正規の、かつ良識的な価格の移動の方法や機会を拡大する。
2.1人道的見地からの在留許可や人数の拡大、奨学金などを含む、労働、家族の再統合、教育などの社会的ニーズを反映した難民、移民のための正規の移動方法を拡大し、改善する。
2.2労働市場のニーズに対応し、権利を基盤にした、ジェンダーおよび年齢に配慮した移住の方法を拡大する。
2.3滞在期間、条件などを明確にした、正規化の手続きに関する国際的な原則、目標や政策をつくる。
2.4家族統合や家族生活の実現に対する、所得制限、言語試験、在留期間などの制限を撤廃する。
 
3.通過中、国境および目的地で困難な状況に置かれたあらゆる移民、難民の人権を保護・尊重・実現し、犯罪化および拘禁をやめる。
3.1国境、沿岸での入国禁拒否、域外での収容などを即時にやめる。移動中、または入国の際に生命や安全の危険にさらされるあらゆる移民、難民に対し、捜索、救助および緊急援助を確保する権利に基盤をおいた、人道的対応と国際協力を整備する。
3.2国境管理政策が国際人権基準に沿っていることを確保する。
3.3援助や保護の必要な移民に対する保護および援助の国際的な原則を開発し、実施する。
3.4災害や気候変動によって引き起こされた移住に対応するための国際協力のメカニズムや国内法をつくる。
3.5非正規の入国や滞在による在留状況を理由に、移民や難民を犯罪者扱いしないこと、およびそれらの人々を支援している個人や団体に対しても犯罪者扱いしないこと。
3.6子どもを、本人または家族の在留の地位によって収容することをやめる。
3.7人権に基づいた、拘禁しないための代替措置を実施する。
 
4.安全で人間らしい、労働移動や移民、難民のための労働条件や権利を促進する。
4.1労働組合、雇用者、移民および市民社会組織の関与のもと、労働およびスキルの需要に応じた、権利に基盤を置く移住メカニズムをつくり、実施する。単一の雇用者による保証人制度を廃止し、より柔軟で長期の、更新可能な労働ビザを採用する。
4.2ILOなどの国際機関の役割を強化し、移住労働者権利条約や他の人権および労働の権利に関する条約を批准する。
4.3国内の労働者、難民や移住労働者の労働の権利、労働条件に関する権利に基づいた、ジェンダーに配慮した政策を実施することを確保する。
4.4労働者が自分たちの権利の知識を有し、司法および法的救済などへのアクセスを有していることを確保する。
4.5外国人労働者を搾取する人身売買加担者、仲介業者、雇用者などを起訴し、処罰する。
4.6移住労働者の募集、採用を規制し監視する国際基準を実施し、募集に関する費用が労働者ではなく、雇用者負担とする。
 
5.あらゆる移民、難民の安全で人間らしい生活、社会サービスと司法へのアクセスを確保する。
5.1すべての国が国籍、民族、在留の地位にかかわらず、すべての人に、出生証明、婚姻証明、死亡証明など適切な法文書・民事書類や身分証明番号を提供する。
5.2あらゆる移民、難民に教育、医療、住居、衛生などのサービスへの十分なアクセスを確保する。
5.3移民、難民が犯罪を報告したり、救済を求めたりする際、拘束や送還をおそれずに、司法制度や公共サービスにアクセスできるよう、入国管理と公共・司法サービスの間に法律上及び政策上の保護措置を確保する。
 
6.あらゆる子どもに質の高い教育と発達のためのケアを提供し、学生の移動、学習の機会、スキルや資格の承認を改善する。
6.1あらゆる移民、難民の子どもと青年が、本人または保護者の地位にかかわらず、平等に質の高い教育を受けることを確保する。
6.2移民、難民および開発途上国の学生のための奨学金や学生ビザをグローバルに拡大する。
6.3スキルや資格の国際的な承認や調整のメカニズムを拡大する。
6.4移民、難民のための現地の言語学習、職業訓練や成人教育への容易で安価なアクセスを確保する。
6.5人の移動について理解し、文化的多様性を尊重するような教育カリキュラムなどインクルーシブで受容性のある教育環境をつくる。
 
7.社会的結合や移民、難民の社会への包摂を促進し、人種主義、差別や外国人嫌いのあらゆる形態の差別と闘う。
7.1文化間理解、寛容や相互尊重を育て、移民、難民などの経済的、政治的包摂を確保する、国内や地域の統合計画を開発し、実施する。
7.2移民、難民に対する人種主義、外国人排斥、憎悪犯罪、ヘイトスピーチや差別に対する法律、政策や公共キャンペーンをつくり、実施する。
7.3移住労働者センター、移住女性組織などによるエンパワーを通して、移民、難民が政策、計画や意思決定に参加することを確保する実効的な方法をつくる。
7.4メディア、政治家などが、移民、難民について、責任をもって、事実や数字を正確に述べ、スティグマ化したり、不正確で犯罪化するような用語を使わないようにする。
 
8.移民、難民などの持続可能な開発への国際的な結びつきや貢献を拡大し、送金や投資の費用を削減する。
8.1移民、難民などの開発におけるパートナーとしての関与を促進する。
8.2移民、難民の金融リテラシーや銀行、保険などの金融サービスへのアクセスを拡大する。2030年までに移住者の送金手数料を1%以下に引き下げる。
8.3送金は移民の家族のための私的な行為であり、マネー・ロンダリングのようにみなさないこと。
 
9.あらゆる移民、難民の権利、安全と尊厳を保障する、帰還、再統合や帰還の代替措置に関する国際的な原則を開発する。
9.1帰還および送還の決定が、移民、難民の安全および尊厳を保障する国際人権法に厳格に従ってのみ実施され、手続き的な保障や個別のニーズの評価などが備わっていることを確保する。
9.2帰還者の参加のもと、帰還後の状況を監視する、実効的、透明で独立したメカニズムを開発する。
9.3移民、難民の居住国をいかなる強制もなく自由に出国し、出身国、国籍国に再入国する権利を尊重し、促進する。
9.4帰還の際、財産、スキルや資格などの移転を確保するために協力し、帰国することを選択した移民、難民に出国前および再統合の支援を提供する。
9.5子ども、子どものいる家族、または子どものいる親の帰還につながり得る決定の際に、子どもの最善の利益を判断する個別の独立した手続きを強化する。
9.6国際人権法および基準に沿った帰還、再入国、再統合に関する国際的な原則をつくり、促進する。
 
10.権利を基盤とする、人の移動と移住のグローバル・ガバナンスの実施に関する透明で、説明責任のある、参加型のメカニズムおよび手段をつくる。
10.1各国間の協力や責任の分担を促進し、移民、難民に対して迅速で権利を基盤とした対応を実施するために、国連のリーダーシップ、人の移動や発展、人権のための長期的戦略や能力を強化する。
10.2国際移住のための国連事務総長特別代表を、人の移動と移住担当の国連事務次長の下に配置し、国際移住機関(IOM)、UNHCR、ILO、OHCHR、国連薬物犯罪事務所(UNODC)などとグローバル・コンパクトの実施に取り組むこととする。
10.3グローバル・コンパクトのコミットメントを国内政策に移すために、持続可能な開発目標(SDGs)の実施メカニズムと連動する地域および国内行動計画をつくる。
10.4グローバル・コンパクトのコミットメントの実施を支援するために十分な多年度の資金をつくる。
10.5人の移動および人権に関する、所得、年齢、ジェンダーなどに細分化されたデータを収集、蓄積し分析するツールや能力を改善し、移動中、拘束中、強制送還中、労働災害、ヘルスケアの不十分さ、ヘイトクライムなどで死亡、行方不明になる移民、難民の数を調査する。
10.6グローバル・コンパクトのコミットメントの実現を監視する参加型のメカニズムをつくる。
(構成・岡田仁子、藤本伸樹)
 
<参照・出典>
http://www.unic.or.jp/news_press/info/20679/
世界のリーダー、国連サミットで難民と移民の保護強化に向けた“大胆”な計画を採択  国連広報センタープレスリリース 16-086-J2016年9月22日
 
http://www.unescap.org/events/asia-pacific-regional-preparatory-meeting-global-compact-safe-orderly-and-regular-migrationUN ESCAP
Asia-Pacific Regional Preparatory Meeting for the Global Compact for Safe, Orderly and Regular Migration6 Nov 2017 to 8 Nov 2017
 
https://www.icmc.net/sites/default/files/documents/ten-acts-global-compact-migration.pdf
Ten Acts for the Global Compact-A civil society vision for a transformative agenda for human mobility, migration and development (「10のアクション」の英語原文)

(2017年11月10日 掲載)