日本への女性の技能実習生や留学生が増加しているなか、予定外で妊娠する人たちが増えています。そうしたなか、解雇や退学を恐れ、誰にも相談できずに悩み、検診も受けないまま孤立出産するケースが後を絶ちません。
妊娠して雇用主から帰国させられるのを恐れたベトナム人技能実習生グエットさんはその一人です。2024年2月に孤立出産で死産した子の遺体を「適切に扱わなかった」として死体遺棄罪で起訴されました。彼女は一貫して「捨てたのではなく、どうすればいいかも考えられなかった」と無罪を主張してきましたが、福岡地裁で有罪判決(懲役1年6月執行猶予3年)を受け、福岡高裁で控訴を棄却されました。それを受け、2025年11月、弁護団に元国連女性差別撤廃委員会委員長の林陽子弁護士が新たに加わり、上告しました。
移民女性のリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)について研究する上智大学教員の田中雅子さんは、この裁判を「リプロダクティブ・ジャスティス」の視点からとらえ、個人の問題ではなく、移民のホスト社会の制度や構造を問うています。
そのような事態を受けて、ヒューライツ大阪は2月21日(土)、林さんと田中さんを講師に迎えて、対面とオンラインによる「移民女性のリプロダクティブ・ジャスティス:予想外の妊娠による孤立出産や不本意な帰国を防ぐために」を開催しました。
田中さんは、女性の移民労働者や留学生の妊娠・出産を許さないような日本社会の構造的な問題を指摘し、リプロダクティブ・ジャスティスの実現に向けて求められる市民社会の取り組みを提示しました。林さんはグエットさんの裁判の論点を憲法、国際人権法の視点から解説しました。
2人の報告の後、会場参加者の3人(助産師、市民、産婦人科医)から、それぞれの立場によるコメントを受けました。
※リプロダクティブ・ジャスティスとは、リプロダクティブ・ライツ(生殖の権利)とソーシャル・ジャスティス(社会正義)を組み合わせた概念のこと。1990年代の米国で黒人女性フェミニストらが自らの経験と闘争から生み出した。
当日の録画(約2時間)は、YouTubeに公開しています。https://www.youtube.com/watch?v=zWc6NpysINs
日時:2026年2月21日(土)午後2時~4時
講師:田中雅子さん(上智大学総合グローバル学部教員)
林陽子さん(弁護士、元国連女性差別撤廃委員会委員長)※オンライン登壇
開催方法: ①対面(ヒューライツ大阪セミナー室)、②オンライン(ウェビナー)
主催:ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター)
協力:科研費研究「移民女性のリプロダクティブ・ジャスティス」プロジェクト」
(本セミナーは、SRHR for ALLアクション!/JOICFPより一部助成を受けました)