ヒューライツ大阪は、エル・ライブラリーとの共催で「ドキュメンタリー映画「かづゑ的」上映と熊谷博子監督のトーク」を8月30日に開催しました。会場のエル・おおさか南ホールには107人が参加し、映画と監督とのトークを堪能しました。
以下、多賀雅彦・ヒューライツ大阪副会長の報告です。
◆この映画は2024年に公開されたものだが、本年6月、ドイツの日本映画祭「ニッポン・コネクション」でドキュメンタリー部門の最優秀賞を受賞した。熊谷監督は上映会の前日、長島愛生園にかづゑさん(現在97才)を訪ね、その受賞を報告してきたという。
◆映画は、10歳で愛生園に入所し80年以上この島で暮らすかづゑさんの8年間に寄り添ったドキュメンタリー。かづゑさんの言葉、行動、夫・孝行さんのキャラクター、夫婦関係、島の美しい風景、格調高いチェロの音色、温かいナレーション、これらが一体となって、時に涙を、時に笑い誘いながら観る者の胸を熱くする。
◆「ハンセン病を背景としつつも人間とは何か、という本質を描いた」と監督は言い、「泣いて笑って、元気になるハンセン病映画」とも言う。
◆その通り、観る者には「できるんよ、やろうと思えば」という言葉の通りに前向きに生きるかづゑさんの日常を通して、自らの「生」はどうなのか(どうだったのか)と自問する機会が訪れたはずだ。そしてその問いかけにしばし立ち止まってしまったとき、かづゑさんの姿や表情、言葉が温かいエールになって背中を押してくれることを体感するに違いない。
◆監督との質疑の時間で発せられた問いかけの言葉の端々に、そして真摯な文字で書かれた多くアンケートの言葉の中に、そのエールを受け止めた人の心の熱が感じられた。
◆今回、初めて共同企画したエル・ライブラリーとヒューライツ大阪。「働く人の歴史の伝承」と「社会における国際人権基準の浸透・展開」を目指す両団体に共通するのは、人が人として、その尊厳が尊ばれる社会の実現ということであろうか。それはこの映画の描くものとも通底するものだった。
◆余談だが、かづゑさんはかなりの読書家で過去、膨大な本を読んできたそうだ。監督トークで紹介されたかづゑさんのベスト3は、(1)デルスウザーラ(ウラジミール・アルセーニエフ)、(2)スヴェン・ヘディンの探検もの、(3)モンテ・クリスト伯(アレクサンドル・デュマ)である。そして夢は「ゴビ砂漠でラクダに乗ること」だという。