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ビジネスと人権に関する国別行動計画

概要

 国連ビジネスと人権に関する指導原則(2011年)を各国ごとに実施するための行動計画の策定が、2014年に国連で求められました。これが「ビジネスと人権に関する国別行動計画」であり、National Action Planの頭文字から「NAP」と略称されることもあります。
 2015年の英国に始まり、2022年8月現在、世界で26か国がNAPを策定し、3か国が人権に関する行動計画の中に「ビジネスと人権」の章を設けています(下記参照)。日本政府は2020年10月に『「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020ー2025)』を策定、公表しました。
 国連ビジネスと人権に関するワーキンググループがNAPの策定、実施、改定のあり方を示した「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」は、NAPを「企業による人権への負の影響から保護するために、国連ビジネスと人権に関する指導原則に適合するかたちで国家が策定する、常に進化する政策戦略」と定義しています。
 NAPは、ビジネスと人権に関する指導原則のいわゆる3つの柱である①国家の人権保護義務、②企業の人権尊重責任、③救済へのアクセスのうち、①国家の人権保護義務、及び③救済へのアクセスの国家の義務に関わる部分についての行動計画であり、企業が取り組むべき内容を直接示すものではありません。
 NAPの策定と実施においてはステークホルダーとの協議が重要で、日本政府のNAP策定をめぐっては、策定に携わったステークホルダーから「共通要請事項」が2度にわたって政府に提出されたほか、策定後も「ビジネスと人権に関する行動計画推進円卓会議」及び同「作業部会」のもとNAPの進捗についての協議が継続されています。なお、2022年6月に日本政府は、策定から2022年3月までの実施状況を報告した「1年目レビュー政府報告」を公表しています。

【NAPを策定した国】
イギリス、オランダ、デンマーク、フィンランド、リトアニア、スウェーデン、ノルウェー、コロンビア、スイス、イタリア、アメリカ、ドイツ、フランス、ポーランド、スペイン、ベルギー、チリ、チェコ、アイルランド、ルクセンブルク、スロベニア、ケニア、タイ、日本、ウガンダ、パキスタン

【人権に関する行動計画の中に「ビジネスと人権」の章を設けている国】
ジョージア、韓国、メキシコ

関連リンク

  • (1) National action plans on business and human rights(国際連合ウェブサイト)
  • (2) ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針(ヒューマンライツ・ナウ仮訳版)
(1)

(2)
UNNAP2.jpg
UNNAPguidance.jpg

原文にみるキーワード

■定義及び必須の基準
「ビジネスと人権の分野では、国別行動計画は「企業による人権への負の影響から保護するために、国連ビジネスと人権に関する指導原則に適合するかたちで国家が策定する、常に進化する政策戦略」と定義される。国連ワーキンググループは4つの必須の基準が実効的なNAPにとって不可欠と考える。
 第1に、NAPは指導原則に基づいている必要がある。指導原則を実施するための文書としてNAPは、ビジネスに関連する人権への負の影響から保護し、救済への実効的なアクセスを提供するための、国際人権法の下での国家の義務を十分に反映する必要がある。またNAPは、デュー・ディリジェンスのプロセス、及び救済へのアクセスを可能にする企業の措置を含め、企業による人権尊重を促進する必要がある。さらにNAPは、非差別及び平等という根本的な人権原則に基づかなければならない
 第2に、NAPは状況に応じたものである必要があり、各国における実際のまたは潜在的なビジネスに関連する人権侵害に対処する必要がある。それらの人権侵害の中には、各国の領域及び/または管轄内で生じる負の影響もあれば、当該国の管轄外の企業の活動による負の影響もある。政府は、これらの人権侵害の防止と救済に最も影響を及ぼすことができる重点的かつ現実的な措置を定めるべきである。
 第3に、NAPは包摂的で透明性のあるプロセスの下で策定される必要がある。関係するステークホルダーはNAPの策定及び改定への参画が認められ、その意見が考慮される必要がある。すべてのプロセスにおいて、情報は透明性をもって共有される必要がある。
 第4に、NAPプロセスは定期的にレビューされ改定される必要がある。NAPプロセスは変化する状況に対応し、進歩を積み重ねなければならない。」(ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針)

■ギャップの特定
「実際の企業活動とステップ5で特定されたビジネスと人権の課題を念頭に置き、国家及び企業による指導原則の実施に際してのギャップが特定されるべきである。その過程で政府は、第1の柱及び第3の柱(指導原則1-10、25-28、30及び31)において国家を対象とする指導原則に関して存在する様々な法律、規則及び政策を明らかにし、それぞれの保護のギャップを特定すべきである
 同様のギャップの特定は、その国の領域において活動し、または本拠を置いている企業に関して、またその企業による第2の柱及び第3の柱(指導原則11-24及び28-31)の実施に関してもなされるべきである。この中には、企業が人権デュー・ディリジェンスをどの程度実行し、また事業レベルのグリーバンスメカニズムを通じて効果的な救済をどの程度提供しているかについてアセスメントすることも含まれる。
 このアセスメントの一環として、関係するステークホルダーが参加し、インプットを行えるように招請されるべきである。アセスメントがその後のNAP策定の基礎として最も信頼できる情報を生み出せるよう、国連ワーキング・グループは、政府が国内人権機関または他の独立した外部専門家との協働を考慮することを奨励する。政府はアセスメントの結果を一般に公開するべきである。」(ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針)

■NAPの改定
「NAPの改定は、企業に関連する人権への負の影響を防止、軽減及び救済するために既存のNAPが実際にどの程度効果があったかについての徹底した評価に基づくべきである。進捗を評価する際には、評価者は、評価のベンチマークの一つとして、NAPで政府によって定義された実施指標を参照すべきである。この評価は、国内人権機関または他の専門家のように独立した組織によって行われるべきであり、かつ、関係するステークホルダーとの協議を含めるべきである。」(ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針)