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「人種主義とたたかう教育の役割-ヨーロッパ の実践から学ぶ」を開催しました (11月27日)

  2015年11月27日、教育学者オードリー・オスラーさんをお迎えしてセミナーを開催しました。現在ノルウェーの大学で教えているオスラーさんは、イギリスを中心に人権教育やシティズンシップ(市民性)教育の研究と実践に取り組んできました。

    セミナーは阿久澤麻理子ヒューライツ大阪所長代理(大阪市立大学教授)による日本の現状と問題提起で始まりました。部落差別に応えるために始まった同和教育、そして90年代、国連の呼びかけと歩調を合わせながら進展した人権教育の取り組みを経て、2000年には人権教育啓発推進法が制定されました。また日本はさまざまな人権条約にも加盟をしてきました。しかし、近年激しさを増すヘイトスピーチに象徴されるように、在日コリアンや移住者を含む、マイノリティに対する差別に処罰等をもって対処できる法律はありません。教育の効果も不十分であり、国際基準の実施も中途半端な現状のもと、深刻な人種差別は被害者への救済もないまま放置されています。こうしたことに教育の現場はどう応えることができるのか、オスラーさんの講演に期待をしたいと提起しました。

    日本到着後、セミナー開催までの10日間、オスラーさんは教育現場やヘイトスピーチが行われた現場などを精力的に回り、人びとの声に接しました。街頭で警察官に囲まれて行われているヘイトスピーチに対して、何もできないと無力を感じるのではなく、勇気をもって関わることが重要であると述べたうえで、法的・政策的枠組みがあるヨーロッパにおいても、人種差別に取り組むうえで、3つの課題-市民性、多文化共生、そして子どもの視点-に直面していると述べました。以下、オスラーさんの話を要約します。

    これら3つの課題を教育はどう教えて実践に導いていくのか。例えば、多文化共生を教えるには、異なる文化同士の対話は重要であり、さらに対話を進めるには、人権は原則であることを教え、実践に導かなくてはなりません。さらに、異なる文化が存在する中で、キーワードとなる普遍性をどう確保するのか。主流文化に取り込まれることを警戒するマノリティの参加を得るためには、マイノリティの視点に関わり、耳を傾けなくてはなりません。非対称にある力関係をマジョリティは認識しなくてはなりません。

    京都朝鮮学校が襲撃されたとき、生徒たちは自分はこの社会に属していないという感情を持ったはずです。そうした子どもたちにインクルージョンと安心感、私はこのコミュニティに属しているのだという感情を届けなくてはなりません。インクルージョンはすべての人が包摂される社会の実現です。

    実践としての市民性は、よりよい社会を目指した活動、他者との協力、学校内または学校外の活動、あるいは市民運動や労働運動などに関わることで実現できます。学校における実践としての市民性は、いわゆる「人権にやさしい」学校環境を作ることであり、そのためには、例えば、多言語の環境を確保することが重要です。生徒のアイデンティティは決して一つではありません。すべての私たちと同様、複層しています。学校が人権をどう捉えて実践するのかを明確な形で示すことが重要です。

    子どもの視点について、私たちは子どもは何もできないと思いがちですが、子どもにはできることがたくさんあります。子どもは大人と同じ市民であり、参加する権利をもっています。大人の仲間として対応しなくてはなりません。ヨーロッパで、学校は若者を市民扱いしてきませんでした。人権教育を進める上で学生の声を聞くことは重要です。2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロは、マイノリティの若者が市民として平等な扱いを受けてこなかったことを示しています。ヨーロッパ社会は高度に分断された社会です。そのため、若者たちは暴力を用いるなど、否定的な反応を示します。シティズンシップ教育や人権教育を進める上で学生の声を聞くことはとても重要です。その声に向き合うことで、私たちは何かを学ぶのではないでしょうか。

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