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外国にルーツをもつ子どもたちの教育支援・連続セミナー<ムスリム編>を開催しました(7月29日)

 ヒューライツ大阪とおおさかこども多文化センターは、外国ルーツの子どもたちの教育支援の課題に関して、近年増加している国・地域に焦点をあてて3回シリーズのセミナーを企画しており、7月29日(土)に第2回目として中東や東南アジアからのイスラム教徒の子どもたちをめぐる<ムスリム編>を開催しました。

公益財団法人とよなか国際交流協会職員で子ども事業担当の山根絵美さんと、モロッコ出身で同協会のボランティアであるエルモトニ・アシュラフさんを講師に迎えました。学校教員や地域で日本語教育支援の活動に取り組む人たち40人が参加しました。
 
山根絵美さんの報告
 世界のムスリム人口は、世界人口の4人に1人にあたる約16億とされている。日本に暮らすムスリムは推定11万人(うち日本人1万人)で徐々に増えている。外国人ムスリムのおもな在留資格は永住者、留学、家族滞在、日本人の配偶者等などで、定住傾向が高まっている。3年前に全国65カ所だったモスクの数は、2017年現在81カ所に増えている。一時的な礼拝所を加えるとさらにたくさん存在する。
18歳までの子どものムスリムは、日本国籍をもつ国際結婚カップルなどの子どもを含めると2万5千人から3万人にのぼる、と私は試算している。
 ムスリムの子どもたちの学校生活における課題は、食事、ラマダーン(イスラム歴9月の断食月)、服装、お祈り、学校行事、身体測定などに関することなど多岐にわたっている。
 とりわけ、毎日の給食や校外学習での食事の際に留意すべきことは、その食材がイスラム教に基づきハラール(許されたもの)に処理されたものかどうかである。そうでなければハラム(禁じられたもの)とされる。豚肉を食べることやアルコール類を摂取することが禁止されているだけでなく、豚肉から派生するベーコンやハムなどの加工食品、お菓子に使われるゼラチン、アルコールを含むみりんもハラムとみなされる。
 学校にとってそのような事情を配慮できるかどうかは、給食が自校で調理されているか、センター式かによってできることが異なるだろうが、アレルギーをもつ子どもへの対応と同じように工夫すればよいのではなかろうか。もっとも、どんな食材をハラールとみなすのかそれぞれの家庭によって異なる。子どもや保護者に確認することが大切である。
 服装は、成人女性は顔と手以外をヒジャーブ(スカーフ)で、男性や子どもはヘソから膝までを隠すという慣習がある。そのため、制服は女子の場合、スカート丈を長くしたり、スカートの下にジャージをはいたりする子たちがいる。幼稚園の男児でも膝上丈の半ズボンを回避したがることもある。
 体操服は、男女とも長袖・長ズボンを好むことが多い。水泳の授業では男女合同を避けるため、女子は見学を希望したり、ムスリム用の水着(ブルキニ)を着用したりしている。
 ムスリムは1日に5回の礼拝を行うが、学校ではどう対応するか検討する前に、本人や保護者に確認する必要がある。礼拝の所要時間は10分ほどだが、スペースを確保することも必要である。
ムスリムの子どもと関わるうえでの重要なポイントは、ムスリムは、出身国や地域、家庭、親と子のギャップなど一枚岩ではないことを念頭において取り組むことである。子どもや保護者から直接話を聞き、個別に対応することが重要だと考える。ムスリムが大切にしていること、そしてイスラムの多様性を知ることで、周囲の偏見をいかになくしていくかが問われている。
 
エルモトニ・アシュラフさんの報告(2人の子どもをフランスと日本で育てる)
フランスのほうがイスラムの子どもたちが多くいて、ハラール食品も入手しやすく、学校もイスラムへの理解があり育てやすかった。日本では、子どもたちが差別されないか当初は心配だった。
子どもたちには学校給食があったけれど、ハラール食品を食べさせるために弁当をつくってもたせていた。ムスリムの子だけ弁当を持っていくと、クラスの子たちにいじめられるとの話を聞いて心配していたが大丈夫だった。かわいいお弁当をつくるように心掛けたので、他の子どもたちからうらやましがられていた。
幼稚園では、着替えや体重測定の際に男女同じ場所で行われていた。私は、幼稚園の先生に娘は別の部屋で着替えさせてほしいと言ったところ了承してもらうことができた。男の子であってもムスリムは肌をみせないようにしている。また、トイレについて、イスラム社会では子どもでも男女別々だが、日本の場合そうではないことがある。
最近の日本のマスメディアによるイスラム国(IS)に関する報道のなかで、ムスリムに対する否定的なイメージを広めているかのように感じるときがある。ISはごく一握りの人たちにすぎない。イスラムは平和的な宗教であることを知っていただきたい。
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