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ヒューライツ大阪は
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3/11 セミナー「差別に対する無関心を関心に変えるためのマジョリティに向けた教育」を開催しました

 ヒューライツ大阪は3月11日、大阪教育大学天王寺キャンパスにおいてセミナー「差別に対する無関心を関心に変えるためのマジョリティに向けた教育」を開催しました。上智大学准教授の出口真紀子さんを招き、マジョリティ集団が持っている「特権」にいかにして気づくかというテーマについて講演いただきました。初めに、ヒューライツ大阪所長代理の阿久澤麻理子・大阪市立大学大学院教授が、今日、日本で起きている在日コリアンや部落出身者などに対するネットでのヘイトスピーチの現状にふれ、ヘイトスピーチに抗する教育の必要性を訴え、今回もその一環として取り組む講座であることを説明しました。
 講演では、米国におけるマジョリティの特権についての先駆的な研究の紹介から始まり、出口さんが監訳したダイアン・J・グッドマンさんの『真のダイバーシティをめざして:特権に無自覚なマジョリティのための社会的公正』の内容に照らして、「特権」についての新たな視点を提示しました。また幼少期をアメリカで過ごした体験や大学での実践など、出口さん自身のご経験が具体例として紹介されました。
 参加者はおよそ90名でした。

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【講演概要】
 「特権」はそれを持っている人にとっては見えにくいものです。立場理論(Standpoint Theory)は、権力を持たないものやそれを制限されている者は、権力を持つ側の考え方を熟知している一方、権力を持つ者(社会での強者)は、自分の下にいる人間や自分を強者として位置付ける構造・仕組みについて知ろうとしないのだということを示しています。また「特権」のある集団は文化的・制度的に「正常である」とみられやすく、優越性を有しているのが特徴であり、それに属する個人は自身の「特権」を認識しておらず、またそれを受け入れることに抵抗を示す傾向があります。そういった前提のもと、マジョリティ集団が「特権」について知ることで社会はどう変わり、また誰がどのように「特権」について教えていくことができるでしょうか。
 立場理論が示しているように「特権」のある人がそれに自分で気づくのは難しく、「特権」に無自覚である態度はマイノリティを「中立」でない立場に追いやったり、差別事件に対する無関心を招いたりしてしまうがために、抑圧的です。だからこそ「特権」についての教育が必要なのです。
 マジョリティに対して「特権」について教育する責任があるのは、同じ「特権」を持っている人びとであると言えるでしょう。差別を受ける側の人びとが差別について語ることにはリスクがある一方、マジョリティ側の人びとの意見は「中立」なものとして好意的に捉えられる傾向があり、影響力が強いからです。マイノリティの問題はマジョリティ集団の持っている「特権」の問題であると認識を転換し、差別問題をマジョリティ側が自分の問題としてとらえると同時に、マジョリティ側の人びとが自身の「特権」や社会を変えやすいという自身の立場性に気づくことで、マイノリティのアライ(味方)が増え、マイノリティが生きやすい社会が実現します。
 また「特権」があるということに気づくために、教える側の人間が自身の「特権」を開示し、「私も以前は無自覚だったけれど、気づいて変わることができた」というメッセージを発することが有効です。アメリカでは人種的マイノリティとして、日本ではマジョリティ集団に属する日本人として過ごす中で、マイノリティが内面化する劣等感やコンプレックスを理解する一方、周囲の人々とのかかわりを通して自身が日本人として持っているマジョリティとしての「特権」に「気づかされて」きました。マジョリティとして初めて「特権」を突き付けられる経験は、時に精神的苦痛を伴うものであるということを理解し、教育の現場では過度の反発を招かないようなやり方で教えていくことが必要ではないでしょうか。

【講演を受けて】
 筆者自身は出口さんと同じように、女性であることを除けば日本社会においてはマジョリティの側に属する人間です。自分に「特権」があると意識することは、いみじくも出口さんが講演でおっしゃったとおり「居心地の悪い状態」に自らを置くことでもあり、決して快いことではありません。しかし、「特権」があって「中立」とみなされやすく、社会を変えやすいというマジョリティとしての立場性を逆手に取れば、有効なやり方で反差別を訴えていくことが出来るのではないかという気づきを得ました。また、出口さんや筆者のように女性であるという「マイノリティ性」も持ち合わせているマジョリティの存在や、マジョリティとマイノリティがいかにして協同するかという視点も持ちつつ、「特権」についてより深く広範な議論をしていく必要性を感じました。(保道晴奈)

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