文字サイズ

 
Powered by Google

MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

「ヘイトスピーチはいらない!今こそ、人種差別撤廃法の制定を求む」を開催しました

   2016220日、「ヘイトスピーチはいらない!今こそ、人種差別撤廃法の制定を求む」と題するセミナーを大阪で開催しました。メインスピーカーとして、有田芳生参議院議員をお招きし、昨年の国会(2015927日閉会)で継続審議となり、今国会(14日開会)での審議の行方が注目される「人種差別撤廃施策推進法」について報告をしていただきました。

 

有田さんは、2013年の23月頃の日本では「ヘイトスピーチ」という言葉そのものが浸透していなかったが、その後、市民による反対行動やメディア報道などにより、「ヘイトスピーチ」という言葉が広まり、今では、少なくともヘイトスピーチがいけないものであるという認識が広がったと述べました。国会議員として何かしなければならないと考え、20133月に集会を開きました。しかしその頃は、「ヘイトスピーチはなくさなければならない、しかし表現の自由を守らなければならないから、規制は難しい」というのが国会議員の一般的な理解の水準であり、この問題で院内集会を開くと、有田事務所に抗議の電話が一日中かかってくるような状況であったと振り返りました。そして、この3年間の反ヘイトの人びとの闘いなどにより、政党も動かざるを得なくなり、現実を大きく変えたと述べました。有田さんの報告はさらに以下のように続きます。

 

日本が人種差別撤廃条約に加入したのは国連で条約が採択されてから実に30年後の1995年でした。本来、条約に加入すればそれを実施できるよう国内法が整備されなくてはならないが、そうした動きは日本では起こりませんでした。そのため、国会で人種差別撤廃基本法を作るための議員連盟を結成し、参議院の法制局と相談しながら法案を作り、20155月に参議院に提出しました。参議院の法務委員会で8月に審議されましたが、人種差別撤廃施策の趣旨説明をする時は、これまでにない数の傍聴人が集まり、関心の高さが示されました。残念ながら会期満了で1回きりの審議となり、法案は翌年(2016年)の通常国会の継続審議に持ち込まれました。

この1月から始まった通常国会でどのようになるのかが今後の課題です。61日の会期末まで、法案を審議できるのは実質的に4月と5月だけですが、法務委員会の開催日を考えれば実質的に14日間しかありません。法務委員会は刑事訴訟法改正案の審議も抱えています。この短い期間で両方を審議しなくてはなりません。一方、「人種差別撤廃施策推進法は間口が広すぎる、ヘイトスピーチに特化した法案にならないか」と自民党・公明党は考えています。

法務省は街宣について調査を進め、ヘイトスピーチ被害についても聞き取りを進めています。その結果は3月に公表される予定です。1月には大阪でヘイトスピーチに関する条例が制定されましたが、京都市や川崎市でも条例を作る動きが生まれています。現在までで、298の地方議会がヘイトスピーチに関する意見書を採択しています。国会はなかなか動かないが、地方議会が動きを作っています。人種差別撤廃施策推進法は人種差別撤廃条約を国内で実施するための基本法です。罰則規定はもうけていませんが、「ヘイトスピーチは差別である」と明言しています。

 ヘイトスピーチとの闘いは、近代日本がずっと抱えてきた差別の土壌を克服するものです。関東大震災における朝鮮人虐殺に始まり、現在のヘイトスピーチへと続きます。これはその土壌を掘り起こしていく仕事だと思っています。イギリス外務省は「日本で排外主義的な扇動行為を見たらその場を立ち去るように」とウェブサイトで自国民に対して注意喚起をしています。OECD(経済協力開発機構)34カ国でヘイトスピーチ対策の法律がないのは日本と韓国だけです。そういうなか、人権後進国において人種差別撤廃施策推進法を進めていきます。何よりも皆さまの世論の力が必要です。被害者をこれ以上出さないために共にがんばりたいと思います。

 

有田さんの報告のあと、“現場から”として、人種差別の実態把握に基づいた政策立案のために実態調査が重要なことを踏まえ、政府による調査の必要性を求めるNGOによる取り組みについて報告がありました。そして、ヘイトスピーチをなくすための大阪市条例の制定(115日)に向けて、市民や弁護士とともに運動をすすめてきたNPOから、その経緯について報告がありました。最後に、ヘイトスピーチや人種差別を直接裁く法律がない厳しい状況のなか、個人として立ち上がり民事裁判に訴えた2つのケースの原告が、裁判を起こした理由とその思いについてそれぞれ述べました。

 

 レイシズムやヘイトスピーチの被害が日々生み出されている現実を前に、もうこれ以上、法律制定を先延ばしにする理由はみつからないということを確信するセミナーとなりました。

 尚、セミナーの模様(有田議員の報告)はヒューライツ大阪のツイッターで実況中継しました。  https://twitter.com/hurights_osaka

 

DSCF3066.JPG