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4.27セミナー「外国籍の子どもの教育-高校進学・卒業という壁」に70名

ヒューライツ大阪は、NPO法人おおさかこども多文化センターと協力し4月27日、樋口直人さん(徳島大学総合科学部准教授)を講師に招いてセミナー「外国籍の子どもの教育~高校進学・卒業という壁」を開催しました。
樋口さんは、NGOのネットワークである「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)のなかに研究者などで2009年から「貧困プロジェクト」をたちあげて、国勢調査のデータ分析やフィールドワークに基づいて共同で実態解明するとともに、政府関係省庁への働きかけをはじめとする取り組みを続けています。
樋口さんたち「貧困プロジェクト」は、これまで「多文化教育」などの脈絡で取り上げられてきた外国籍生徒の「不就学」の問題とは異なり、あまり着目されることなく実態調査や統計も存在しない外国籍生徒の「進学(率)」を問題意識として据えています。
調査では、2000年と2005年の国勢調査で得られた数値(2010年調査は未発表)を集計し、たとえば16歳と17歳の子どもの通学率を、日本、および韓国・朝鮮、中国、フィリピン、ブラジル、ペルーといった国籍別に比較しています。日本籍と韓国・朝鮮籍とはほとんど差が見られない一方、他の国籍の生徒との格差は歴然としていることが判明しました。
格差の要因として、「国外からの転入生」の通学率が低いとことから、子どもたちの来日時の年齢と「日本語適応」の問題がまずあげられているものの、それだけでは説明しきれないと樋口さんは指摘します。これ以外に、まず日本での進学のために家族からいかにサポートを受けるかという「家族要因」に関して実例をあげながら解説しました。親の学歴や日本語能力といった文化資本が子どもに伝達されないことなどが学業不振の背景にあると分析しています。
また、親の置かれた不安定な労働市場が生活基盤の安定を損ない、結果として学業不振や進学断念を生み出していることなどが格差につながっていると指摘しました。
樋口さんは、周囲の環境次第で進学状況は大きく変化するものであり、言語能力や文化だけに原因を求めるのではなく、制度を整備してサポート要素を拡大させることが結果をよくすると強調します。
たとえば、高校や高等専門学校への進学が困難な人に対し奨学金給付をした同和対策事業や、「海外帰国子女」を対象とする編入学許可の特別定員枠の設定など、日本における特別な配慮の先例を顧みたうえで、現行の高校入学の特別措置や、とりわけ国公立大学での特別枠の拡充の必要性を樋口さんは強調しました。
セミナーには70名の人が集まり、活発な質疑や教育現場における情報交換が行われました。
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