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ヒューライツ大阪は
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セミナー「軍事クーデターから3年-在日ミャンマー人のいま」を開催しました(2/23)

 ヒューライツ大阪は、2021年2月1日にミャンマーで軍事クーデターが起きてから3年経過したことを踏まえ、2月23日にミャンマー出身の難民で大阪市在住のアウン ミャッ ウィン(Aung Myat Win)さんを講師に招き、セミナー「軍事クーデターから3年-在日ミャンマー人のいま」を対面で開催しました。参加者は40名でした。
 ヤンゴンで生まれたアウンさんは、1988年に行われた軍事政権に反対する全国規模の民主化運動に14歳で加わって以来、民主化を求める活動で軍に2度逮捕された、と過去の背景を紹介しました。そして、安全を求めてミャンマーから脱出し、1998年に来日しました。しかし、在留資格のない非正規滞在であったことから2002年に逮捕され、茨城県牛久市の東日本入国管理センターに2年間収容されたのち、2004年に難民認定されました。
 アウンさんは現在、大阪市内で訪問介護事業やレストランの経営などを行うかたわら、日本で難民認定申請をしたり、労働問題に直面している技能実習生や特定技能労働者として働く在日ミャンマー人の支援を続けています。

日本の難民受け入れの少なさと入管収容施設の問題
 アウンさんは、難民申請から認定までに至る自身の困難な経験を交えつつ、極端に少ない日本の難民認定者数のデータを示したうえで、難民受け入れのハードルの高さについて説明しました。その理由のひとつとして、難民認定に関わる出入国在留管理庁(入管庁)の職員、および入管庁の1次審査で不認定となった人の2次審査に関わり、意見を述べる任務をもつ難民審査参与員の多くが難民申請者の出身国情報にあまり詳しくない、とアウンさんは問題を指摘します。
 さらに、審査手続きにおける通訳者の選定について、「ミャンマーは135の少数民族をかかえた多民族国家で、公用語のビルマ語を十分に理解しない人たちにビルマ語-日本語の通訳者が配置されたとしても、危険にさらされている自分の状況をしっかり説明することは難しい」と課題を提起しました。
 アウンさんは、2023年の入管法改定によって、3回目以降の難民認定申請者を強制送還できるようにされてしまったけれど、申請回数で制限すべきではないと力説します。かりに1~2回目の申請時には難民該当性が低かったとしても、出身国の状況変化によって3回目以降に難民に該当するかもしれないと主張しました。
 「日本は、外国の難民キャンプに資金援助をするなど国際社会ではいい顔をしているけれど、国内への難民の受け入れを渋っています」。
 難民として認定されず、帰国を拒むと長期にわたり入管施設に収容されるという事態が続いているなか、アウンさんは入管施設の環境はとても劣悪だったと自分の体験を振り返りました。「改善を求めて入管に幾度も不服申出を行いました。それらが認められたり、認められなかったりでした。なかでも、収容施設内の医療サービスの貧弱さは大きな問題です」。
 アウンさんは、2021年に名古屋入管施設で収容中だったスリランカ人女性が病死したケースをあげて、いまだに医療態勢が整っていないことを問題視しています。

クーデター後の「肌で感じた人権教育」
 アウンさんは、クーデター直後には、民主派市民は国軍に対してインドのガンジーの非暴力主義を倣った不服従抵抗運動で対抗していたけれども、最近では「国民防衛隊」(PDF)など武装組織を結成し、各地で国軍との戦闘が展開されているという混迷状態に憂慮しています。一方で、クーデター以降の変化について次のように言及しました。
 ミャンマーではマイノリティであるイスラム教徒のロヒンギャに対する虐殺や差別が長年にわたり続いているなか、アウンさんは、在日ミャンマー人による差別を実感させられていたといいます。「私がロヒンギャに対する差別を非難すると、同胞たちのあいだで、私が経営するレストランに行かないようにと不買運動までされました。しかし、2021年クーデター以降に雰囲気が変わりました。自分たち多数派のビルマ族もロヒンギャと同じような目にあっていると実感したようで、ロヒンギャの苦難を理解し団結できるようになってきています。肌で感じた人権教育だと言えます」と語りました。

日本政府と市民社会への期待
 アウンさんは、軍事政権はいずれ倒れると信じています。そのためには、国際社会のプレッシャーが必要だと強調します。「ウクライナやパレスチナに対する支援は確かに必要です。でも、ミャンマーのことを忘れないでほしい。とりわけ、日本は同じアジアの国であり、太平洋戦争時代にビルマを占領したなど、日本とミャンマーは深い歴史的なつながりがあります。日本政府には、軍事政権に対して経済制裁をするなど影響力を行使してもらいたい」。
 日本政府がミャンマーの民主化に向けた有効な外交措置を行うために、日本の市民社会は積極的に働きかけをしてほしいとアウンさんは締めくくりました。
IMG_0009アウンさん.JPG

<参照> ヒューライツ大阪ニュース・イン・ブリーフ
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/02/321.html
軍事クーデターから3年-在阪ミャンマー人が日本政府に民主化支援を求める(2/1)
https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section4/2024/02/130.html
ミャンマー、国軍による無差別攻撃が人権状況を悪化させる―フォルカー・テュルク国連人権高等弁務官(1/30)