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オンライン人権教育セミナー「『私は男でフェミニストです』日韓男性が語るジェンダー平等」を開催しました。(10/30)

 ヒューライツ大阪は、10月30日に人権教育セミナー「『私は男でフェミニストです』日韓男性が語るジェンダー平等」をオンラインで開催しました。 『私は男でフェミニストです』(世界思想社、2021)の著者で、韓国・江陵(カンヌン)にある私学の男子高教員のチェ・スンボムさんと、東京の私学の小学校教員の星野俊樹さんをお招きし、日韓の同時通訳で進めました。長時間にわたる内容の濃いセミナーから、この企画の担当者が印象に残った部分を要約して報告します。

 はじめに、今回のイベントを共同で企画した阿久澤麻理子さん(大阪公立大学教員)から、人権・ジェンダーに対するバックラッシュに直面する時代にあって、男性教員であるチェ先生が、自分の思いや学校での実践を、日常の言葉で伝えてくれた本との出会いが衝撃であったこと、そこから学びたいという思いが今回の企画につながったと、説明がありました。

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チェ・スンボムさん 星野俊樹さん


 プログラムは2部構成で進められました。1部は、まずチェさんが「私とフェミニズムとの出会い」、「出会って何が変わったのか」「韓国社会は今どうなっているのか」について多くの写真を使い、語りました。特にチェさんのオモニ(母)の人生と家父長的な価値がしみ込んだ家族の話があり、通っていた大学での教授による性暴力事件と加害者を擁護する同僚教員の姿に衝撃を受けたという話がありました。この事件がチェさんにとってフェミニズムを学ぶ契機となり、家族の在り方をフェミニズムの視点でふりかえることになりました。チェさんが韓国で2018年にこの本を出版して以降、女性嫌悪の無差別殺人事件に象徴されるようなフェミニズムやジェンダー平等に敵対的な男性が増えるなど社会状況が悪化しているといいます。とりわけ20代、30代の男性たちにその傾向が強いとのことです。日本においても、女性に対しかつては「慈悲的」な態度を取る男性が多かったです。若年層を中心に攻撃的になる男性たちが増えている点で韓国と似た状況であることを阿久澤さんが指摘しました。

 チェさんの話を受けて、星野さんも自身のライフストーリーを写真を示しながら語りました。星野さんもチェさん同様に大学時代にフェミニズムに出会って、心が解き放たれていったことを語りました。家父長的で強圧的な父親との葛藤や騎馬戦に代表される学校教育の中での男性性の強制を経験しました。そのような環境の中で自身の性的指向を自覚しましたが、長年隠す選択をするしかありませんでした。高校時代に経験した、クラスメートが「悪ふざけ」で行った性的マイノリティに対する差別的なアンケートに先生もその差別行為に加担したのですが、自分自身はやり過ごしたという苦い思い出も紹介しました。
 2部は、星野さんが進行役を担い、チェさんへの質問を投げかけて、二人で対話するというスタイルを取りました。星野さんの、「職員室で同僚同士が語り合う、職員室トークで行きたい」とのコンセプトどおり、フェミニズムに出会い、ジェンダー平等教育を推し進めたいと思っている教員同士の話が進んでいきました。二人はあえて、社会で「標準」ではないとみなされていること、つまりマイノリティ性を持っている部分も自己開示しました。それは参加者を含めた私たちに信頼をおいてくださったからであり、個人の生きづらさは社会の問題につながっているという確信があったからだと思います。お互いに相手の生きづらさを傾聴し、誠実に受けとめようとするやりとりに、終了後のアンケートでも共感の言葉が多数寄せられました。生徒たちへの向き合い方では「いい先生ではなく、信頼される先生であること」「常に弱い立場の人たちの側に立つ先生に」という言葉が印象的でした。それはフェミニズムに通じる考えだといえます。

 アンケートの中から、一部を紹介します。「ご自身の体験をかなりつらいものを含めてシェアしてくださり、自分の中の特権性とマイノリティ性について誠実に向き合う大切さを教えていただいた」「普段あまり聞くことのない分野(男性が語るフェミニズム)を聞くことができて、とても有意義な時間でした」「お二人の自己開示感謝ですし、お二人の共感力の高さ、優しさが伝わる内容でした。...なぜ当事者の声はうるさいと思われてしまうのか。マジョリティは想像力・共感力を駆使しなくても、なんら不自由なく生きられてしまうという不均衡があるからだと思います」「性別ではなく、人としてジェンダーを捉え、一人ひとりが大切にされる社会をめざしたいと思った時間になりました」。 (朴君愛)