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オンラインセミナー「大阪の未来にIR(統合型リゾート)は必要なのか?」を開催しました(4/13)

 大阪府と大阪市は、2025年大阪・関西万博が開かれる大阪市の人口島・夢洲(ゆめしま)に、カジノ、国際会議場、展示場、エンターテイメント施設、ホテルなどが一体となったIR誘致の計画を進めています。大阪・関西への経済効果が期待される一方、予定地の土壌汚染・液状化対策などのために巨額の公費負担が予定されているなど様々な問題が浮上している。ヒューライツ大阪は4月13日、特定非営利活動法人AMネット事務局長の武田かおりさんを講師にオンラインセミナー「大阪の未来にIR(統合型リゾート)は必要なのか?」を開催しました。武田さんは、経済と環境の側面から計画の問題点をあげ、市民の立場から持続可能な開発への提案を呼びかけました。
 武田さんの報告概要を以下紹介します(資料は報告レジュメの一部です)

大阪IRはどんな計画?
 なぜ大阪IRが必要なのか、大阪府市の資料をもとに説明する。IRによって、大阪の成長の起爆剤となる「新たな国際観光拠点」の形成を図り、経済活性化の好循環スパイラルを実現する。その要件として、広大な用地や非日常空間を演出するロケーションや景観を満たす「夢洲」において取り組みを進めるもの、としている。
 施設の建設・運営は、米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスの企業連合が担う(以下、MGMオリックス)。MGMオリックスが2021年に出した提案は概要しか公開されていないが、年間来場者を約2,050万人と見込み、内訳は国内から1,400万人、国外から650万人と、7割が国内客と予想。ちなみにユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の年間来場者は国内外から1,460万人という規模である。
 年間の予想売上高は約5,400億円とし、うちカジノから4,300億円。MGM社が世界で運営する27施設の売上は1兆円超なのに、なぜか大阪だけでこんなに大きな売り上げを見込んでいる。そして、納付金・入場料として1,100億円が府市に支払われることになっている。
 では、どんな魅力的な施設を作るのか。まず、国際会議場、展示施設などいわゆるMICE(マイス)と呼ばれるもので、客単価が高いお客さんを見込む。また、リピーターを見込む魅力増進施設としてガーデンシアター(伝統芸能)、関西ジャパンハウス(工芸体験)、三道体験スタジオ(華道、茶道、香道)など。世界最高水準のエンターテイメント施設をうたう3,500席の夢洲シアター。そして、カジノである。

大阪IRの資金計画
 大阪IRに賛成している人の多くが、「外国企業の投資のもと、外国から富裕層が来阪しお金を落としてくれるからよい」と思っている。しかし、実際には7割が日本人客と想定されている。オリックスは株主総会で、日本人客だけでも運営できるよう試算していると説明せざるを得なかった。
 そして、初期投資額は1兆800億円というが、その半分が三菱UFJ銀行と三井住友銀行からの借り入れで、残り半分が株主となるMGM、オリックス、関西の会社によるもの。すなわち、外国からのお金はMGMが出資する20%ほどに過ぎず、あとは日本国内で調達する計画なのだ。

そもそもカジノがなぜOKになったのかについて
 MICE(展示場、国際会議場)は経済成長に必要だがもうからない。カジノの利益でMICEを作り、運営するのならOKという理屈で、MICEを作るために、これまで違法とされてきたカジノを合法化したのである。ところが、大阪IRはMICE部分の規模を大幅に縮小したのである。
 カジノ誘致に賛成の人は、以上のように賛成する前提条件が崩れていると、知らないのではないか。
IRカジノに賛成している人にこそ、こんなショボいIRはダメだと反対してほしい。もともと世界最高水準のIRと言っていたのが、2019年から2021年のあいだにIR施設の総延床面積が2/3に縮小した。展示場面積は10万㎡から2万㎡に減った。築40年の国際展示場「インテックス大阪」ですら7万㎡ある。その1/3規模のものがいまさら必要なのか。MICEが必要だと考えていた経済界の人たちはもっと怒ってはどうか。
 契約書(基本協定書)をみると、IR事業者は規模をさらに小さくすることが可能で、開業前に撤退することも可能となっている。ショボすぎる上に、いつ撤退されるかわからないのだ。
 もうひとつは、そんなに儲からないということ。松井大阪市長が経済波及効果は年間1兆円、納付金収入1,060億円と説明しているが、その前提条件は、年間1,070万人が入場料6,000円を払ってカジノに来場し、全員が1日あたり60万円を賭ける想定で、6兆円の賭け金が毎年必要になる。全国の競馬の賭け金が約3兆円/年だから日本中央競馬会(JRA)での賭け金合計の2倍に相当する。前述のように、規模は2/3に縮小したが、経済波及効果の試算額はなぜか1.5倍に膨らんでいる。この儲け話の信ぴょう性について大阪市会でも質問が出たが、事業者が厳密に計算した数字だと説明するだけで、大阪市として自前で再試算していないことが判明している。カジノの面積比で、マカオの1.5倍、ラスベガスの7倍の粗利益を出す計算になっているのだ。

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公約違反では?
 自民党大阪市議団は、従来IRに賛成してきたが、なぜ反対するようになったのか。これまで「カジノに税金は1円も使わない」と言われてきたのに、「土地関連費用は大阪市負担」にかわってきたからだ。MGMオリックスが、「夢洲は液状化する」と指摘し、大阪市に負担を求めてきたことを受けて、追加調査もせずに大阪市の負担で対策を講じることを決めたのだ。今試算しているだけでも夢洲の土地改良費は2,482億円で、これに技術的に未知な地盤沈下&液状化対策費用が加わることになるのだ。
 夢洲は、いまも埋立途上で、建設土砂など廃棄物の「最終処分地」だ。埋め立てが完了した土地部分は、国際コンテナ戦略港湾として関西の物流拠点となってきた。
 大型のコンテナ船は水深が最低15m必要だが、大阪港で大型コンテナ船が通れるのは夢洲だけだ。物流の需要が高まっているのだが、国交省から「コンテナターミナルとしての容量不足」などの指摘をすでに受けており、ヤード面積不足でコンテナは高積みされている。ゲート前や周辺道路で慢性的に交通渋滞が起き、沖待ちの事態にも直面している。
 これに「国際観光拠点」が加わったのだ。2025年に大阪・関西万博、2029年後半に大阪IRができるとさらに大混雑するのは必至だ。

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夢洲は生物多様性ホットスポットのAランク
 夢洲は、何千羽もの渡り性水鳥の餌場であり中継地となっている。最終処分地を自然再生地域にしていく事例が世界的な流れになっているが、夢洲もその一例にすべきだ。自然にできた野鳥の餌場や休息地を残さないでどうするのか。2022年3月、日本自然保護協会など環境3団体は、万博後も水鳥が生息できるよう湿地と干潟を形成する計画に修正すること、自然体験の場として活用し、ラムサール条約登録をめざすなど4項目について、日本国際博覧会協会と大阪府市に対して要望書を送った。

夢洲開発にかかる大きな二つの費用
 夢洲開発には、①万博のインフラ整備と、②万博へのアクセス改善のために多額の費用を要する。
 ①の埋立、道路・水道・鉄道などの万博インフラ整備費は、土地を所有する大阪市がすべて負担するもので、当初1,000億円だと言われていた。しかし、2021年12月、松井市長が「大阪市の責任で土地改良も負担」と述べて一変した。万博跡地を含むインフラ整備&土地改良費で今後さらに2,482億が必要という試算となった。これとは別に、当初からある最終処分地等としての開発費用が約3,000億円かかっている。これらを合わせると、すでに6,000億円を超えている。加えて、「未知の技術」とされる地盤沈下対策費が加わってくる。
 もうひとつの大きな費用は、②万博へのアクセス改善のための4.4キロの淀川左岸線の第2期工事費である。当初約1,300億としていたのが、夢洲同様の土地改良費でどんどん費用が膨れ上がり、約3,000億円まで増えている。

夢洲は「開発」するほど、お金がかかる
 埋立地の土地改良について、大阪市の売却・賃貸の過去契約では、すべて「事業者負担」としていたのだが、大阪IRではMGMオリックスに「事業の継続が困難になる」と言われるまま、事業者の条件をのんでいる(情報公開請求による)。
 この土地改良は、IR事業者が工事し大阪市が代金を払うというもので、公共工事ではないため入札もない。
 2022年3月の大阪市会で「土壌汚染・液状化・地中埋設物」対策の土地改良費790億円の債務負担が可決された。これに対して自民党と共産党は反対した。公明党は賛成したものの、790億円を厳守するという付帯決議をつけている。
 しかし790億円超えたとき、大阪市会は断れるのだろうか。地盤沈下対策費は試算すらない。
 情報公開請求の資料には、事業者意見として、液状化対策は未知の技術であることを指摘し、大阪市で敷地全体の地盤改良を行ったうえで土地を引き渡す必要があると述べているのである。
 さらに、MGMオリックスが協定解除できる条件として、新型コロナ感染症が終息し、コロナ禍以前まで、国内外の観光需要の回復が見通せないと事業者が見込んだ場合や、地盤沈下・液状化・土壌汚染などが生じたとき市が事業者と協力して適切な措置を講じなかった場合、全ての条件を一定程度充足しても、各条件の充足度を総合的に考慮し設置運営事業の実施が困難だと事業者が判断した場合などの理由でMGMオリックスは、実質的にいつでも撤退可能となっている。
 大阪IRは35年契約で、35年後に「事業の継続を前提に」30年の延長を協議することになっていることから、実質65年のライセンスという超異例の長期契約だ。65年間も大阪市が土地改良費を負担することになるのだろうか。ちなみにマカオのライセンスは2022年更新され、20年間から10年間へと短縮されている。
 MGMオリックスはいつでも撤退可能だが、大阪府市は訴訟・賠償金リスクを負うという不平等な内容になっているのだ。MGMは約10年前、ベトナムでオープン直前に撤退したという経験がある。
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持続可能な開発を
 以上のような計画に対して私たちは「持続可能な開発」を訴えている。
・超軟弱地盤の夢洲に超高層ビルの建設は無理。夢洲を「商業地」から「工業地」に土地の用途を戻すこと。集客施設ではなく、盛土だけで使える物流拠点を拡充する。
・「予約制」入場で、一日当たりUSJの4倍の集客は無理。万博を夢洲でやるなら、規模を大きく縮小し、試算しなおす。
・自然再生地域とし、ラムサール条約登録を目指す。
・無理に埋め立てたところは、再度丁寧に埋め直し、最終処分地として使えるところまで大切に使う。
・災害時のがれき置き場としても使えるよう配慮する。
・開発費用は、大阪市内の老朽化施設や災害対策に使う。

大阪IRの直近~これからの流れについて
 2022年3月に、大阪府議会で区域整備計画が可決され、①大阪市会で区域整備計画と土地改良費の債務負担行為が維新・公明の賛成により可決された。4月28日までに大阪府が国に区域整備計画の申請を行う。それを受けて、②国が2022年秋頃に計画・実施協定の認定、そして冬頃に府・市・事業者間で立地協定・定期借地権設定契約が結ばれる予定だ。2023年春には③知事市長ダブル選挙・地方統一選挙が行われる予定だ。
 反対する山場は①②③のタイミングだ。しかし、①の3月の議会では止まらなかった。次は、②国に対してこんないい加減な計画を認定しないよう要請していくこと。うまくいかなければ、③2023年の知事市長ダブル選挙・地方統一選挙でIRに反対する知事・市長が選ばれなくては止めることが難しくなる。このままいくと、2029年後半にIRカジノが開業する。
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止めるために、これからできること(案)
 まだ具体的には決まっていないが、止めるために、これからできることの案を紹介する。
 1つ目は、参議院選挙前に、国に対して、区域整備計画・事業者に有利な実施協定を認定しないよう要請する署名活動を展開する。
 2つ目は、住民監査請求。これはいま論点を整理しているところ。
 3つ目は、ダイベストメント(投資撤退)運動。カジノに融資する三井住友・三菱UFJ銀行に対して融資しないよう呼びかける個人の署名や団体による要望書を送る。
 4つ目は、知事市長ダブル選挙・地方統一選挙でIRカジノを争点化する。
 また、大阪府に対し、住民投票の実施をもとめる運動が始まっている。大阪府の770万人中、15万人の署名が必要だが、誤記などで無効になることを見越して20万人目標で実施されている。「カジノの是非は府民が決める 住民投票を求める会」が実施している。
 署名が必要数を上回った場合、大阪府知事への請求を経て、住民投票実施の条例案が府議会で審議され、可決されれば実施される。
 住民投票の実現は難しいが、この運動を通じて反対する市民がこれだけいるんだという可視化につながるし、カジノ問題を知る機会となる。ぜひ協力していただきたい。
 私は、これまで何度も街頭に立って、IR問題に関して話したり、チラシを渡したりしているけれど、関心は高まっておらず、こんなにひどいことも知られていないという実感だ。わざわざ「私は賛成している」と言いに来る人もいて、賛成の人がかなりいることを認識している。
 あえてカジノの是非を書かず、「大阪IRの計画がめちゃくちゃしょぼいらしい」とか、「インテックス大阪の1/3の規模しかないらしい」など日常の言葉を盛り込んだチラシをつくって住民投票を求めている人たちにも配布していただいている。日常会話で普通の人が「やばいらしいで」と言い始めたとき、都構想に反対する市民運動の始まりとなった。皆さんも「IRはやばそうや」という話を日常会話のなかで入れていただき、いっしょに問題を広げていきたいと思う。
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