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国際人権ひろば No.63(2005年09月発行号)

アジア・太平洋の窓 Part3

モンゴルの大草原でAPF10周年を祝う

野澤 萌子 (のざわ もえこ) ヒューライツ大阪研究員

APF10周年の祝賀


  モンゴルの首都ウランバートルで8月24日から26日の3日間にわたり、アジア・太平洋国内人権機関フォーラム(以下、APF)の第10回年次会合が開催された。モンゴル人権委員会が主催したAPF10周年の記念行事はとても豪華なもので、約120名の参加者らは、広大なモンゴルの大草原での競馬やモンゴル相撲、そして豪華なモンゴル料理に楽しみ、満天の星と花火の饗宴に、紙コップに入ったシャンパンで祝杯を挙げ祝賀を締めくくった。
  しかしこれは祝賀のために供された公式晩餐と歓迎行事である。肝心な会合において、「APF10周年」は議題として取り上げられることはなかった。しかしこの10年間オブザーバーとしてかかわってきたNGOの中には、10周年を迎えたAPFの活動を分析、評価することの必要、特にAPFの年次会合での声明の効果やNGOのかかわり方について意見することが重要ではないかという意見が少なからずあった。

第10回年次会合


  例年と同じくAPF年次会合の1日目は、メンバー機関や国連関係者のみが参加できるクローズドセッションで、APFの運営方針や新メンバーの審査などが行われた。今年は新しいメンバー機関としてアフガニスタン独立人権委員会(Afghanistan Independent Human Rights Commission)が正式メンバーとして認められ、東ティモールの人権及び正義プロヴェドール(オンブズマン)(Provedor for Human Rights and Justice of Timor-Leste)をメンバー候補として、またカタール国家人権委員会(National Human Rights Committee of Qatar)を準メンバーとすることが承認された[1]
  2,3日目はアジア・太平洋地域の政府代表やNGOもオブザーバー参加するオープンセッションである。2日目はメンバー機関による活動報告と、国内避難民や人権教育の報告と議論、3日目は毎年設定されるメインテーマに基づく議論で、今年は「国内人権機関と拷問」がテーマであった。「拷問」については、その定義の明文化や拷問を処罰する特別法の必要など国家による「拷問」への対応に加えて、私人間での拷問に対応する必要が報告された。例えばネパールの村落部では「魔女狩り」としてカーストの低い者や女性などの弱者が、地域住民から集団的な暴行をうける事例が少なくないために、ネパール国家人権委員会は「魔女」事例を優先的に処理するだけでなく、政府に対して「魔女狩り」を処罰するための特別法の制定を勧告しているという。このほかにテロリズム、人身売買、死刑についても議論し最終声明の採択で終了した[2]
  今回の会合で一つ気になるのは、APFにおけるNGOのプレゼンスの低下である。もちろんNGOはオブザーバー参加であるが、ほかの国連の人権会合などと比べると議論への意見、共同声明の発表などの機会が保証されてきた。しかし今回は発言の時間が極めて少ないだけでなく、「時間がない」という理由で準備していたNGO最終声明の時間が与えられなかった。これはこの10年で初めてのことである。さらにAPF最終声明においては、オブザーバー参加のNGOを制限するためか、今後、オブザーバーのガイドラインを検討するとしている。

APFの成果


  APFの主な目的は、メンバー機関の人権保護や促進能力を高めるために支援し、地域内で「パリ原則」[3]に合致する国内人権機関の設置を進めるために、政府やNGOを支援することである。1996年にオーストラリア、ニュージーランド、インド、インドネシアの4つの国内人権機関から出発したAPFは、17のメンバー機関を数えるまでに発展し、まだメンバー機関とは認められていないモルジブやイランなどの人権機関の参加も年々増加している。
  地域内の国内人権機関の能力を高めるためにAPFでは、各国内人権機関が、申立て管理に必要なコンピューター技術の支援や、人権侵害の調査に関わるスタッフのトレーニングなどの相互支援活動を行ってきた。国連で草案準備中の障害者権利条約の審議過程への参加など、国連の人権活動へのコミットメントも積極的に進めている。このようなAPFの活動は、地域全体を包含する人権機構がいまだ存在しないアジア・太平洋地域において、その役割を代替的に担ってきたとも評価されている。

アジア・太平洋地域全体における「人権」の発展


  一方で、アジア・太平洋地域の諸国の中には、日本やバングラデシュなどのように国内人権機関を設置する法案の審議と廃案を繰り返し進展が見られない国もある。地域全体の「人権」をボトムアップするためには、メンバー機関の相互支援だけでなく、地域内の国や市民社会への協力も期待したい。いまやアジア・太平洋地域の人権にかかわる最大のフォーラムともいえるAPFが、「人権」の保護と促進を進めていく上で、国内人権機関や国だけでなく、NGOや地域社会を含む草の根レベルでの協力関係が不可欠なことはあえて進言するまでもない。

1. APFのメンバー資格は、「正式メンバー」、「メンバー候補」、「準メンバー」の3種類ある。正式メンバーとなるには、「パリ原則」に規定される基準をクリアしなければならない。詳しくは『人権保障の新たな展望-国内人権機関の機能と役割』(ヒューライツ大阪、2004年)103-104頁を参照。
2. 最終声明の原文(英語)はAPFのホームページを参照。日本語訳はヒューライツ大阪のホームページ・国際人権データベースを参照。
3. ヒューライツ大阪のホームページ・国際人権データベース参照