国連人権理事会が「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)を全会一致で承認してからまもなく15年となり、国や企業、市民社会などのステークホルダーによる指導原則の実践がグローバルに進んでいます。指導原則の解釈の一貫性を保ち、グローバルな統一基準に沿った実践を支援するため、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、2025年11月に開催された第14回国連ビジネスと人権フォーラムにおいて、「ビジネスと人権ヘルプデスク」(以下、ヘルプデスク)の開設を発表しました。以下は、OHCHRが公表したヘルプデスクのコンセプトノートの概要です。
●ヘルプデスク設置の背景
指導原則の普及に伴って、指導原則を明確に解釈したいというニーズが高まり、OHCHRに対する指導原則の解釈や実践についてのステークホルダーの要請が急増しています。また、ステークホルダーの独自解釈が指導原則の本来の考え方との乖離や理解の断片化を生むリスクが指摘されています。一方で、OHCHRではリソースが限られ、体制や制度が十分に整備できず、要請への回答が大幅に遅れる、必要な対応ができないといった状況が近年続いていました。
こうした状況に対応するため、指導原則の普及と実行を担う国連ビジネスと人権作業部会が発表した「UNGPs10+ ビジネスと人権の次の10年のためのロードマップ」(2021年)および「指導原則の実施に向けた能力構築に関する報告書」(2023年)の中で、ヘルプデスクを設置することをOHCHRに提言しました。
●ヘルプデスクの体制
ヘルプデスクはOHCHRのビジネスと人権部門に組み込まれ、専任コーディネーターが課題、セクター、国・地域ごとの専門性を持つスタッフと連携し、ビジネスと人権の実務家・専門家のグローバルなネットワークを活用して運用していきます。
OHCHRは今後5年間で2,500万ドルの資金調達を行い、各地域の現地事務所に専任スタッフを配置して、国連の全公用語、各地域の時差に対応していくことをめざします。
●ヘルプデスクの役割
ヘルプデスクはOHCHRが担っている以下の役割を支援し、強化するものです。
①指導原則の解釈に関する助言
国や企業、市民社会などのステークホルダーが指導原則の解釈をヘルプデスクに相談することができます。OHCHRのビジネスと人権部門に寄せられる実務的な課題や各国の状況に関する要請を集約し、必要に応じて作業部会と連携して対応します。
②政策の一貫性と整合性
法案や法律、ビジネスと人権に関する国別行動計画などの各国の政策が指導原則と整合しているか、ヘルプデスクが評価し、提言を行います。
③専門的助言と能力構築
ステークホルダーが指導原則を実践するための実務的な助言や能力構築の支援をヘルプデスクが行います。ステークホルダーはOHCHRのビジネスと人権部門が有する特定の課題、セクター、国・地域に関する専門知識を活用することができます。
④実務に役立つツールや資料の整備
OHCHRが提供しているビジネスと人権に関する手引書や参考資料を補完する新たなツールや資料の整備を推進します。
⑤連携のためのプラットフォーム
ヘルプデスクはビジネスと人権に関する質問や要請を受け付ける窓口となりますが、以下のように、別の機関が質問や要請の内容を扱っている場合は、適切な機関へつなぎます。
●ヘルプデスクへの問い合わせ
ヘルプデスクは、国、企業、人権に影響を受けるライツホルダー(権利保持者)、市民社会組織など、すべてのステークホルダーに開かれています。OHCHRサイトのヘルプデスクの問い合わせページに掲載されているメールアドレスから相談が可能です。
<出典>
<参考>
(2026年03月31日 掲載)