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外国人排斥(ゼノフォビア Xenophobia)の世界的な高まりを受け、人種差別撤廃委員会(CERD)と移住労働者権利委員会(CMW)は、外国人排斥を根絶するためのガイドラインを共同で策定しました[1]。 ガイドラインは、「一般的ガイドライン」と「テーマ別ガイドライン」の2種の独立した文書として策定され、前者は「CERD一般的勧告38/CMW一般的意見7(以下、GC38/GC7)」として、後者は「CERD一般的勧告39/CMW一般的意見8(以下、GC39/GC8)」として同時に採択されています。2種のガイドラインは、相互に補完するものとして設計されており、あわせて読まれ、解釈され、かつ実施されるべきと位置づけられています。 |
この記事では、一般的ガイドラインであるGC38/GC7について、その概要を紹介します。
*テーマ別ガイドライン(GC39/GC8)の概要はこちらを参照ください。
一般的ガイドラインは、出国理由、通過国又は目的地国における地位、家族関係、雇用、研究、庇護その他の保護、地域協定といった居住許可の申請又は取得の根拠にかかわらず一時的または恒久的に他国に居住する目的で国境を越えて出身国から移動するすべての人々を「移民」として定義しています(パラ8)。
また、移民の定義に含まれなくとも、外国人排斥の文脈において人種差別または交差する形態の差別の影響を受けるすべての人々を「そのようにみなされる他の人々」として定義され、具体的にはよそ者または外国人、あるいは単に他者とみなされることで、不平等かつ差別的な扱いを受けている個人や集団なども対象となります(パラ12)。
一般的ガイドラインは、個人が差別や周縁化を経験する方法が、人種や性別、性的指向など、複数の重なり合う要因に基づく力関係によって形作られていることを認識し(パラ20)、外国人排斥とその人権への影響を効果的に根絶するためには、交差性アプローチが不可欠であることを強調しています(パラ21)。
他にも、たとえば【宗教および信仰】については、特にイスラム教徒への排斥や反ユダヤ主義に対する懸念を示し(パラ65)、宗教および信仰に基づく差別を外国人排斥的な差別の一側面として認識し、啓発や教育、データ収集、コミュニティへの対応および被害者への支援サービスの提供に反映すること(パラ67)などを勧告しています。
一般的ガイドラインは、外国人排斥が社会、文化、歴史、経済、政治といった広範な側面に及ぶ複数の構造的要因と本質的に関連していることを認識し、外国人排斥と交差する形態の差別に対処するために包括的かつ総合的な政策が必要であるとして、そのために鍵となる10要素を網羅することを勧告しています(パラ73)。
このうち、【法的枠組】について、締約国は、複合差別及び交差的差別の概念を含む国際人権基準に沿った包括的な差別禁止法制を整備し、国籍や移住上の地位を含むあらゆる差別事由に基づく直接差別・間接差別、ならびに交差的・複合的差別を明確に禁止すべきとされます(パラ74)。外国人排斥的行為は違法とされ、適切な制裁が科されなければなりません。また、移住、庇護、労働、社会保障等に関わる既存の法令や政策についても、差別的影響や排除を助長する規定がないかを検証し、必要な改正を行うことが求められています(パラ76)。
また、【国内および地方人権機関】については、外国人排斥に対する包括的政策の中核的な担い手と位置づけ、パリ原則[3]に沿った独立性、十分な権限および資源の確保を求めています(パラ86)。これらの機関は、差別の実態把握のための調査・データ収集、被害申立ての受理と救済、政策・立法に対する助言、啓発活動や異文化間対話の促進などを通じて、移民や外国人を含む人々の権利を横断的に保障する役割を果たすべきとされています(パラ87・88)。また、政策の実施状況を継続的に監視・評価し、是正を促す点でも不可欠な存在とされています(パラ105)。
さらに、政府全体での機構間連携、地方自治体の役割、市民社会の参加、司法へのアクセス、能力構築、データ収集、フォローアップ、資源配分および国際協力といった要素が、相互に補完し合う形で求められています。
出典:Joint general recommendation No. 38 (2025) of the Committee on the Elimination of Racial Discrimination and general comment No. 7 (2025) of the Committee on the Protection of the Rights of All Migrant Workers and Members of Their Families on general guidelines for eradicating xenophobia towards migrants and others perceived as such
https://www.ohchr.org/en/documents/general-comments-and-recommendations/joint-general-recommendation-no-38-2025-committee
[1] 2つのガイドライン全文の日本語訳は反差別国際運動(IMADR)のウェブサイトから読むことができます。
https://imadr.net/cerdgr3839/
[2] 日本におけるレイシャルプロファイリングについてはレイシャルプロファイリングの実態 | ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター)を参照
[3]パリ原則の日本語訳は国家機関(国内人権機関)の地位に関する原則(パリ原則) | ヒューライツ大阪 に掲載
国内人権機関については国内人権機関とは? | ヒューライツ大阪 を参照
(2026年01月19日 掲載)