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ヒューライツ大阪は「ビジネスと人権に関する行動計画」改定版原案についてのパブリックコメントに意見を提出しました(10/27)

 ヒューライツ大阪は、外務省総合外交政策局人権人道課が2025年10月30日まで実施している「『ビジネスと人権』に関する行動計画改定版の原案についての意見募集」に意見を提出しました。改定版行動計画は「2025年12月めどに関係府省庁連絡会議にて承認」(外務省ウェブサイト)するとされ、「新計画は令和8年度(2026年度)から開始する」と「原案」に記載されています。
 ヒューライツ大阪が提出した意見は下記のとおりです。国は、企業活動から受ける負の影響からライツホルダーを保護し、有効な救済へのアクセスを整備する義務を果たさなければならないという「ビジネスと人権に関する指導原則」の基本的な視点と、行動計画はその義務を果たすための政策戦略である、という本来のあり方を踏まえた上で、下記のとおり17項目にわたって意見を提出しました。
 末尾には、提出した意見全体のPDFダウンロードリンクもあります。
 なお、下記の見出し部分はこのニュース・イン・ブリーフ上で分かりやすく伝えるためのものです。

※ パブリックコメントの詳細は以下のサイトに掲載されており、10月30日が期限となっています。
「ビジネスと人権」に関する行動計画改定版の原案についての意見募集(電子政府の総合窓口 e-Gov)

【全体に関わる意見】

①実施してきた施策の列挙より「行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」のほうが重要

【2~11ページ】「第1章 行動計画が改定されるまで(背景及び作業プロセス)」

【意見骨子】
「行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」の部分を行動計画の冒頭に配置して「第1章」としてください。
【理由】
「行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」は行動計画の改定に際して極めて重要な内容です。ところが原案では、「2020~2025年の取組成果」及び「日本企業の取組状況と国際的な動向」が冒頭に配置され、7ページ以上の紙幅が費やされています。加えて、これらは「第2章 優先分野」での「課題認識及びこれまでの取組」の記述と重複する部分も見られるため、内容を精査してよりコンパクトにした上で「行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」の後ろに配置するか、別添としてください。

②「具体的施策の例」に具体性がないため別途「アクションプラン」が必要

【12~34ページ】「第2章 優先分野」

【意見骨子】
各部分で「取組の方向性及び具体的施策の例」となっている表題を「取組の方向性」と修正し、具体的施策については、年次のアクションプランとして別途策定してください。施策項目の中で多用されている「検討」という表現も削除してください。また、具体的施策の記述の前提としてギャップ分析が必要であること、政府としてギャップ分析に取り組むことを、第1章「5 優先分野の特定」の中で明記してください。
【理由】
「取組の方向性及び具体的施策の例」に掲げられている個々の施策は、「検討」という表現が用いられている場合はもちろん、それ以外の場合も、ほとんどが具体的な施策の記述にはなっていません。したがって、誤解を招かないため、項目名から「及び具体的施策の例」は削除し、具体的施策については、影響を受けるステークホルダーとの十分な協議の上、年次のアクションプランとして別途策定する必要があります。
本来、行動計画に記述すべき「施策」は、解決しなければならない課題に対する政府の「措置」(measures)です(国連ビジネスと人権作業部会「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」)。国が人権保護義務を果たすために何を解決しなければならないかは、現状の施策のギャップを分析して初めて明確になります。したがって、ギャップ分析の必要性を明記しておく必要があります。

【個別部分に関わる意見】

③「インパクト指標」に関して事実に基づいた記述を

【6ページ】第1章「1 2020~2025年の取組成果」

【意見骨子】
「旧計画の実施状況については、ビジネスと人権に関する行動計画の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議(以下「連絡会議」という。)において、それぞれの施策の具体的な進捗状況及び行動計画全体のインパクトを測定するための「5つの優先分野における指標」に基づく評価を踏まえ、年次レビューを実施してきた。」の部分にある「インパクトを測定するための」を削除してください。
【理由】
「インパクト」は、本原案34ページでも「事業が社会にもたらした変化」のことであると記述されています。策定された「5つの優先分野における指標」がこうしたインパクトを測定するものとなっておらず、施策のアウトプットを測定するものに留まっていることはすでに客観的に明らかになっています。事実に基づかない記述は避けるべきです。また、こうした記述をすること自体、行動計画の信頼性、ひいては日本政府の信頼性を減じることにもなります。

④「政策の一貫性の確保」について明確な記述を

【9ページ】第1章「3 行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」

【意見骨子】
「政策の一貫性の確保」について明確に記述してください。
【理由】
「3 行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」の冒頭の叙述では、旧計画の4項目((1)国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進、(2)「ビジネスと人権」関連政策に係る一貫性の確保、(3)日本企業の国際的な競争力及び持続可能性の確保・向上、(4)SDGsの達成への貢献)のうち、(1)(3)(4)にのみ言及した上で、「新計画においても、こうした行動計画の策定目的及び位置づけは変わらない」としています。(2)については、その後の叙述で「日本政府として一貫性をもって適切な対応を取っていくことが、日本企業にとってのビジネスの強靱性、予見可能性及び確実性を向上させる上でも必要である」と限定的な文脈で触れられているに過ぎません。
「政策の一貫性」は、指導原則の原則8で重要性が述べられており、新計画が指導原則に基づいているとするなら言及は不可欠です。旧計画では「関係府省庁間の政策の一貫性を強化していく」旨が具体的に詳しく記述されており、同様の内容を新計画でも改めて記述しておく必要があります。

⑤誤解を招く「社会貢献活動」等の記述の削除を

【9ページ】第1章「3 行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」

【意見骨子】
「社会貢献活動やコンプライアンスとしての捉え方と合わせ」を削除して下記のように修正してください。
(修正前)
「新計画の実施に当たっては、企業による人権尊重の取組を、社会貢献活動やコンプライアンスとしての捉え方と合わせ、企業の持続的・安定的な成長に寄与し得る行動として位置付けて行くことも重要である。」
(修正後)
「新計画の実施に当たっては、企業による指導原則に基づく人権尊重の取組を、企業の持続的・安定的な成長に寄与し得る行動としても位置付けて行くことが重要である。」に修正してください。
【理由】
「社会貢献活動」は、企業が指導原則に基づいて人権尊重責任を果たす取り組みとは、より大きな文脈ではCSR(企業の社会的責任)やRBC(責任ある企業行動)とも、まったく次元の異なるものです。また一般に「法令遵守」のことであると狭義に受け止められがちな「コンプライアンス」に留まるものでもありません。一般に見られる誤った認識をさらに助長してしまう「社会貢献活動やコンプライアンスとしての捉え方と合わせ」という部分は削除する必要があります。

⑥「経済合理性」等の意味が不明確

【9~10ページ】第1章「3 行動計画の改定及び実施を通じて目指すもの」

【意見骨子】
「経済合理性」等をめぐる不明点を解消するため、下記の部分を全面的に削除、あるいは誤解を招かないよう全面的にリライトしてください。
「仮に、企業による個々の人権尊重の取組が、短期的に一企業における経済合理性にそぐわない場合でも、サプライチェーン上の脆弱な立場の人々の人権に対する負の影響が生じることがないよう、政府が人権保護のため必要な施策を講じて補完することが必要となる場合も想定される。」
【理由】
「短期的に一企業における経済合理性にそぐわない場合」とは具体的にどのような場合なのか? ここでの「経済合理性」とは何か? 人権尊重責任を果たすための取り組みに人的、金銭的リソースが必要な場合がある、ということなのか? それとも例えばレピュテーションリスクによって経済的な損失を被る、ということなのか? 「短期的」とはどういうことか、「中長期的」にはどういうことになるのか? この部分で最も伝えたいのは「サプライチェーン上の脆弱な立場の人々の人権に対する負の影響が生じることがないよう」の部分なのか? 「政府が人権保護のため必要な施策を講じて補完すること」は具体的にどのような施策を想定して書かれているのか? 想定している「必要な施策」による「補完」は指導原則に適合したものであるのか?・・・等々、数々の不明点が出てきて、行動計画の記述としては適切ではありません。この部分全体を削除するか、あるいは、伝えたい内容が分かるように全面的にリライトする必要があります。

⑦行動計画に記述されていない施策の扱いを明確に

【11ページ】第1章「5 優先分野の特定」

【意見骨子】
「新計画第2章において明示される優先分野が、日本におけるビジネスと人権を巡る課題の全てではなく、第2章2「誰一人取り残さない」ための施策推進に記載されていない人権を保持する主体(以下「ライツホルダー」という。)を人権保護のための施策から除外するものでもない。」について、「除外するものでもない」のであれば、今後、指導原則の求める「政策の一貫性」のもと、具体的にどう対応していくのか、行動計画の枠外で施策を実施していくのか、それとも行動計画の施策として組み入れていくのか、等について明記してください。
【理由】
指導原則に基づいて「政策の一貫性」を確保しなければならないビジネスと人権に関する政策を記述する行動計画として、具体的に記述されていない施策についても、少なくともそれらを人権政策としてどう位置づけるのかついて説明する必要があります。

⑧本来の「優先分野」の考え方に沿った構成に

【11ページ】第1章「5 優先分野の特定」

【意見骨子】
「8 実施・モニタリング体制の整備」を「優先分野」からはずし、独立した「章」として第3章の前に配置してください。
【理由】
本来「優先分野」は、人権への負の影響と保護のギャップを特定し、関係するステークホルダーと協議した上で特定されるべきものです(国連ビジネスと人権作業部会「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」)。本来のその趣旨を明確化し、誤解を避けるために、「8 実施・モニタリング体制の整備」を「優先分野」からはずす必要があります。
「新計画においては、ステークホルダー報告書等で取り上げられた様々な課題及びその後の議論を踏まえた上で、以下の8点の優先分野を掲げ」たとされていますが(本原案11ページ)。しかし、ステークホルダー報告書では、これらは「国家の保護義務、そして行動計画における政府対応の基本原則を基礎に、「ビジネスと人権」の視点から日本における課題の全体像を確認するなかで、重要だと考えられる7つの個別施策テーマ」(24ページ)として位置付けられており、本来の「優先分野」とされているわけではありません。

⑨分かりやすく整理された「人権リスク」の記述を

【12ページ】第2章「1 人権デュー・ディリジェンス及びサプライチェーン」

【意見骨子】
人権リスクの発生する場所と人権リスクの内容とを整理し、誤解を招かない記述となるよう改善してください。
【理由】
「企業においては、自社・自社グループの職場におけるハラスメント、安全衛生、過重労働、差別といった人権リスクに加え、取引先及び社会的に弱い立場にある外国人労働者、女性、LGBTQ、障害者、非正規労働者等のライツホルダーの人権リスクにも関心・問題意識が集まっている。」の部分は、①自社・自社グループの職場における人権リスク、②取引先での人権リスク、③ライツホルダーの人権リスク、の3つが並置して記述されています。しかし、③は①及び②にも存在する人権リスクです。人権リスクの発生する場所と人権リスクの内容とが未整理のまま混在した記述を、誤解を招かないように修正する必要があります。

⑩人権デュー・ディリジェンスの法制化について議論を

【13~14ページ】第2章「1 人権デュー・ディリジェンス及びサプライチェーン」

【意見骨子】
「取組の方向性及び具体的施策の例」の①の施策項目に、「人権デュー・ディリジェンスの法制化をいかに進めるかの議論」を追記してください。
【理由】
ビジネスと人権に関する政策では、国内の取り組みと国際的な取り組みの「スマートミックス」とともに、企業による自主的な取り組みと義務的な取り組みの「スマートミックス」の必要性がこれまでも強調されてきました。その義務的な取り組みの一環としての人権デュー・ディリジェンスの法制化が、今後、企業の取り組みを普及させていくには不可欠であり、具体的に検討していく必要があります。

⑪包括的差別禁止法の整備の検討を

【15~24ページ】第2章2「誰一人取り残さない」ための施策推進

【意見骨子】
この項目の総括として末尾に、「誰一人取り残さない」ためには「差別のない社会」をめざすことが不可欠であることから、人種、性別、障害などの事由を問わず、また職場や地域を含むあらゆる場面での差別禁止、および差別の形態が直接差別だけでなく、間接差別、複合・交差性差別、およびハラスメントなどを広範に禁止するための包括的差別禁止法の整備を検討する、と加筆してください。
さらに、「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」(ILO111号条約)、「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」(ILO190号条約)を締結し、国内法の整備をすることを検討する、と加筆してください。
【理由】
ジェンダー平等 、外国人労働者 、子ども・若者、障害者 、高齢者といった属性や事由に限定した個別的なアプローチだけではなく、「誰一人取り残さない」ための包括的に差別を禁止する法律が必要です。そして、雇用差別禁止やハラスメント防止を目的とした国際人権基準を国内法化する必要があります。

⑫国の施策情報へのアクセシビリティの確保を

【22ページ】第2章「2 「誰一人取り残さない」ための施策推進」

【意見骨子】
①の施策項目に、「「ビジネスと人権」関連施策をはじめとする国の施策情報へのアクセシビリティの確保」を追加してください。
【理由】
現行の行動計画や行動計画実施状況一覧等の公開情報は、複雑なPDF文書であったり視認性の極めて悪い内容であったりするなど、アクセシビリティを考慮したものとは言えません。国連ビジネスと人権作業部会の訪日調査報告書でも、「障害者の社会への完全な包摂と参加を促進するため、国別行動計画などの公式文書において障害者のアクセシビリティを確保する」ことを日本政府に勧告しています。

⑬「偏向情報」の意味を明確に

【24ページ】第2章「3 テーマ別人権課題」「(1)AI・テクノロジーと人権」

【意見骨子】
本文中の「現に存する懸念」の一つである「③誤情報、虚偽情報、偏向情報等が蔓延する問題」を「③誤情報、虚偽情報、差別・偏見情報等が蔓延する問題」に修正してください。
【理由】
「偏向情報」という表現は、人権の視点ではない幅広い意味でも受け取られる可能性があるため、人権の文脈で意味をより明確化する必要があります。列挙されている7項目の懸念は、内閣府の第1回AI戦略会議で資料として提示された「AIを巡る主な論点」に基づいていますが、③以外の他の項目も表現は微修正されており、この③も、ビジネスと人権の行動計画の趣旨に沿った表現にする必要があります。なお、参照されている「高度なAIシステムを開発する組織向けの広島プロセス国際行動規範」でも、「偽情報の助長やプライバシーの侵害等、民主主義の価値や人権に対する脅威」をリスクの一つに挙げ、組織は「有害な偏見、差別、プライバシーや個人情報保護への脅威、公平性への影響等、モデルやシステムが安全性や社会に及ぼす影響やリスクについての議論と評価」を明らかにするべきであると指摘しています。

⑭パリ原則に合致した国内人権機関設立と人権オンブズパーソンの創設の検討を

【33ページ】第2章「7 救済へのアクセス」

【意見骨子】
「取組の方向性及び具体的施策の例」の②「個別法に基づく人権救済の状況を見定めつつ、人権救済制度のあり方についての検討の継続」について、個別法に基づく人権救済だけでは人権侵害の被害者の多様なニーズに対応できないことから、下記のように修正してください。
「人権の促進と保護のための国内機関の地位に関する原則」(パリ原則)に沿った、政府から独立した国内人権機関を設立することを真剣に検討する。さらに、救済へのアクセスを容易にするために人権オンブズパーソンの創設も検討する。」
【理由】
「各種救済制度が、実際の人権侵害の救済に結びつくものであることが必要であり」と本文中に記述されていますが、実際に有効に人権侵害の救済に結びつけるためには、パリ原則に合致した国内人権機関の設立は不可欠であり、指導原則の原則27でも、国が非司法的苦情処理メカニズムを設ける際には「国内人権機関が特に重要な役割を果たす」としています。国連ビジネスと人権作業部会の訪日調査報告書でも、「パリ原則に沿って堅固で独立した国内人権機関をこれ以上遅れることなく設立すること」を政府に勧告しています。さらに、同訪日調査報告書では、国家基盤型の非司法的グリーバンス(苦情処理)メカニズムの箇所で、「国内人権機関が存在しないことは、特にリスクにさらされている人々の司法へのアクセスと効果的救済へのアクセスを実質的に妨げ、国際人権基準に基づく救済を求めることの障壁となる可能性があります。また、日本の国際的イメージにも悪影響を与えます。」と述べています。

⑮人権リスクと経営リスクの関係性を明確にした文脈に

【35ページ】第3章

【意見骨子】
下記のように修正して、人権リスクと経営リスクの関係性を明確化してください。
(修正前)
「近年、日本社会において、企業活動の人権に対する影響に更に注目が集まっており、企業の対応が自らの存続に関わるものとなっているケースも見られる。そのため、人権リスクはどの企業にもあることを前提に、危機管理の一環として人権を捉え、対応することが求められている。企業による人権尊重の取組は、レジリエンスの向上、ひいては企業価値の向上につながると考えられる。」
(修正後)
「近年、日本社会において、企業活動の人権に対する影響に更に注目が集まっている。他方、逆に企業活動に対する影響にも企業の関心の高まりが見られ、企業の対応が自らの存続に関わるものとなっているケースも見られることから、人権リスクに対応して人権尊重責任を果たすことを前提としつつ、企業としては、それが経営リスクにもつながり得るとの認識も必要である。こうして、企業による人権尊重の取組は、レジリエンスの向上、ひいては企業価値の向上につながると考えられる。」
【理由】
指導原則が求める企業の人権尊重責任は、人権リスク(=人権侵害リスク)への対処であり、関連して生じ得る経営リスクへの対応でありません。原案の文脈ではこの関係性が明確に記述されておらず、今なお「人権リスク」についての誤解が払拭されていない状況をさらに助長することになりかねません。国の人権保護義務について記述するべき行動計画において、経営リスクに言及するのであれば、指導原則を逸脱することのないよう、慎重な記述が求められます。また、さまざまな意味で受け止められてしまう「危機管理」という表現は削除する必要があります。「危機管理」が「リスクマネジメント」を意味するとすれば、指導原則は、「人権デュー・ディリジェンスが、単に企業自らに対する重大なリスクを特定し、対処するばかりではなく、権利保持者側に対するリスクをも含むのであれば、これをより幅広い企業のリスクマネジメント・システムのなかに入れることができる。」と慎重な対応を求めています(指導原則 原則17解説)。

⑯「国際的に認められた人権」は指導原則に基づいた記述を

【35ページ】第3章

【意見骨子】
下記のように修正して、「国際的に認められた人権」の意味を明確化してください。
(修正前)
「規模、業種等にかかわらず全ての日本企業が、国際的に認められた人権及び「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則を尊重し」
(修正後)
「規模、業種等にかかわらず全ての日本企業が、国際的に認められた人権、つまり国際人権章典及び「ILO宣言」に述べられている基本的権利に関する原則、並びに人権に関する諸条約に沿って」に修正してください。
【理由】
指導原則の原則12及びその解説部分に沿った表現に改める必要があります。

⑰5年後の改定の明記を

【39ページ】第4章「3 行動計画の開始・改定」

【意見骨子】
新計画を公表から5年を目途に改定すること、「状況の変化」によっては5年を待たずに改定する場合もあることを明記するとともに、旧計画と同様に行動計画の名称に(2026-2030)と記してください。また、次期の改定に際しても、ステークホルダーとの協議を行うことを明記してください。
【理由】
企業活動が及ぼす人権への負の影響がなくなることがないことは言うまでもなく、したがって国の人権保護義務もなくなることはありません。国はむしろ、人権をめぐる「状況の変化」に対応しながら積極的に対処していく必要があります。国連ビジネスと人権作業部会の「ビジネスと人権に関する国別行動計画の指針」も、状況に応じたものであること、及び定期的に改定することを、国別行動計画の不可欠の条件としています。

<ダウンロード>

<参考>


(2025年10月27日 掲載)