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国際人権研究会「インドのタミル・ナドゥ州におけるダリット女性の解放運動」(2001年6月)

国際人権研究会 報告

「インドのタミル・ナドゥ州におけるダリット女性の解 放運動」
報告者:ブルナド・ファティマ・ナティソンさん(タミル・ナドゥ女性フォーラム代 表、反差別国際運動理事)

2001年6月

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 「インドのタミル・ナドゥ州におけるダリット女性の解放運動」

インドにはカースト制度が存在する。カースト制度はヒンドゥー教に由来する。カースト制度に基づい て、ある特定の集団が非人間的な扱いを受けてきた。この特定の集団は、不可触、触ってはならないものであるとされ、人権を侵害され虐げられてきた。インド のダリット人口は1億6千万人である。インド人は外国に出てもダリットに対する差別を持ち出している。とりわけ周辺地域である南アジア全域に行ってもダ リット差別が持ち出す。そのため、全体で約2億5千万人のダリットと呼ばれる人々がいる。

現在、ダリットは政治的なアイデンティティを実現させようとしている。今まで差別、抑圧されてきたこ とに抵抗していく、それによって自分たち自身が力をつけていこうとしている。

「ダリット」という言葉はヘブライ語に由来し、「ダル」は押しつぶされているとか、壊されていると か、切り裂かれているという意味である。ダリット解放運動の指導者であるアンベードカル博士がダリットということばを使うようになった。

国際的にはインド独立の指導者と言われてきたのはガンディーであるが、アンベードカルもまたインド独 立の指導者である。アンベードカルはダリットであるがために国際的に認知されてこなかった。

ダリットには二つの敵がいる。一つはブラーミニズム、もう一つはグローバル化である。ブラーミニズム によって社会秩序が確立されてきた。この中では、人間を「浄」と「不浄」に分けるという考え方が中心をなしている。ダリットは不浄である、汚れている、奴 隷であるという部分に分けられている。その一方で、「浄」ということで、他カーストは、自分たちは裕福である、知的である、土地を保有しているという考え 方を確立してきた。

ダリットはいわゆるアウトカーストであるとされてきた。カースト制度はアーリア人がインドを征服して 持ち込んだ考え方である。人間の体を五つにわけて頭は「ブラーミ」(神に仕える人)、肩は王、胴体は商人、それから足はシュードラの人々に分けられてき た。そこからさらに下にあるのがアウトカースト、ダリットであると位置付けられてきた。ダリットはこうしたカースト制度のはしごの一番下にあると考えら れ、決してこのはしごを昇ることのできない人々であると位置付けられてきた。そして卑しいとされる仕事を押しつけられてきた。人間の糞尿の処理、道路の清 掃、マンホールの中に入ってトイレを清掃する仕事、あるいは死体をかつぐ仕事、あるいは人間の糞尿をかごにいれて頭にかつぐ仕事などをずっと低賃金でやっ てきた。

ダリットは土地なしの農場労働者であり、土地を持つことは許されていない。ダリットが土地を持とうと すると、他カーストが来て力づくで阻止する。ダリットは債務労働者である。地主からお金を借りてそれを返すために借金にしばられて借金を返すためだけに働 かねばならないような仕組みになっている。

ある事件では奴隷としてダリットが家族と生活することもできず、服を着替えることもできず、鎖につな がれて50キロの重しを足につけられて労働を強いられていたことがあった。自分の主人を別の主人に替えようとしたがために罰せられたのである。彼が逃げな いように鎖をつけたまま、1キロ半の道をレンガ作業のため頭にレンガをのせて歩かされた。当然そのレンガをのせるためには鉄のかぶとをかぶらねばならな かった。これは非人間的な残虐な行為で私自身皆さんにどのように説明してよいかわからない。

ダリットは他カーストと結婚することを許されていない。もしダリット以外の人と結婚すれば、罰せられ たり、殺されたり、残虐な仕打ちを受けたりする。

ダリットの女性たちは性的に搾取されている。ダリットが住むのはコロニーと呼ばれているところであ る。そのコロニーに他カーストの地主が夜にやってきて自由にダリット女性を性的に搾取している。例えばあるコロニーの家庭の中に地主が入ってきて夫婦が いっしょにいれば、夫の方は黙ってそこをひきあげなくてはならない。もし夫が抵抗したら殺されたり、川に死体を捨てられたりする。拒否したために夫が喉を かききられて殺されたという事件もあった。ダリット女性が自分の家で寝ているときに地主がきて自分といっしょに一夜を過ごそうとしたときに拒否すると、女 性は両腕を切られてしまったという事件もあった。

ダリットの女性たちはレイプされたり殺されたりしている。地主からコロニーへの攻撃があったとき、危害が加えられる。ダリット女性は三重の問題をかかえている。女性であることからジェンダーの問題、労働者階級の問題、ダリットとしての問題、これら三つの 問題が彼女たちに重くのしかかっている。

ダリットの女性たちは三種の暴力にさらされている。自分たちのコミュニティの男性たちや家族からの暴 力、地主からの暴力、そして国家や州による暴力である。拘禁中に警察官がダリットの女性をレイプしたりする。家庭内でのことをもう少し詳しく話すと、夫が お酒に頼って働かず、従って充分な食べ物もなく、妻を殴ったりする。

他カーストがダリットのコミュニティに来て暴動を起こすことはよくあることである。そういう場合、ダ リットの男性は子どもや女性を残して逃げていく。残された子どもや女性たちは他カーストの攻撃にさらされる。体を殴ったり、蹴られたりする。他カーストの 男性に妊娠中の女性がお腹をけられたために流産してしまったケースもたくさんある。

ダリットの運動はこれまでもあったが男性中心で女性たちに主導権をにぎらせようとしなかった。そのた め、ダリット女性の問題を私たち女性自らが解決するために女性運動を始めた。いかなるときも、ダリット女性への暴力に立ち向かう。これにより、ダリット女 性をエンパワーし、トレーニングし、外に連れ出してどういうことが起こっているかを発言させたり、行政に要求事項を掲げたりする活動を積み上げてきた。そ してたくさんのリーダーシップを生み出してきた。

アンベードカル博士は「教育して鼓舞し結集する」という言葉を掲げてきた。これらは私たちダリット女 性にもあてはまる。私たちはダリットの女性たちを政治的に教育しよう、政治的に目覚めさせようと思っている。そしていかなる暴力的行為に対しても立ち向か う。ダリット女性に対する暴力はジェンダー差別であり、カースト差別であり、社会的な階級の差別である。こうしたことにいつでも抗議する場に女性たちを結 集させ、強い運動をつくっていく。私たちは運動を通して、闘うことを通して初めて、私たちダリット女性の権利が侵害されないような状況をつくることができ ると考えている。