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オンライン・シンポジウム「性暴力をめぐる「歪み」を問い直す」を開催しました(11月8日)

 日本社会における性暴力をめぐる現実と認識の乖離や解釈の「歪み」を明らかにし、性暴力という人権侵害についての理解をより深めるためのオンライン・シンポジウム「性暴力をめぐる「歪み」を問い直す」を11月8日に大阪府立大学女性学研究センター、大阪市立大学人権問題研究センター、ヒューライツ大阪の共催で開催しました。

 はじめに、ウィメンズカウンセリング京都でフェミニストカウンセラーをしている周藤由美子さんが「性暴力被害者に関する神話を打ち破る」というタイトルで報告しました。周藤さんは、「強かん神話」とは、実態とは違うけれど、一般的に信じられている性暴力に関する間違った常識・思い込みであると説明しました。そして2017年に改正された刑法における性暴力規定の課題や2019年3月に相次いで報道された性暴力無罪判決の内容などを解説しながら、刑事事件における「性的同意の有無」の判断基準の問題を指摘し、「強かん神話」をめぐる社会意識の変革が必要であることなどを語りました。#MeToo運動を始めとして、性暴力根絶や被害者の正義の実現と回復に結びつく救済や支援を求める声がこれまで以上に高まる中、刑法性犯罪の暴行・脅迫要件の撤廃・緩和など更なる法改正の必要性を訴えるとともに、改正に向けて国が動きだしていることへの期待も伝えました。

 次に、龍谷大学・犯罪学研究センターの牧野雅子さんが、「性暴力はどのように理解、解釈されてきたのか」というタイトルで報告しました。今回の焦点は、警察の業務にかかわる次の2点でした。1点目の「性犯罪捜査・防犯対策に見る強かん神話」については、まず性暴力と性犯罪(犯罪と認められた性暴力)の違いを押さえた上で、性暴力の捜査における「動機」の前提が「性欲」になっていることなどの問題点を指摘し、各地の警察が制作した性犯罪防止ポスターや啓発資料を通じて、公権力が強かん神話にもとづいたメッセージを発信してきたことを説明しました。また、「迷惑防止条例に見る性暴力(痴漢)認識」については、かつては痴漢が犯罪行為とみなされなかったり、最近まで痴漢被害者に男性が含まれていなかったりする歴史に触れました。そして、痴漢事件を主に取り締まる条例が、迷惑条例と言われるものであり、その条例における痴漢禁止の構成要件のキーワードが「羞恥」であることの問題点を提起しました。

 報告を受けて、大阪市立大学教員の古久保さくらさんがコーディネーターとして、参加者からのコメントや質問を受けて議論を深めましたが、刑法改正慎重論に対するコメント、警察や司法の意識改革の問題、男性の性暴力被害者へのサポート、セクシュアルマイノリティに対する性暴力の問題をきちんと組み入れて考えていく必要性などが語られました。

 

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