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学習会「複合差別という判決を勝ち取ってー在日コリアン女性の闘いに学ぶ」を開催し ました(6月22日)

 2019年6月22日、大阪のドーンセンターで、「アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク」との共催で、学習会「複合差別という判決を勝ち取ってー在日コリアン女性の闘いに学ぶ」を開催しました。講師は、一年以上にわたり、すさまじいヘイトスピーチの集中攻撃にさらされながら、2014年8月に自ら裁判を起こし、勝訴したフリーライターの李信恵(り しね)さんと、国際人権法の専門家として、李信恵さんに対する人権侵害が女性差別と民族差別の複合(複合差別)であって、どちらか一つの差別よりも一層悪質で被害が重大であることを認めるよう裁判所に意見書を書いた元百合子(もと ゆりこ)さんの二人でした。
 まず、主催者挨拶として、アプロ女性ネットの李月順(り うぉるすん)代表が、在日コリアン女性に対する複合差別の問題を社会に提起している立場から、開催趣旨と当事者としての思いを語りました。
 李信恵さんからは、在日2.5世(アボジ[父]が1世、オモニ[母]が2世)としての自身の生い立ちや、ライターとしてキャリアを重ねる中でヘイトスピーチに遭遇した経験、ヘイトスピーチの現場を取材・発信することにより自身が執拗な集中攻撃のまとにされたこと、加害者である「在特会」(在日特権を許さない市民の会)と当時の同会会長そして李さんに対して炎上していたネット上のヘイトスピーチを編集・再発信していた「保守速報」(まとめサイト)運営者の責任を問い、ヘイトスピーチをなくすために裁判という手段を選んだこと、それをきっかけに複合差別という概念を学んだことなどが語られました。長く苦しい闘いは、2017年11月と2018年12月に二つの裁判で「複合差別」を明確に認める判決が出て、確定したことで報われました。
 元百合子さんからは、「複合差別とは何か」の説明、日本の裁判史上はじめて「複合差別」を裁判所が認め、判決が確定したことの意義、国内外の様々なマイノリティ、とくに女性の状況や事例を挙げて、複合差別に気付き関心を持つ必要性、複合差別の防止と適切な対応・解決のために政府や自治体、マジョリティの側が取り組むべき課題とマイノリティ女性への期待が語られました。
 李信恵さんを始め多くの人々が勇気をもって反ヘイトの声をあげたことにより、罰則のない理念法ながら「ヘイトスピーチ解消法」が成立し、ツイッター社など企業やサイト運営者も対応するようになり、ヘイトスピーチは減ってきています。しかし勝訴判決後も依然ネット上で李信恵さんへのいやがらせが続いていることも報告されました。
 今回の学習会を通じて、複合差別の視点をもって社会を見渡せば、今まで見えにくかった人々やその苦しみにある共通性が見えてくるし、差別に立ち向かうマイノリティ女性たちの連帯とともに、マイノリティ男性とマジョリティの自己変革が必要だという感想が共有されました。参加者は43人でした。

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参考資料:『#黙らない女たち:インターネット上のヘイトスピーチ・複合差別と裁判で闘う』(李信恵・上瀧浩子著、かもがわ出版 2018)
参考:複合差別に関する関連サイト
反差別国際運動(IMADR) マイノリティ女性 https://imadr.net/activity/minority/
ヒューライツ大阪 交差性・複合差別 https://www.hurights.or.jp/japan/multiple-discrimination-and-women/