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ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
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6.4「ネパール地震緊急報告-FEDOのドゥルガ・ソブさんを迎えて」を開催しました

 2015年4月25日にネパールを襲った大地震は甚大な被害をもたらしました。現地では、政府、国際機関、NGO、市民グループが救助、救援物資の配布など被災地・被災者への緊急支援を開始しました。
反差別国際運動(IMADR)のパートナーNGOであるフェミニスト・ダリット協会(FEDO)は、被災直後から救援活動を開始し、IMADRをはじめ日本の市民グループがその取り組みのための募金(カンパ)の呼びかけをしました。
FEDOはダリット(被差別カースト)女性で構成する当事者団体です。女性差別、そしてカーストに基づく差別が根強く残るネパール社会で、ダリットに対する差別の撤廃やダリット女性および子どもの人権擁護や生活向上をめざしてネパール各地で活動しているNGOです。
ヒューライツ大阪は、FEDO代表でIMADR理事を務めるドゥルガ・ソブさんが会議出席のために来日する機会をとらえ、IMADRとの共催で6月4日にヒューライツ大阪セミナー室で被災状況と救援活動に関する緊急報告会を開催しました。
 ソブさんは、動画とスライドを使いながら被災と救援の状況を報告しました。概要は以下の通りです。
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救援物資を手渡すFEDOのスタッフ(FEDO提供)

 ネパール政府によれば、被害状況は、現時点で約8,700人が死亡、約22,000人が負傷をし、50万軒以上の家屋が全壊または半壊しました。国際機関は約280万人が人道支援を必要としていると発表しています。
 揺れは広範囲にわたり、誰もが心に傷を負い、いつまた地震が起きるのか不安に怯えながら生活しています。83歳になる私の母もそうですが、高齢者は家の中で寝たくないと言っています。子どもたちも怯えており、心のケアが必要です。
 誰もが「等しく」被災している一方で、被害の度合いは等しくありません。ダリットの人びとが集中する農村や山間部の被害はひどく、都市部と比べものになりません。土でできた家はすぐに壊れてしまいました。家財道具も壊れてしまいました。救援ヘリコプターが着陸できるような平地がないために、救出が遅れ、救援物資も届けられませんでした。家が壊れて身分証明書などもなくしたために、政府の救援物資を受け取れない人たちもいます。
FEDOは、そのような厳しい状況にあるダリットや先住民族の人たちに、米、油、塩、医薬品、衛生用品、浄水剤、衣類、テントなどの救援物資を提供しています。同時に、被災の実態も調査しています。
 被災地では女性や小さな子どもがより困難な状況にあります。私たちは、女性たちが尊厳をもって避難生活を送ることができるよう、衣類、生理用品、石鹸、洗剤などの入った「尊厳キット」を配布しています。これは国連が準備してくれたキットです。また、幼い子どものオマルを届けています。しかし、こうした物資はまだ十分行き届いていません。地の利のよい町や村の中心に住んでいるダリット以外の人たちには援助がすぐ届きますが、ダリットの人たちの多くは取り残されています。
 今後、復興のプロセスに入っていきますが、政府の再定住プログラムにダリットがちゃんと入ることができるのかどうか、私たちは懐疑的です。ダリットは、長年差別を受け続け、経済的にも搾取され続けてきました。再建には大変な困難が伴うことが予想されます。
そのような背景から、私たちは、政府や国際機関に対してダリットを排除することなく再定住政策をはじめとする復興計画を進めていくよう要請します。日本のJICA(国際協力機構)をはじめ多くの国際機関が支援に来てくれていますが、どこにどのような支援が届けられているのか懸念されます。私たちはこうした活動をモニターし、ダリットを支援から排除しないよう求めていく必要があると考えています。とくに、ダリットの女性や子どもたちは周縁に追いやられがちです。より脆弱な立場にあります。私たちは、そのような事実を認識しながら具体的なデータ収集や実態把握を進める必要があると感じています。
FEDOは、被災者の支援と生活再建の取り組みを継続していきます。日本の皆さまの支援に感謝するとともに、今後も見守っていただけるようお願いします。
 
 
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急ごしらえのシェルターで暮らす家族(FEDO提供
 
6月4日の報告会は緊急に企画したものでしたが、約20名が参加しました。参加者にカンパを呼びかけたところ、21,000円が寄せられました。全額をFEDOあてとしてソブさんに託しました。

 FEDOによる詳しい救援活動に関しては、IMADRのウェブサイトを参照してください。(http://imadr.net/
(2015年6月11日)