「条約」とは、国家と国家の間で文書の形式によってなされた合意で、国際法によって規律されるものをいいます。 現在200余りの国家から構成される国際社会の構造は、国内社会と大きく異なっていて、権力が集中する世界政府も世界議会もましてや世界警察も存在しません。つまり、私たちがもし国会によって作られた法律を守らなければ罰則を科されますが、国会にあたる機関が存在しない国際社会では、地球上すべての国家の行動を統一的に規律する法律は存在しないのです。このような状況の下で国家の行動を規律するのは、当該国家が自ら拘束されることに同意して締結した「条約」であるということになります。
国家間の約束としての「条約」には、条約のほかに、憲章、規約、協定、規程、取極などさまざまな名称が用いられます。日米安全保障条約や日韓漁業協定などのように二国間における特定の問題を定めた「条約」と、気候変動枠組み条約や国際連合憲章などのように多数国間において守ることを約束した「条約」があります。また欧州連合条約のように特定の国家だけが締約国となりうる閉鎖「条約」と、国連海洋法条約のように(たとえ海岸線を持たない国家であっても)すべての国家が締約国となりうる開放「条約」に分類することもできます。
一般に人権条約といわれるものは、国連を中心として作成された多数国間条約ですべての国家がその締約国となることができます。国家は自らその締約国になることを決定し、おもに自国民に対してそこに書かれている人権を保障することを国際的に約束しているわけですから、その内容に法的に拘束されることになります。
(中井伊都子)