2023年に日本を訪問調査した「国連ビジネスと人権作業部会」は、日本各地で明らかになっているPFAS(有機フッ素化合物)汚染問題に関し、関係者から聞き取りを行いました。同作業部会が2024年6月に国連人権理事会で発表した報告書では、影響を受けるすべての地域での水質汚染や健康への悪影響などに対処するために、国による対策の実施、および「汚染者負担の原則」に基づく企業の責任に関して勧告しています。
ヒューライツ大阪は、PFASによる河川・地下水、作物、魚類などの汚染は、人々が健康に生きるという権利を侵害する深刻な人権課題であることをふまえ、PFAS問題に取り組む専門家と市民活動家の4人を講師に迎え、大阪府と兵庫県における汚染の現状と課題に焦点をあて、9月28日にオンラインセミナー「ビジネスと人権の視点からPFAS汚染問題を考える」を開催しました。視聴者は約140名でした。
京都大学の小泉昭夫名誉教授は、大阪府摂津市のダイキン工業の工場による淀川流域河川におけるPFASのひとつPFOA汚染問題と健康リスクについて、および政府、大阪府、摂津市の姿勢をめぐる過去から現在にいたる課題を解説しました。
同大の原田浩二准教授は、摂津市をはじめ大阪府民1190人を対象に2023年に実施した血液検査の結果を報告し、摂津市におけるPFOA汚染が顕著であると報告しました。一方、大阪府内の他地域でも汚染が確認されたことから、地域ごとに調査を進めて汚染源の特定と除去に取り組む必要があると提言しました。
「摂津PFOA汚染問題を考える会」で活動し、摂津市議を務める増永わきさんは、ダイキン工業のある摂津市では、企業城下町としてダイキンに対してもの言えぬ雰囲気があるものの、行政に血液検査を求めるなどの署名運動の取り組みが行われていると述べました。増永さんたちは、2023年7月に大阪を訪問した「国連ビジネスと人権作業部会」の聞き取りに参加しています。
「明石川流域のPFAS汚染を考える会」の世話人の渋谷進さんは、小泉名誉教授らの協力で、2024年7月に明石川流域に連続10年以上暮らしている33人を対象に実施した血液検査の結果を紹介し、約半数が健康へのリスクが懸念される米国などの血中濃度の基準値を上回っていると報告しました。渋谷さんは、地元の水道水の利用とPFOAの血中濃度は相関関係があるとして、汚染源のひとつは水道水だと推定しつつ、汚染源の特定には大規模な調査が必要だと語りました。
セミナーの録画(約2時間)はYouTubeで公開しています。
https://youtu.be/FD1nsasPGqs
2024 9 28オンラインセミナー「ビジネスと人権」の視点からPFAS汚染問題を考える
日時:2024年9月28日(土)14:00~16:00
開催方法:オンライン(Zoom ウェビナー)※日本語の文字通訳つき。
プログラム:
・趣旨説明 藤本伸樹(ヒューライツ大阪)
・PFASとはなにか&国、自治体、企業の姿勢
小泉昭夫さん(京都保健会、京都大学名誉教授)
・PFAS血中濃度調査の結果
原田浩二さん(京都大学准教授)
・「大阪・摂津市PFOA汚染問題を考える会」の取り組み
増永わきさん(摂津PFOA汚染問題を考える会事務局・摂津市議)
・兵庫県の明石川流域のPFAS汚染に対する市民の取り組み
渋谷 進さん(明石川流域のPFAS汚染を考える会 世話人)
・質疑応答