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ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

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2026年度事業計画

もくじ
I. 基本方針
II. 個別事業概要

I.基本方針

 世界で日本で、人権をめぐる状況は厳しさを増すばかりである。
 第二次トランプ政権発足以降、米国はDEI(多様性・公平性・包摂性)政策の撤廃にはじまる一連の政策を通じ、国際社会が連綿と築き上げてきた人権に関する理解と実践の進展を完全に否定する姿勢を打ち出している。多国間主義を通じた人権の保障と持続可能な未来の創造にも背を向け、国連人権理事会、気候変動枠組条約、世界保健機関、国連人口基金、国連女性機関からの脱退を決定した。これらの決定は、気候危機、新たな感染症の発生リスク、「途上国」における乳幼児や妊産婦の命と健康等に確実に深刻な影響を及ぼすが、それらはすべて人権の課題である。パレスチナ・ガザ地区やグリーンランドに関する野望は、帝国主義と植民地主義以外の何ものでもなく、国連創設以来、国際社会が規範として掲げてきた民主主義、法の支配、人権をはじめとする理念が根底から揺らいでいる。
 日本ではスパイ防止法や緊急事態条項の制定に積極的な政党が衆院選で圧倒的多数を獲得した。外国籍住民との共生/排外主義の克服、選択的夫婦別姓の導入、性と生殖に関する健康と権利の進展等に前向きな政権ではなく、基本的人権と自由の今後が懸念される。日本における長年の課題である人権理解の浅薄さを念頭に置き、ヒューライツ大阪として何ができるか/何をするべきかを検討する必要がある。
 2025年度は、2025年3月の理事会で承認された「ヒューライツ大阪・将来ビジョン」に基づき活動を展開する最初の年になった。将来ビジョンに示されている3課題のうち、「情報ハブとしての機能強化」「強みを活かせる分野に絞った事業展開」については以前からの検討課題の延長である部分が大きいが、「財政基盤の整備と事務所体制の見直し」については具体的検討を開始した。
 2026年度は、将来ビジョン3課題に関する2025年度の検討を踏まえ、さらに①組織の今後を見通した重点事業分野の再検討と絞り込み、②重点事業分野を担う人材の確保、③勤務体制を含めた人的資源の適正な配置に取り組むこととする。その際には、日本における国際人権基準の実現に必要不可欠な3つのインフラだとヒューライツ大阪が考えてきた「国内人権機関」「個人通報制度」「包括的差別禁止法」に関する理解の浸透と実現に向けた視点を十分に踏まえる。

 将来ビジョンに基づく事業実施にあたっても、ヒューライツ大阪が掲げてきた以下の指針と原則に変わりはない。

(1)ヒューライツ大阪が伝える人権は「国際人権基準」である。
(2)1人ひとりを守り支える概念として「国際人権基準」を伝える。
(3)2009年に取得した国連の特殊協議資格を活用し、国連を通じた国際人権保障を目的とする活動に積極的 に関わる。
(4)様々な要因を理由とするマイノリティをはじめ、権利を侵害されやすい立場に置かれている人々、なかでも交差的・複合的な差別や不平等を被っている人たちの人権状況に特に留意する。
(5)専門的な知識や経験を持つ個人や団体と協力することにより、活動の幅を広げ、事業の質を高め、人権課題の解決に貢献する。

 2026年度の重点課題は以下のとおりである。これまでの重点課題を踏襲しつつ、将来ビジョンに示しているとおり、ヒューライツ大阪が強みを活かせる分野と課題に、より重点的に取り組む。

2026年度の重点分野

【国際人権基準の国内における浸透と実現】
勧告実施をはじめとする国際人権条約の国内実施。国内人権機関の設立、個人通報制度の導入を規定する選択議定書の批准、包括的な差別禁止法の制定の推進に向けた取り組み。

【外国籍市民の権利をめぐる諸課題】
在日コリアンをはじめとする外国籍市民へのヘイトスピーチおよびヘイトクライム。技能実習生をはじめとする移民・移住労働者。外国ルーツの子どもへの教育。移民女性の権利。排外主義の問題。外国籍市民の社会・経済参加。

【ジェンダー平等に関わる諸課題/不平等と差別の交差性・複合性】
ジェンダーに関連する差別・不平等・暴力。国籍、民族、障害、世系などのアイデンティティとジェンダーが交差する交差性・複合差別。SOGIESC(性的指向・性自認・ジェンダー表現・性的特徴)に関連する人権課題。

【ビジネスと人権】
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際基準の浸透と実現。企業を対象とする研修教材の普及。

【人権教育】
国内における効果的な人権教育の実施。マイクロアグレッションについての理解。包括的性教育。地域社会において人権教育を実践してきた人々との連携を通じた対話型ワークショップの開催や教材開発。

【特に日本との関連でのアジア・太平洋と世界における重大な人権状況】
独裁的・権威主義的国家における人権侵害。先住民族やマイノリティなどの人権課題。

【情報ハブとしての機能強化】
ウェブサイトの改善。過去に発信した情報や記事のアーカイブ化。インターネットやSNSを活用した効果的な情報発信。

II.個別事概要

1、情報収集・発信事業

① 日本語と英語のウェブサイトのコンテンツ充実と発信力の強化

 日本語サイトは、各ページの上部にコンテンツのメニューバーを設置し、どのページからでもサイト内移動を可能としているが、日本語サイトのトップページに掲載している主催・共催セミナーの案内や開催報告、タイムリーな人権情報「ニュース・イン・ブリーフ」、ヒューライツ大阪の活動を紹介する「お知らせ」の迅速な更新を行う。また、国際人権基準に関わるコンテンツの一層の充実を図る。
 パソコンでもスマホでも容易に閲覧できるように設計しているが、2025年度に引き続き、データ量が増え複雑化しているコンテンツの構成を見やすく、探しやすく、使いやすくすることに努める。また、ウェブサイトによる情報発信と並行し、引き続きSNSによる発信に努め、受信者の拡大など発信効果の向上を図る。
 英語サイトでは、職員体制の変更に伴い、日本の人権状況や日本と深く関連するアジアを中心とした国々の人権問題についての発信に重点を移すなど、これまでの英語サイトの構成を再検討する。 

② 国内外のオンライン会議・セミナーへの積極的な参加

 最新情報の収集、ネットワーク強化のため、対面およびオンラインによる会議・セミナーへの参加に努めるが、出張の効果と予算を一層精査し、優先順位をより勘案した出張とする。こうした会議・セミナー参加から得られた情報をウェブサイト、ニュースレター「国際人権ひろば」、Eメール会報・インフォなどを通して発信する。

③ 資料の収集・整理

 ヒューライツ大阪の重点分野を中心に人権に関する資料を収集し、情報発信や資料閲覧に供してきたが、将来ビジョンに沿って、事務所スペースの縮小・予算削減などが進行する中、現行の資料閲覧サービスは中止することとする。ただし、会員対象の資料貸出・閲覧サービスは継続する。また、所蔵資料のスリム化(他所への寄贈・廃棄)に向けて具体策を検討する。

2、調査・研究事業

① 「ビジネスと人権」

 重点事業の一つとして取り組んできた経験と実績に基づき、SDGsやESG投資の拡がり、政府の「ビジネスと人権に関する行動計画」やガイドラインの策定等に伴う関心の高まりを踏まえながら、人権の共通理解と社内浸透になお課題を残している企業セクターに対し、国際人権基準の普及というヒューライツ大阪の本来のミッションをベースに基本的な視角を提供することを念頭におく。さらに2026年度は、企業のみならず労働組合や行政など「ビジネスと人権」推進に役割を果たすべきセクターを対象にした取組みもおこなう。

(1)「ビジネスと人権」サイト、eラーニング特設ウェブサイト、ニュース・イン・ブリーフ、ビジネスと人権Eメールインフォ、『人を大切に―「ビジネスと人権」ガイドブック』、同eラーニング教材、セミナーなどの機会を活用することによって、「ビジネスと人権」の考え方を企業に普及させることに引き続き努めるが、とりわけ、「ビジネスと人権」のウェブサイトの充実により注力する。
(2)企業の人権及びサステナビリティ担当者をターゲットに、ビジネスと人権の基本的な内容を分かりやすく伝えるセミナーを実施する。 その際、企業団体や個社との交流や情報交換を通じ、企業が抱える課題やニーズの把握に努める。
(3)NPO/NGO、労働組合、行政など、企業以外のセクターをターゲットにしたセミナー等を実施する。
(4)「ビジネスと人権市民社会プラットフォーム」「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」「SDGs市民社会ネットワーク」など、市民社会組織や個人とのネットワークを発展させ、協力・連携関係の強化に努める。

② 人権教育推進のためのプログラム実施

 2025年度に引き続き、人権教育の専門家の助言を受けながら、2026年2月~3月に実施したウェブサイト改善のための人権教育担当者対象のアンケートの結果をまとめ、現場の問題意識やニーズに役立つようなコンテンツ作りに努める。また、教育関係者のマイクロアグレッションに関する関心の高さは継続しており、マイクロアグレッションに関するウェブサイト活用の広報に努める。

③ スタッフ研修

 会員増をふくめた一層の支援の拡がりをめざし、ヒューライツ大阪の事業をより魅力的に伝えられるための新たなアプリ活用のスキルなど、スタッフの業務遂行に必要なスキルや知識を向上させるための研修を実施する。

3、研修・啓発事業

① 国際人権条約の国内実施の推進とモニタリング

 2026年は、国際人権規約(社会権規約、自由権規約)が採択されて60年、障害者権利条約と強制失踪条約が採択されて20年という節目の年にあたる。人権諸条約の委員会や、国連特別報告者・作業部会などから、繰り返し勧告を受けている①国内人権機関の設立、②個人通報制度の受け入れ、③包括的差別禁止法の制定という3つの人権インフラに関する理解の拡がりと実現の推進に向けて、2025年度に引き続き情報発信に努める。
 また、自治体の人権条例や子どもの権利条例などの制定や実施の動向について情報発信していく。
2025 年から始まった国連の「人権教育世界プログラム」第5段階(2025-2029)に関する国際的な取り組みを紹介する。第5段階の重点領域は、若者および子どもであり、特にデジタル技術、環境や気候変動、ジェンダー平等に焦点を当てている。

② 移民・ 移住労働者の人権に関する情報収集・啓発

 移民・移住労働者をはじめ外国籍市民や外国につながる子どもたちの直面する課題に関する情報を広く当事者や支援者、市民に伝える。
 2026年1月に政府がまとめた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」が国際人権基準に則った政策かどうか検証する。また、移民を「脅威」とみなしSNSや街頭でフェイク情報を流布し、排除を扇動するなどの排外主義が強まっていることに対して、他の人権団体と協力し、ファクトを通じて市民啓発に努め、移民の人権が保障され、共に生きる社会の実現に資する情報発信を行う。
 技能実習制度に替わる育成就労制度への2027年度からの移行に向けた動向の情報収集に努める。また、女性差別撤廃委員会が2024年10月に公表した総括所見に盛り込まれた、ジェンダーに基づく暴力や、技能実習生の妊娠・出産をめぐる課題など、移民女性に関する勧告の実施状況についてモニターする。
 
③ 人権映画の上映会

 2025年度に引き続き、大阪市立男女共同参画センターとの共催で、人権をテーマにした映画の上映会を開催する。人権を身近に感じる機会がなかった人たちが、人権への理解を深める契機となるような映画を上映するとともに、ヒューライツ大阪の認知度を高める場とする。

④ 交差性・複合差別の情報収集と学習会

 日本に暮らす女性をめぐる人権課題の中でも特にマイノリティ女性の人権について、情報の発信に努める。引き続き、当事者団体との協力・連携を通じて、当事者の語りやエッセイの記事を積極的に発信するなどウェブサイトの改善と内容の充実を図る。

⑤ 受託事業

 ヒューライツ大阪スタッフの講師派遣について引き続き広報し、自治体、学校、NPO/NGO、労働組合、企業などが企画する人権研修を受託し、人権概念の理解の浸透に貢献すると同時に、ヒューライツ大阪の収入にもつなげる。また、研究機関、公益法人などが実施する研究調査への業務協力についても、ヒューライツ大阪の活動趣旨に適う場合には積極的に受託する。

⑥ 人権に関するイベント等への参加

 2025年度は「おおさか人権フェスタ」や「ワン・ワールド・フェスティバル for Youth」などにブース出展やプログラム企画を通じて参加したが、2026年度も各イベントの目的や効果を勘案しながらイベントに参加し、人権教育の推進やヒューライツ大阪の活動の広報の機会とする。

⑦ NPO/NGO、学校関係などの団体との協力・共催事業の推進

 ヒューライツ大阪の活動の趣旨と合致するセミナーなどの事業を、他団体と協力し共催することによって、企画の充実を図り、ネットワーク強化、およびヒューライツ大阪の認知度を高める。2026年度は、アムネスティ日本やエル・ライブラリ―などと協力しながら、映画上映会と講演会を実施する。

⑧ タイムリーな機会を得た学習会

 人権に関する身近なトピックを切り口にして、わかりやすく親しみやすい学習会「トークdeじんけん」を開催する。また、タイムリーなテーマに関して、必要に応じて学習会を主催・共催し、府民・市民に人権課題に関する情報を提供する。

⑨インターン受入れ・人材育成事業
 人権に関心のある人をインターン生としてヒューライツ大阪の事業に関わる機会を設け、実務経験の場を提供することなどを通じて、国際人権基準を理解する人材育成に資するとともに、情報発信の強化につなげることを目的に希望に応じて受入れを検討する。

4、広報・出版事業

① ニュースレター「国際人権ひろば」

 国内外における人権に関する最新の動きや重要なトピックを伝えると同時に、ヒューライツ大阪の会員や関係者とのネットワークの媒体として、ニュースレター「国際人権ひろば」を年6回(各1,700部)引き続き発行する。
 「国際人権ひろば」のテキストは、継続してウェブサイトに掲載し、アーカイブ化する。人権に関心のあるユーザーの情報ニーズに応えるコンテンツとして内容の充実、および読みやすさを追求する。なお、英語のウェブサイトに掲載しているニュースレター"FOCUS"は2026年3月号をもって最終号とする。

5、情報サービス事業

① 会員の拡大と会員サービスの充実(会員制度の見直し、積極的な会員募集、会員特典の見直し)

 ヒューライツ大阪の支援者を増やし、安定した収入を確保するために、より一層会員募集の広報を強化する。具体的には、ヒューライツ大阪のミッションや事業の意義を魅力的に伝える工夫をする。また2026年度より、個人会員と団体会員の会費を一口以上とするなど柔軟な会員制度を導入したことも併せて、広く周知を図る。

② Eメールインフォ・会報の発信

 ヒューライツ大阪が開催するセミナーや、ニュース・イン・ブリーフをはじめウェブサイトの更新情報および収集資料に関する情報などを個人・団体にタイムリーに伝えるために、「Eメールインフォ」および「企業と人権Eメールインフォ」を発信する。また、会員に対しては、ヒューライツ大阪の活動も伝える「Eメール会報」を引き続き発信する。

③ 人権情報・研修などについての国内外からの相談への対応

 ヒューライツ大阪が蓄積してきた資料・情報や研究・研修に関する相談に応じるとともに、適切な関連機関の紹介などに努める。また会員からの人権啓発・研修の企画に関する相談があれば、積極的にサポートする。個別の人権相談については、ヒューライツ大阪には人権相談機能がないため、内容に応じて適切な団体・機関を紹介する。