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ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

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  4. 2021年度事業計画

2021年度事業計画

もくじ
I.  基本方針
II. 個別事業概要

I.基本方針

 2020年度は、新型コロナウイルス感染症に翻弄された1年となった。2020年度の終了を控えた現段階でも、一向にパンデミック収束のきざしは見えない。ワクチン接種が始まっているが、いくつかの場所で感染力が強いとされる変異種が見つかっており、先が見通せない生活は、これからもしばらく続くことが予想される。

 ヒューライツ大阪では、「パンデミックからの回復には人権の視点が不可欠」という視点に立ち、2020年3月11日にWHOが新型コロナウイルス感染症をパンデミックと宣言した直後に、「新型コロナウイルスと人権?国連や市民社会からのメッセージ」と題する特設サイトを開設し、国連諸機関や様々な市民社会組織・NGOのメッセージ、声明、政策提言についての情報を入手・発信するサイトを整備してきた。また、学習会・セミナーや「じんけんカタリバ」といった主催事業については、オンライン開催のための技術的な準備を整え、年度の後半には積極的に事業を開催してきた。対面でのセミナー開催は困難な状況であったが、遠く離れた地域から、これまで出会えなかった方の参加が可能になっていることを考えると、パンデミックが新たな機会の創出になっていることも実感している。研修や講演依頼については、そのほとんどがいったんキャンセルになるなど、大きな影響を受けたが、2020年度の後半になり対面も含めて再開の調整がおこなわれていたところで第3波が訪れ、再度の影響を被った。

 パンデミックに関する、このような現下の状況を考えるならば、2021年度中にパンデミックの収束は見込めないとの予想を立て、少なくとも年度前半は、コロナ対応を念頭に置いた事業計画が必要になると考えている。そのうえで、人の動きが制約される状況を踏まえ、ウェブサイトの充実等、これまで時間を割くことができなかった事業に取り組み、「情報ハブとしての機能強化」を目指したいと考えている。

 また、パンデミック下で拡がる雇用不安、なかでもシングルマザーの苦境に代表されるジェンダー不平等の拡大、不安が生む偏見や差別、DVを始めとするジェンダーに基づく暴力の増加と悪化、移民・移住労働者の困難、ワクチン・ナショナリズムと表現される不公正なワクチン供給体制、感染抑え込みの名の下に実施される市民的自由の制限等、新型コロナウイルス感染症に付随する様々な人権課題が明らかになってきている。こうした課題を積極的に発信し、勉強会やセミナーを開催し、パンデミックからの回復が、日本における人権のより良い理解、そしてSDGs(持続可能な開発目標)が謳う「誰一人取り残さない世界」に向けた変革のチャンスになるようにもしたいと考えている。この観点からは、引き続き、すべての事業にわたり、SDGsとの関連を十分に意識して事業を実施することに留意する。また、これまで同様、定款第3条に示されている「人権を通じた大阪府民の国際的な人権感覚の醸成への寄与」を具体的かつ効果的に展開することに心を砕く。

 事業実施にあたっては、ヒューライツ大阪が掲げてきた以下の指針を、引き続き尊重する。

  1. ヒューライツ大阪が伝えるべき人権は「国際人権基準」である。それは、人が人間らしく生きるために、また公平で公正な社会をつくるためになくてはならないものである。
  2. ウェブサイトやSNSによる情報発信や、セミナー、研修、広報などさまざまな機会とツールを活用し、わかりやすく身近なものとして「国際人権基準」を伝えていく。
  3. 2009年に取得した国連の特殊協議資格を活用し、条約監視機関による日本報告書審査に参加するなど、国連を通じた国際人権保障を目的とする活動にも可能な限り積極的に関わる。
  4. 特に大阪府民・市民・企業などに対し、「国際人権基準」に関する理解を広げ、人びとのさまざまなニーズに応える事業を継続する。とりわけ、マイノリティなど権利を侵害されやすい立場に置かれている人びとの人権状況に着目し、複合的・交差的な差別および権利侵害を受けている人びとに注意を払う。
  5. 事業を行うにあたっては、専門的な知識、経験を持つ個人や団体との協力により活動の幅を広げ、事業の質を高め、より多くの人々に人権のメッセージが届き、ニーズに応えることができるよう努める。

 2021年度は、以下のような重点事業を実施する。

2021年度の重点事業

【外国籍住民の権利をめぐる諸課題】
 在日コリアンなどに対するヘイトスピーチ、技能実習生をはじめとする移民・移住労働者の権利、外国ルーツの子どもの教育等、従来から日本に在住する外国籍住民、就労・留学・国際結婚などにより新たに日本で暮らし始めた人たちの人権課題に焦点を当てる。

【ジェンダーに関わる諸課題/複合差別】
 権利が侵害されやすい人たちの様々な課題のなかでも、特にジェンダーに関連する差別、不平等、暴力などの人権課題に焦点をあてる。国籍、民族、障害、世系などのアイデンティティとジェンダーが交差する複合的・交差的差別に留意し、SOGI(性的指向・性自認)に関する人権課題に注意を払う。

【ビジネスと人権】
 企業の社会的責任と人権の尊重に関する意識と実践の向上を目指し、企業を対象とする研修教材の普及等を通じて、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を始めとする国際基準を浸透させていく。2020年10月に策定された「ビジネスと人権に関する行動計画」の実施状況にも十分留意する。

【人権教育】
 日本における人権理解の向上と人権の保障に資することを目的として、他国の先進事例に学びつつ、国内における効果的な人権教育の実施に結びつく活動を実施する。引き続き、地域社会において人権教育を実践してきた人たちと連携し、対話型ワークショップの開催や教材開発等を検討する。

【コロナ禍により深刻な影響を受けている人たちの人権課題】
 コロナ禍は、これまで存在していたにもかかわらず、十分に目が向けられてこなかった人権課題を露わにした。コロナ禍による影響を最も強く受けている人たちの人権課題でもある。こうした人権課題を取り上げて発信することに努力を傾ける。

【国際人権条約の国内実施】
 日本およびアジア・太平洋地域における人権諸条約の実施状況に関する情報収集や成功事例の紹介をおこなう。その際、包括的な差別禁止法の制定、国内人権機関の設置、個人通報制度の導入に関する選択議定書の批准等、国連の人権条約委員会から実施を勧告されている諸課題に留意する。

【ウェブサイトの改善等を通じた情報発信の充実】
 ウェブサイトを構造的に見直し、過去の情報のアーカイブ化も含め、検索しやすく、わかりやすいウェブサイトの整備に取り組む。フェイスブック、Eメール、ツイッターなど、インターネットやSNSを駆使した効果的な情報発信にも、引き続き努める。

II.個別事概要

1、情報収集・発信事業

① 日本語と英語のウェブサイトのコンテンツ充実と発信力の強化

 日本語サイトは、タイムリーな人権情報「ニュース・イン・ブリーフ」や、セミナーの概要報告をはじめとするヒューライツ大阪の活動を紹介する「お知らせ」を迅速に掲載するとともに、国際人権基準に関するわかりやすいコンテンツを充実させる。英語サイトは、引き続き日本における人権問題およびアジア地域における人権課題をより多く発信することに努める。
 2020年度に引き続き、データ量が増え複雑化したコンテンツの構成を整理し、見やすく、探しやすく、使いやすくすることに注力する。
 また、ウェブサイトによる情報発信と並行し、フェイスブックなどSNSを通じた発信に引き続き努め、受信者の対象拡大など発信効果の向上を図る。

② 国内外のオンライン会議・セミナーに積極的に参加

 最新情報の収集、ネットワーク強化のため、国内の会議・セミナーへの参加に努める。新型コロナ感染症拡大防止のため対面会議の開催が困難であるなか、2020年度に引き続き、オンラインでの会議に積極的に参加する。海外出張については、新型コロナ感染症の抑制状況をみながら実施を判断する。会議・セミナー参加から得られる成果をウェブサイト、ニュースレター、SNSなどを通して情報発信する。

③ 資料の収集・整理

 国際人権基準や人権教育に関する資料、重点テーマに関する日本をはじめとするアジア・太平洋地域の人権情報の資料を重点的に収集し、資料閲覧に訪れた府民・市民の利用に供する。2021年1月末時点の所蔵図書(逐次刊行物除く)は10,217点であるが、公共図書館では所蔵していない貴重なものを含んでおり、書誌情報の管理を維持する。また重点事業に関する資料は積極的に収集する。貸出サービスについては引き続き、会員の紹介者への貸出など貸出対象を広げたり、収集資料に関する情報をウェブサイトやEメール会報・インフォで発信するなど、利用促進を図る。

2、調査・研究事業

① 「企業の社会的責任と人権」の普及と促進

 重点事業の一つとして取り組んできた経験と実積に基づき、2021年度も以下の事業を実施する。その際、人権の普及というヒューライツ大阪の本来のミッションをベースとし、「ビジネスと人権」への関心の高まりの一方で人権の共通理解にはなお至っていない企業社会に対して基本的な視覚を提供することを念頭におく。

  1. 「ビジネスと人権」に関わる基本的な内容の企業への浸透を引き続き重視し、発行後4年が経過する『人を大切に―人権から考えるCSRガイドブック(第三版)』をアップデートし、準拠しているeラーニング教材も必要な修正を行う。
  2. 「ビジネスと人権」をわかりやすく伝える簡易なパンフレットを作成する。
  3. 企業における人権やCSR担当者をターゲットに、ビジネスと人権の基本的な内容を分かりやすく伝えるセミナーを企画、実施する。
  4. 「ビジネスと人権」や「SDGsと人権」など、幅広く普及させるべきテーマのセミナー等を、企業だけでなく市民・NGO等も含めてターゲットとし、企画、実施する。
  5. ウェブサイト「企業と人権Eメールインフォ」等を活用し、ビジネスと人権に関する情報発信力を高める。「ビジネスと人権市民社会プラットフォーム」「SDGs市民社会ネットワーク」「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」など、市民社会組織や個人とのネットワークを発展させ、協力・連携関係の強化に努める。

② 人権教育推進のためのプログラム実施

 地域社会においての人権教育の実践と連携し、少人数での対話型ワークショップを開催してきたが、実施できない状況が続いている。実施条件が整えば、延期されたプログラムを含め、対話型ワークショップの実践を再開するとともに、前年度どおり、人権教育の専門家のアドバイスを受けながら、オンラインでの人権教育推進のための新たな情報やエンパワメントに資するような講座を企画する。また、人権教育に関するウェブサイトの改善の作業を継続し、教育関係者のニーズを把握しながら、コンテンツの見直しと充実を図る。

③ スタッフ研修

 スタッフの業務に必要なスキルや知識を向上させるための研修を実施する。

3、研修・啓発事業

① 「北京+25」以降のジェンダー平等実現に向けた啓発事業

 2020年は、第4回国連世界女性会議(北京女性会議)から25周年であったが、予定していた大阪をはじめとする関西でのジェンダー平等に関する今後の活動を展望する集まりは開催できなかった。2021年は、北京+25を踏まえ、UN Womenがメキシコ・フランス政府と共催して開催する「Generation Equality フォーラム」に関する情報提供や関連する学習などを企画する。こうした取り組みを通じて、SDGsの目標5:ジェンダー平等の実現という目標に呼応する。

②  国際人権条約の国内実施のモニタリング

 2020年は、障害者権利条約の第1回日本政府報告審査、および自由権規約の第7回日本政府報告審査が予定されていたが、コロナ禍のため延期となった。これらの審査に関わる国連の動向を踏まえつつ情報収集に努める。

 2021年は、国連が南アフリカで開催した「ダーバン会議」(人種主義、人種差別、外国人排斥及び関連する不寛容に反対する世界会議)から20年にあたることから、国連の取り組みに呼応しながら、国内外の関連団体と協力して反人種主義・差別撤廃に向けてセミナー開催や情報発信を行う。

 ヘイトスピーチをめぐる課題に関して、大阪府市の条例、国の法律の実施状況をフォローするとともに、他の自治体の取り組みに関する情報収集を行い、啓発に努める。

③ 移民・ 移住労働者の人権に関する情報収集・啓発

 移民・移住労働者など外国籍住民や外国につながる子どもたちの直面する課題に関する情報を当事者や支援者、市民に伝える。とりわけ、コロナ禍における移民・移住者の人権課題に関して情報発信する。

 また、国連が2018年に採択した「移住グローバル・コンパクト」(安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト)および「難民グローバル・コンパクト」の日本における実施状況についてモニターする。

 移民・難民の権利保障に取り組む市民社会組織と協力し、オンライン・セミナーを開催するなど、多民族・多文化共生に向けた啓発活動に取り組む。

④ 人権映画の上映会

 2020年度に続き、継続を望む声を受け、大阪市立男女共同参画センターと共催で人権映画の上映会を開催する。特にこれまで人権を身近に感じる機会がなかった人たちが、人権の意義や内容の理解を深める契機となるような映画を上映するとともに、ヒューライツ大阪の認知度を高める場とする。

⑤ マイノリティ女性に対する複合差別の情報収集と学習会

 2020年度からの継続事業として、当事者団体との協力・連携を通じて、ウェブサイトの改善と内容の充実を図り、このテーマに関する理解を深め、当事者のエンパワメントにつながるセミナーなどを実施する。

⑥ 受託事業

 ヒューライツ大阪のスタッフの講師派遣について引き続き広報し、自治体、学校、NPO/NGO、企業、宗教団体などが企画する人権研修を受託する。また、大学や研究機関、公益法人などの研究調査に関わる業務協力についても、ヒューライツ大阪の活動趣旨に適う場合には積極的に受託する。

⑦ 「ワン・ワールド・フェスティバル for Youth」などイベントへの参加

 高校生が主体となり、国際協力に関わるNGO、大学、政府機関、国連機関が大阪に集まり活動紹介や交流イベントを行う「ワン・ワールド・フェスティバル for Youth」などに参加し、ヒューライツ大阪の活動を広く伝える。ワークショップなどの企画も積極的に検討する。

⑧ 共催事業:NPO/NGO、学校関係などの団体との協力・共催事業の推進

 ヒューライツ大阪の活動の趣旨と合致するセミナーなどの事業を、他団体と協力し共催することによって、ヒューライツ大阪の企画の充実を図るとともに新しい層への啓発を模索し、ネットワーク強化、およびヒューライツ大阪の認知度を高める。

⑨ タイムリーな機会を得た学習会

 人権に関する様々なトピックを切り口にして、わかりやすく親しみやすい学習会「じんけんカタリバ」を2020年度に引き続き開催する。さらに当初の事業計画に含まれていない場合を含めて、タイムリーなテーマや重点課題に関連する企画などに関わる機会を得た場合、必要に応じて学習会を開催し、府民・市民に人権情報を提供する。

⑩ インターン受入れ・人材養成事業

 人員体制を考慮しつつ、国内外の大学院生・大学生などからのインターンの希望があれば引き続き受け入れる。インターン生がヒューライツ大阪の事業に関わる機会を設け、実務経験の場を提供することで、国際人権基準を理解する人材の育成に資するとともに情報発信の充実にもつなげる。

4、広報・出版事業

① ニュースレター「国際人権ひろば」、「FOCUS」の発行

 国内外における人権に関する最新の動きや重要なトピックを伝えると同時に、ヒューライツ大阪の会員や関係者とのネットワークの媒体として、ニュースレターを引き続き発行する。日本語の「国際人権ひろば」は年6回、英語の「FOCUS」は年4回発行する。「FOCUS」は、国内外に発信しているが、コロナ禍による国際郵便事情を勘案し、郵送はするが、可能な限り電子ファイル(PDF、HTML)での送信を図る。

 また日英のニュースレターの記事は、ウェブサイトに継続して掲載する。国内外のニーズに応えるコンテンツとして内容の充実、および読みやすさを追求する。

② “Human Rights Education in the Asia-Pacific”(アジア・太平洋における人権教育)(英語)Vol.11の企画編集・出版

 毎年、アジア・太平洋地域の学校教育および生涯教育を含む幅広い人権教育の実践報告を収集・出版している。書籍はアジア各国の人権機関、NGO、政府機関等に配布するとともに、全文をウェブサイトに掲載している。この事業を通じて、地域における人権教育に関する情報を蓄積している。2021年度は、 “Human Rights Education in the Asia-Pacific”(英語)Vol.11の企画編集・出版を行う。

5、情報サービス事業

① 会員の拡大と会員サービスの充実

 ヒューライツ大阪の支援者を増やし、安定した収入を確保するために、リーフレットの活用などによって継続して会員の維持と拡大を図る。事業参加費の割引・無料などの会員サービスを積極的に伝えることを含め、機会をとらえて会員募集の広報を行う。

② Eメールインフォ・会報の発信

 ヒューライツ大阪が開催するセミナーや、人権ニュースをはじめウェブサイトの更新情報などを個人・団体に、タイムリーに伝えるために「Eメールインフォ」および「企業と人権インフォ」を発信する。また、会員、役員に対しては、より詳しい情報を提供する「Eメール会報」を引き続き発信する。

③ 情報・研修などについての国内外からの相談への対応

 ヒューライツ大阪が蓄積する資料・情報や研究・研修に関する相談に応じるとともに、適切な人権関連機関を紹介するなどの情報サービスに努める。また会員からの人権啓発・研修の企画に関する相談があれば、積極的にサポートする。