文字サイズ

 
Powered by Google

MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 広報室
  3. 事業計画/事業報告
  4. 2019年度事業計画

2019年度事業計画

もくじ
I.  基本方針
II. 個別事業概要

I.基本方針

 2018年度は、1948年に国連総会で採択された世界人権宣言が70周年を迎えるという記念すべき年であった。ヒューライツ大阪では、世界人権宣言70周年を記念して、以下の事業を実施した。

・70周年記念ロゴ・キャッチフレーズの作成とグッズの制作
・映画上映会の開催
・書籍の発行(『人権ってなんだろう?』)
・世界人権宣言70周年記念大阪集会の開催(12月5日)
・「じんけんカタリバ」の開催

 これらの事業を実施するにあたり、留意したのは以下の2点である。

  1. 人権という言葉や概念に対し、「わかりにくさ」や「とっつきにくさ」を感じている人たちに、人権の意味、意義、重要性を、人権概念の真髄をそこなわずに伝えること
  2. 世界人権宣言採択後の国際人権基準の発展の過程で、新たに認識が深まり、重要と考えられるようになってきた問題への理解を広めること

 この過程を通じて、世界人権宣言採択後の世界と日本の歩みを振り返り、今後、ヒューライツ大阪がなすべき事業についての理解を深めることができた。2019年度は定款に示されているヒューライツ大阪の目的と使命を改めて確認すると同時に、現在の大阪と日本の人権状況を踏まえ、なすべき事業を丁寧に検討し、組織の目的の達成に向けた事業を実施する。
 ヒューライツ大阪は2012年4月1日、大阪府認可の一般財団法人に移行した。定款に示されているヒューライツ大阪の「目的」は以下のとおりである。

定款第3条
この法人は、アジア・太平洋地域の人権伸長に資する国際的な人権情報を、国際連合等の協力と同地域の諸国及び人々との相互理解と友好を基に収集・提供することによって、人権を通じての大阪の国際交流並びに府民の国際的な人権感覚の醸成に寄与することを目的とする。

 2019年度は、定款が示す「人権を通じた大阪府民の国際的な人権感覚の醸成への寄与」を具体的かつ効果的に展開することに、これまで以上に心を砕き、ヒューライツ大阪が展開してきた事業をさらに発展的に継続すると同時に、2018年度の経験と実績を踏まえ、前述の2点を念頭に置いて活動を展開する。
 その際には、「誰ひとり取り残さない」を最重要理念として2030年を期限に実施されている「持続可能な開発目標(SDGs)」を含む、人権と密接にかかわる国際目標に留意する。特に、SDGsに関しては、すべての事業にわたり、SDGsとの関連を十分に意識して事業を実施する。2019年は、日本の自由権規約・社会権規約批准40周年にあたる他、6月には大阪でG20サミット開催が予定されている。G20に先立ち市民社会の取り組みとして開催されるC20については、ヒューライツ大阪は、日本における実施主体である「2019 G20サミット市民社会プラットフォーム」の共同代表、また幹事団体として関わってきている。これらと関連づけ、国際人権基準を大阪、そして日本に根付かせる活動にも力を注ぐ。
 事業を遂行するにあたっては、ヒューライツ大阪が念頭に置いてきた以下の指針を、引き続き尊重する。

  1. ヒューライツ大阪が伝えるべき人権は「国際人権基準」である。それは、人が人間らしく生きるために、また公平で公正な社会をつくるためになくてはならないものである。
  2. ヒューライツ大阪は、ウェブサイトやSNSによる情報発信や、セミナー、研修、広報などさまざまな機会とツールを活用し、わかりやすく身近なものとして「国際人権基準」を伝えていく。
  3. ヒューライツ大阪は、2009年に取得した国連の特殊協議資格を活用し、条約監視機関による日本報告書審査に参加するなど、国連を通じた国際人権保障を目的とする活動にも可能な限り積極的に関わる。
  4. ヒューライツ大阪は、特に大阪府民・市民・企業などに対し、「国際人権基準」に関する理解を広げ、人びとのさまざまなニーズに応える事業を継続する。とりわけ、マイノリティなど権利を侵害されやすい立場に置かれている人びとの人権状況に着目し、複合的・交差的な差別および権利侵害を受けている人びとに注意を払う。
  5. ヒューライツ大阪が事業を行うにあたっては、専門的な知識、経験を持つ個人や団体との協力により活動範囲を広げ、事業の質を高め、より多くの人々に人権のメッセージが届き、ニーズに応えることができるよう努める。

 ヘイトスピーチの蔓延、ジェンダーに基づく暴力への不処罰、ネットを中心とした外国籍住民や社会的弱者への無理解と不寛容、移住労働者・移民・難民への排外的態度等、人権の保障を脅かす喫緊の課題が日本と世界には山積している。このような状況をふまえ、ヒューライツ大阪は、これまで以上に国内外の状況を的確にとらえることに力を注ぎ、大阪そして日本の社会に「国際人権基準」が浸透するよう「人権情報センター」としての役割を果たしていく。
 限られた人的・財政的資源のなかで、上記に掲げた目標に向かって期待される役割を担うため、様々な人権課題の中から取り組むべきテーマとして、以下のような重点事業を設定する。

2019年度の重点事業

  1. ヒューライツ大阪が蓄積してきた経験と実績を、現在の大阪そして日本社会が抱える問題の解決に資することに十分に留意しつつ、発展的に継続する。具体的には、以下の事業を実施する。
    1. 【外国籍住民の権利をめぐる諸課題】
       在日コリアンに対するヘイトスピーチ、技能実習生をはじめとする移住労働者、外国ルーツの子どもの教育等、従来から日本に在住する外国籍住民、就労・留学・国際結婚などにより新たに日本で暮らし始めた人たちの人権課題に焦点を当てる。
    2. 【ジェンダーに関わる諸課題/複合差別】
       権利が侵害されやすい人たちの様々な課題のなかでも、特にジェンダーに基づいた差別、不平等、暴力などの人権課題に焦点をあてる。その際、国籍、障害、世系などのアイデンティティとジェンダーが交差する複合的・交差的差別に留意する。SOGI(性的指向・性自認)に関する人権課題にも注意を払う。
    3. 【ビジネスと人権】
       市民の視点に立ち、関係団体と協力・連携しつつ、企業を対象とする研修教材の普及等を通じて、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を始めとする国際基準を浸透させていく。「ビジネスと人権に関する国別行動計画」の策定に向けた動きにも十分に留意する。
    4. 【人権教育】
       日本における人権教育の推進に資することを目的として他国の先進事例から学ぶと同時に、国内における効果的な人権教育の実施に結びつく活動を実施する。
    5. 【人権条約の実施推進】
       日本およびアジア・太平洋地域における人権諸条約の実施状況に関する情報収集や成功事例の紹介をおこなう。その際、包括的な差別禁止法の制定、国内人権機関の設置、個人通報制度への加入等、国際人権条約委員会から検討を勧告されている諸課題にも留意する。
  2. ウェブサイト、フェイスブック、Eメール、ツイッターなど、インターネットやSNSを駆使した情報発信に努める。

II.個別事概要

1、情報収集・発信事業

① 日本語と英語のウェブサイトのコンテンツ充実と発信力の強化 

 日本語サイトは、タイムリーな人権ニュースやヒューライツ大阪の活動を紹介する「お知らせ」を迅速に掲載するとともに、国際人権基準に関するわかりやすいコンテンツを充実させる。英語サイトは、トップページのリニューアルをし、引き続き日本における人権問題およびアジア地域における人権課題をより多く発信することに努める。

2018年度に引き続き、データ量が増え複雑化したコンテンツの構成を整理し、見やすく、探しやすく、使いやすくすることに注力する。

 また、ウェブサイトによる情報発信と並行し、フェイスブックなどSNSの活用による発信方法を工夫し、受信者の対象拡大など発信効果の向上に努める。

② 国内外の会議参加や団体訪問を積極的に推進

 最新情報の収集、ネットワーク強化のため、国内の会議参加や団体訪問を積極的に行う。活動から得られる成果をウェブサイト、ニュースレター、SNSなどを通して情報発信する。
 G20に先立ち、市民社会の取り組みとして開催されるC20(於:東京)、G20に並行して市民社会が企画する大阪市民サミット、また関連する諸会議にも積極的に参加する。
 海外出張については、会議の趣旨と期待される効果を勘案して重要度の高い会議に参加する。具体的には、日韓の人権課題に関するシンポジウムなどの準備のための韓国訪問、9月にネパールで開催される東南アジア・南アジアでの「ビジネスと人権」に関する国際会議、11月にスイス・ジュネーブの国連で開催される「第9回ビジネスと人権フォーラム」などを予定している。さらに、電子媒体などを積極的に活用してアジア・太平洋地域における人権条約の実施状況などの情報収集に努める。

③ 資料の収集・整理

 アジア・太平洋地域の人権状況や人権教育、国際人権基準に関する資料を収集し、資料閲覧に訪れた府民・市民の利用に供する。2019年1月末時点の所蔵図書(逐次刊行物除く)は10,058点で、所蔵数は必ずしも多くないものの貴重なものを含んでおり、書誌情報の管理を維持する。また重点事業に関する資料は積極的に収集する。貸出サービスについては引き続き、会員の紹介者への貸出など貸出対象を広げたり、資料収集に関する情報を公開するなどし、利用促進を図る。

2、調査・研究事業

① 「企業・ビジネスと人権」の普及と促進  

重点事業のひとつとして取り組んできた経験と実積に基づき、2019年度も以下の事業を実施する。

  1. 「ビジネスと人権」に取り組む企業団体やその傘下の個別企業との連携・協力関係をこれまで以上に深める。
  2. 上記に関連付け、次の事業展開を行う。
  3. <ol style="list-style-type: decimal; padding-left: 50px" "="">
  4. 『人を大切に―人権から考えるCSRガイドブック』(第三版)とeラーニング教材を普及させる。
  5. 「ビジネスと人権」をわかりやすく解説したパンフレットを作成する。
  6. 企業のCSR・人権研修担当者向けに人権の社内浸透のためのセミナーを開催する。
  7. ビジネスと人権に関する国別行動計画、SDGsなど幅広く普及させるべきテーマのセミナー等を、企業のみならず市民・NGO等も含めてターゲットとしたセミナー等を開催する。

ビジネスと人権に関するウェブサイト、メールニュース等を通じた情報発信力を高める。

「ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム」「SDGs市民社会ネットワーク」「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」など、市民社会の関係団体や個人とのネットワークを発展させ、情報収集と協力・連携関係の強化に努める。

② 対話を通じた人権教育ワークショップなど人権教育推進のためのプログラム実施

 2018年度は人権教育の課題とニーズを丁寧に把握するために、地域社会において人権教育を実践している人たちと連携し、少人数での対話型ワークショップを行うことに重点を置いた。2019年度は前年度の事業を引き継ぎ、さらに事業の実施を重ねるとともに、国際人権基準と教育に関する情報を含め、今の人権教育に必要な視点やリソースを提供するというアウトプットに注力する。

 また、2018年度に世界人権宣言70周年記念事業として発刊した『人権ってなんだろう?』(解放出版社発行)の普及宣伝に努めることとし、その一環として著者等を講師にした学習会を開催する。

③ スタッフ研修 

 スタッフの業務に必要なスキルや知識を向上させるための研修を実施する。

3、研修・啓発事業

① 国際人権条約の国内実施のモニタリング

 国際人権規約(社会権規約、自由権規約)の日本批准40周年の機会をとらえ、国際人権基準についての理解と現在の日本社会の人権の課題を掘り下げるようなセミナーなどを開催する。2018年8月の人種差別撤廃委員会による勧告のフォローアップなど他の人権条約の日本社会における実施に関する情報も積極的に発信していく。

 また、ヘイトスピーチをめぐる課題に関して、大阪市の条例、国の法律の実施状況をフォローするとともに、他の自治体の取り組みに関する情報収集や啓発活動を行う。

② 移住者の人権に関する情報収集・啓発

 移住者や外国につながる子どもたちの直面する課題に関する情報を当事者や支援者、市民に伝える。とりわけ技能実習生および、2019年4月から施行される改定入管法をめぐる人権課題についての情報発信・啓発に注力する。
 また、2018年12月に国連で採択された「難民および移住に関するグローバルコンパクト」など移住者の人権に関わる国際人権基準の普及にも一層努める。 

③ 人権映画の上映会

 2018年度に世界人権宣言採択70周年として映画上映会を開催したが、参加者からも継続を望む声があり、継続事業として、特にこれまで人権を身近に感じる機会がなかった人たちが、人権の意義や内容の理解を深める契機とする。

④ 複合差別についての研究会 

 2018年度は、研究会としてではなく、12月の世界人権宣言70周年記念大阪集会のシンポジウムのテーマとして複合差別を取り上げ、府民・市民への啓発事業に資したが、2019年度は、当事者団体との協力・連携を通じて、サイトの改善と内容の充実を図り、このテーマに関する理解を深め、当事者のエンパワメントにつながるセミナーなどを実施する。

⑤ 受託事業

 ヒューライツ大阪のスタッフの講師派遣について引き続き広報し、自治体、学校、NPO/NGO、企業、宗教団体などが企画する人権研修を受託する。また、大学などの研究調査に関わる業務協力についても、ヒューライツ大阪の活動趣旨に適う場合には積極的に受託する。

⑥ ワン・ワールド・フェスティバル for Youthなどイベントへの参加

 国際協力に関わるNGO、大学、政府機関、国連機関が大阪に集まり活動紹介や交流イベントを行う「ワン・ワールド・フェスティバル for Youth」などに参加することによって、ヒューライツ大阪の活動を広く伝えることができるイベントに積極的に参加する。

⑦ 共催事業:NPO/NGO、学校関係などの団体との協力・共催事業の推進 

 ヒューライツ大阪の活動の趣旨と合致するセミナー開催などの事業を、他団体との協力のもとに共催することで、ヒューライツ大阪の企画の充実を図るとともに新しい層への啓発を模索し、ネットワーク強化、およびヒューライツ大阪の認知度を高める。2019年度は、G20に先立ち4月に開催予定の市民社会の取り組みであるC20や、G20に並行して6月に開催予定の大阪市民サミット、10月開催予定の大阪市立大学による台湾の大学との学習会などに積極的に関わっていく。  

⑧ タイムリーな機会を得た学習会 

 人権に関する様々なトピックを切り口にして、わかりやすく親しみやすい学習会「じんけんカタリバ」を2018年度に引き続き開催する。

 さらに当初の事業計画に含まれていない場合を含めて、タイムリーなテーマや重点課題に関連する企画などの機会を得た場合、必要に応じて学習会を開催し、府民・市民に人権情報を提供する。

⑨ インターン受入れ・人材養成事業

 人員体制を考慮しつつ、国内外の大学院生・大学生などからのインターンの希望があれば引き続き受け入れる。インターン生がヒューライツ大阪の事業に関わる機会を設け、実務経験の場を提供することで、国際人権基準を理解する人材の育成に資するとともに情報受発信の充実にもつなげる。

 

4、広報・出版事業

① ニュースレター「国際人権ひろば」、「FOCUS」の発行  

 国内外で人権に関する関心の高いトピックや伝えるべき情報を広く発信するとともに、ヒューライツ大阪の会員や関係者とのネットワークの媒体として、ニュースレターを引き続き発行する。日本語の「国際人権ひろば」は年6回2000部、英語の「FOCUS」は年4回300部発行する。「FOCUS」は郵送するとともに電子ファイル化し(PDF、HTML)、国内外に送信する。

 また日英のニュースレターの記事は、ウェブサイトに継続して掲載する。国内外のニーズに応えるコンテンツとして内容の充実、および読みやすさを追求する。

② “Human Rights Education in the Asia-Pacific(アジア・太平洋における人権教育)”(英語)Vol.10の企画編集

 毎年、アジア・太平洋地域の学校教育および生涯教育を含む幅広い人権教育の実践報告を収集・出版している。書籍はアジア各国の人権機関、NGO、政府機関等に配布するとともに、全文をウェブサイトに掲載している。この事業を通じて、地域における人権教育に関する情報を蓄積している。2019年度は、企画編集を終えた“Human Rights Education in the Asia-Pacific”(英語)Vol.9を出版し、同Vol.10の企画・編集を行う。

5、情報サービス事業

① 会員の拡大と会員サービスの充実

 ヒューライツ大阪の支援者を増やし、安定した収入を確保するために、リーフレットの活用などによって継続して会員の維持と拡大を図る。事業参加費の割引・無料などの会員サービスを積極的に伝えることを含め、機会をとらえて会員募集の広報を行う。

② Eメールインフォの発行

 ヒューライツ大阪のセミナーやウェブサイトの更新の情報などを、個人・団体に、タイムリーに伝えるために「Eメールインフォ」および「企業と人権インフォ」を発信する。また、会員、役員に対しては、より詳しい情報を提供する「Eメール会報」を引き続き送信する。

③ 情報・研修などについて国内外からの相談、見学訪問

 ヒューライツ大阪が蓄積する資料・情報や研究・研修に関する相談に応じるとともに、適切な人権関連機関を紹介するなどの情報サービスに努める。また会員からの人権啓発・研修の企画に関する相談があれば、積極的にサポートする。教育関係団体の見学希望についても、可能な限り対応する。