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ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

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2017年度事業計画

もくじ
I.  基本方針
II. 個別事業概要

I. 基本方針

 日本をはじめ世界各地で、経済格差が拡大するとともに、移民や難民などマイノリティに対する差別や排外主義が強まっている。そのような状況をふまえ、ヒューライツ大阪は、国内外の状況を的確にとらえて、社会の課題に応じた人権のメッセージを伝えるための「人権情報センター」としての役割を果たしていく。

 ヒューライツ大阪は2012年4月1日、大阪府認可の一般財団法人に移行した。その使命は、大阪で、日本社会で、そしてアジア・太平洋地域をはじめとする国際社会で、国際基準の人権を伝えていくことにある。この理念は、設立以来変わりはない。2017年度も引き続き、人権のメッセージを伝える方法を工夫しながら事業計画を立てる。

 ヒューライツ大阪が事業を遂行するにあたって、従来から心がけている指針は次のとおりである。

(1)ヒューライツ大阪が伝えるべき人権は「国際人権基準」である。それは、理論や理想に留まっていてはならず、生活の場で実践していくべきものである。人が人間らしく生きるために、また公平で公正な社会をつくるためにはなくてはならないものである。

(2)ヒューライツ大阪は、人権をできるだけ多くの人びとが理解できるように、ウェブサイトやSNSによる情報発信や、セミナー、研修、広報などさまざまな機会を活用して、市民にわかりやすく、身近なものとして「国際人権基準」を伝えていく。また、企業やNGO関係者、専門的な情報を求める人たちにも応える情報サービスにも努める。

(3)ヒューライツ大阪は、国際社会の一員として人権の保護促進に貢献することをめざしている。とりわけ、人権教育の分野では、アジア・太平洋地域のさまざまな機関・団体の協力を得て、その推進に努めている。2009年に取得した国連の特殊協議資格を活用し、アジア・太平洋地域における人権保障に向けた取り組みの動向、条約監視機関による日本報告審査への参加や情報提供など、国連の人権活動への関わりを可能な限り進める。

(4)ヒューライツ大阪は、大阪府民・市民・企業などへの還元として、「国際人権基準」に関する理解を社会に広げるとともに、人びとのさまざまなニーズに応える事業を継続する。とりわけ、マイノリティなど権利を侵害されやすい立場に置かれている人びとの人権状況に着目する。

(5)事業を行うにあたっては、専門的な知識、経験を持つ個人や団体との協力によりヒューライツ大阪の活動範囲を広げ、事業の質を高め、より多くの人々に人権のメッセージを伝え、ニーズに応えることができるよう努める。

 ヒューライツ大阪の人的・財政的資源は、2017年度も前年同様に限られている。目標に向かって期待される役割を担えるよう、様々な人権課題の中から取り組むべきテーマをいくつか重点事業として設定する。

 

2017年度の重点事業

(1)ウェブサイト、フェイスブック、ツイッター、Eメールなど、インターネットを駆使した情報発信を行う。蓄積している情報・資料を整理し、一層の活用を図る。

(2)大阪をはじめ日本、そしてアジア・太平洋地域における国際人権基準の普及促進。

  1. 企業と人権:とりわけ日本における企業を対象に、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際基準を普及していく。
  2. 人権教育:大阪とアジア・太平洋地域など国際社会とをつなぐ事業を実施する。
  3. 日本およびアジア・太平洋地域における被差別グループや権利が侵害されやすい人たちの人権課題に関するセミナーを開催する。とりわけ、マイノリティ女性など複合的な差別を受けている人たちや移住者の人権課題に焦点をあてる。
  4. 日本およびアジア・太平洋地域における人権諸条約の実施状況に関する情報収集と発信をおこなう。

 

II. 個別事業概要

1.情報収集・発信事業

① 日本語と英語のウェブサイトのコンテンツ充実と発信力の強化 

 日本語サイトは、タイムリーな人権ニュースやヒューライツ大阪の活動を紹介する「お知らせ」を迅速に掲載するとともに、国際人権基準に関するコンテンツを充実させる。英語サイトは、日本の人権問題およびアジア地域における人権課題に関してより多く発信することに努める。

 データ量が増え複雑化したコンテンツの構成を整理し、見やすく、探しやすく、使いやすくすることに注力する。

 また、ウェブサイトによる情報発信と並行し、facebook やtwitterなどSNSの活用による発信方法の多面化を図り、受信者の対象拡大など発信効果の向上に努める。

 不正侵入されるリスク回避のために、インターネット環境のセキュリティ強化を図る。

② 国内外の会議参加や団体訪問を積極的に推進 

 最新情報の収集、ネットワーク強化のため、国内の会議参加や団体訪問を積極的に行う。活動から得られる成果をウェブサイト、ニュースレター、SNSなどを通して情報発信する。

 またアジア・太平洋諸国における人権条約の実施に取り組んでいる団体とのネットワーク強化に努める。国外で開催される国際会議について、会議の趣旨と期待される効果を勘案して重要度の高い会議に参加する。

③ 資料の収集・整理

 アジア・太平洋地域の人権状況や人権教育、国際人権基準に関する資料を収集し、資料閲覧に訪れた府民・市民の利用に供する。新規資料の受け入れ点数が207点(2016年度4月より2017年1月末)。点数は多くはないが、貴重なものも含んでおり、書誌情報の管理を維持する。また重点事業に関する資料は積極的に収集する。貸出サービスについては貸出対象を広げたり、資料収集に関する情報を公開し利用促進を図る。

 

2.調査・研究事業

① 「企業の社会的責任と人権」の普及と促進 

 これまで重点事業のひとつとしてプログラムを進めてきたが、積み重ねをもとに2017年度も事業を進める。

(1) 『人を大切に―人権から考えるCSRガイドブック』(第三版)とeラーニング教材の普及に努めるとともに、「ビジネスと人権」をわかりやすく解説したパンフレットを作成して普及の裾野をさらに広げる。

(2) 企業の人権研修担当者向けのセミナーを開催する。

(3) 企業のCSR担当者向けのセミナーを開催する。

(4) 市民・NGO向けのセミナーを開催する。

(5) ウェブサイトの「企業と人権」セクションを充実させるとともに、「メールニュース〔企業と人権〕インフォ」を引き続き発信する。

(6) 「社会的責任向上のためのNPO/NGOネットワーク」をはじめ、関係団体や個人とのネットワークを発展させ、連携と情報収集に努める。

② ヘイトスピーチやレイシズム(人種主義)に抗する教育の推進(新規)

 ヘイトスピーチに関する大阪市の条例や国の法律が制定がされたことを受けて、マイノリティに対するマジョリティ(多数者)によるヘイトスピーチや排外的な意識に抗するための人権教育を推進する。専門家の助言を受けながら、国内外の教材、教案などに関する情報収集を行い、具体的なアウトプットを考える。併せて、ヒューライツ大阪のウェブサイトの「人権教育」のページを整理し、内容の充実を図る。

③ 学校における人権教育に関するワークショップの開催 

 国連が「人権教育世界プログラム・第3段階」(2015~2019年)を推進しているなか、日本を含むアジア・太平洋地域の学校における人権教育は、質量両面においてこの数年低迷している。

 過去にヒューライツ大阪が推進してきた学校における人権教育プログラムの成果とアジア各国の現状を踏まえ、ネットワークの再構築と人権教育の現場のニーズを探るためのワークショップを日本国外で開催する。実施にあたり、ネットワーク関係にある機関や助成財団などに予算や運営面での協力を求める。

④ スタッフ研修 

 スタッフの業務に必要なスキルや知識を向上させるための研修を実施する。

 

3.研修・啓発事業

① 国際人権条約の国内実施のモニタリング 

 国連の条約監視機関が近年日本の実施状況について審査した勧告のフォローアップを行う。2017年11月に行われる国連人権理事会による日本についてのUPR(普遍的・定期的レビュー)のプロセスをモニターし情報発信する。

 ヘイトスピーチをめぐる課題に関して、大阪市の条例、国の法律の実施状況をフォローするとともに、他の自治体の取り組みの動向に関して情報収集や啓発活動を行う。

 調査・研究事業の②「ヘイトスピーチやレイシズム(人種主義)に抗する教育の推進」と連動した事業とする。

② 複合差別研究会

 2016年度後半に立ち上げた複合差別研究会、および開設した「複合差別と女性」のウェブページを、さらに充実発展させるための取り組みを行う。研究会は複合差別に関係する課題の学習会を3回程度開き、当事者および関心ある人びとに参加をよびかける。その成果はウェブページなどを通して発信していく。

③ ドキュメンタリー映像作品の鑑賞を通じて人権を考える学習会

 2016年度を継承し、人権に関する国内外の埋もれた優秀作品を専門家の協力を得ながら、探し、広く市民に向けた鑑賞・学習会をおこなう。

④ 移住者の人権に関する情報収集・啓発

 移住者や外国につながる子どもたちの直面する課題に関する情報を当事者や支援者、市民に伝える。とりわけ、2017年度から外国人技能実習制度に追加される介護労働者の受け入れ、および大阪特区など国家戦略特区への「家事支援人材」(家事労働者)の受け入れについて注視する。

⑤ 受託研修

 ヒューライツ大阪のスタッフの講師派遣について引き続き広報し、自治体、学校、NPO/NGO、企業、宗教団体などが企画する人権研修会の講師として受託する。また、大学などの研究調査に関わる業務協力についても、ヒューライツ大阪の活動趣旨に適う場合は積極的に受託する。

⑥ ワン・ワールド・フェスティバルなどイベントへの参加

 国際協力に関わるNGO、大学、政府機関、国連機関が大阪に集まり活動紹介や交流イベントを行う「ワン・ワールド・フェスティバル」など、参加することによって、ヒューライツ大阪の活動を広く伝えることができるイベントに積極的に参加する。

⑦ インターン受入れ・人材養成事業

 人員体制を考慮しつつ、国内外の大学院生・大学生などからのインターンの希望があれば引き続き受け入れる。インターン生がヒューライツ大阪の事業に関わる機会を設け、実務経験の場を提供することで、人材育成に資するとともに情報受発信の充実にもつなげる。

⑧ 共催事業: NPO/NGO、学校関係などの団体との協力・共催事業の推進

 ヒューライツ大阪の活動の趣旨と合致するセミナー開催などの事業を、他団体との協力や共催によって積極的に推進することで、企画の充実と新しい層との出会いを期するとともに、ネットワーク強化、およびヒューライツ大阪の認知度を高める。

 たとえば、来日者が急増しているベトナムおよびネパールなどからの移住者をめぐる課題に関するセミナーをNPO法人おおさかこども多文化センターと共催する。また、移住者支援のNGOと協力して、移住者・移住労働者のもたらす肯定的な側面に光をあてながら、「ダイバーシティ」(多様性)の側面から多民族・多文化共生を考えるセミナーを企画する。

⑨ 市民の視点に立った学習会など

 タイムリーなテーマや重点課題に関連する企画などの機会を得た場合、必要に応じて学習会を開催し、府民・市民に価値ある人権情報を提供する。

 

4.広報・出版事業 

① ニュースレター「国際人権ひろば」「FOCUS」の発行

 国内外の人権の最新情報を広く発信するとともに、ヒューライツ大阪の会員や関係者とのネットワークの媒体として、ニュースレターを引き続き発行する。日本語の「国際人権ひろば」は年6回2000部、英語の「FOCUS」は年4回300部発行する。「FOCUS」は郵送するとともに電子ファイル化し(PDF、HTML)、国内外に送信する。

 また日英のニュースレターの記事は、ウェブサイトに継続して掲載する。国内外のニーズに応えるコンテンツとして内容の充実、および読みやすさを追求する。

② 複合差別の啓発冊子の出版

 日本国内のマイノリティ・コミュニティの女性を中心に、複合差別の実態と背景、女性たちの取り組み、複合差別の理論的考察をわかりやすくまとめた冊子を作成する。日本以外のアジア地域のマイノリティ・コミュニティの女性の現状についても紹介する。内容は、ウェブサイトにも掲載する。

③ “Human Rights Education in the Asia-Pacific(アジア・太平洋における人権教育)”(英語)Vol.8の出版

 毎年、アジア・太平洋地域の学校教育および生涯教育を含めた幅広い人権教育の実践報告を収集・出版している。書籍はアジア各国の人権機関、NGO、政府機関等に配布するとともに、全文をウェブサイトに掲載している。この事業を通じて、地域における人権教育に関する情報を蓄積している。

 

5.情報サービス事業

① 会員の拡大と会員サービスの充実

 ヒューライツ大阪の支援者を増やし、安定した収入を確保するために、継続して会員の維持と拡大を図る。事業参加費の割引などの会員サービスを積極的に伝えることを含め、機会をとらえて会員募集の広報を行う。

② Eメールインフォの発行

 ヒューライツ大阪のセミナーやウェブサイトの更新の情報などを、個人・団体に、継続的に伝えるために「Eメールインフォ」および「企業と人権インフォ」を発信する。また、会員、役員に対しては、より詳しい情報を提供する「Eメール会報」を引き続き送信する。

③ 情報・研修などについて国内外からの相談、見学訪問

 ヒューライツ大阪が蓄積する資料・情報や研究・研修に関する相談に応じるとともに、適切な人権関係機関を紹介するなどの情報サービスに努める。また会員に対して、人権啓発・研修の企画に関する相談があれば積極的にサポートする。教育関係団体の見学希望についても、可能な限り対応する。