1. TOP
  2. 資料館
  3. 人権教育の推進
  4. 人権教育のための世界プログラム 第1 段階(2005年~2007年)のための修正行動計画

人権教育のための世界プログラム 第1 段階(2005年~2007年)のための修正行動計画

配布先:一般
2004年10月
原文:英語

国連総会

第59会期
議題105(b)
人権の問題:人権および基本的自由の効果的享有改善のための代替アプローチをふくむ人権問題


事務総長による覚書


  事務総長は、初等・中等教育制度に焦点を当てる人権教育のための世界プログラム第1段階(2005年~2007年)のための行動計画案を謹んで総会に送付し、総会によるその検討および採択を求めるものである。修正行動計画は、本文書の付属文書に含まれている。そして総会決議59/113にもとづき加盟国が提出した意見を含んでいる。

  第1回の行動計画案は、経済社会理事会が決定2004/268において承認した人権委員会決議2004/71に基づき、第59会期総会に検討のため提出された。

国連人権高等弁務官事務所が国連教育科学文化機関ならびにその他の政府系機関および非政府組織と協力して作成した。

  決議59/113で、総会は、人権教育のための世界プログラムを宣言し、初等・中等教育制度に焦点を絞った第1段階(2005-2007年)の行動計画案に感謝を持って留意し、早期の採択を目指して、それに対する意見を国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に提出するよう意見を要請した。2004年12月21日、OHCHRは行動計画案への意見を2005年1月31日までに出すよう求めた口上書をすべての政府に送付した。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)と協議して、OHCHRは、2005年2月11日までに受け付けたオーストラリア、アゼルバイジャン、ギリシャ、ドイツ、日本、スウェーデンおよびトルコからの意見を考慮して、行動計画を修正した。


人権教育のための世界プログラム

目次
I. はじめに
  A. 人権教育の背景および定義
  B. 人権教育のための世界プログラムの目的
  C. 人権教育活動の原則
II. 第1段階(2005-2007年):初等・中等学校制度における人権教育のための行動計画
  A. 背景
  B. 学校制度における人権教育
  C. 行動計画の具体的目的
III. 国レベルにおける実施戦略
  A. はじめに
  B. 実施戦略の段階
  C. 最低限の行動
  D. 主体
  E. 財源
IV. 行動計画の実施の調整
  A. 国内レベル
  B. 国際レベル
V. 国際的な協力および支援
VI. 評価

添付文書:初等・中等学校制度における人権教育の構成要素


I. はじめに


「世界人権会議は、人権に関する教育、研修および広報が、社会の安定的かつ調和的な関係を促進および達成し、ならびに相互の理解、寛容および平和を促進するために不可欠なものであると考える」(ウィーン宣言および行動計画、第2部D、パラグラフ78)
 A. 人権教育の背景および定義

1. 人権教育が人権の実現に対して重要な形で寄与するということへの同意は、国際社会によってますます頻繁に表明されるようになってきた。人権教育は、それぞれの共同体および社会一般で人権を実現するすべての人の責任に関する理解の向上を目的としたものである。その意味で人権教育は、人権委員会決議2004/71で述べられているように、人権侵害および暴力的紛争の長期的防止、平等および持続可能な開発の促進、ならびに、民主的制度における意思決定プロセスへの人々の参加の増進にも寄与する。

2. 人権教育に関する規定は多くの国際文書に盛りこまれてきた。世界人権宣言(第26条)、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(第13条)、子どもの権利に関する条約(第29条)、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(第10条)、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(第7条)、ウィーン宣言および行動計画(第1部、パラグラフ33-34および第2部、パラグラフ78-82)、ならびに、南アフリカのダーバンで2001年に開催された「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に反対する世界会議」の宣言および行動計画(宣言のパラグラフ95-97および行動計画のパラグラフ129-139)などである。

3. 国際社会が合意した人権教育の定義の諸要素を定めたこれらの文書にしたがい、人権教育とは、知識およびスキルの伝達ならびに態度の形成を通じて普遍的な人権文化を構築することを目的とした教育、研修および広報であり、次のことを指向するものとして定義できる。
(a)人権および基本的自由の尊重の強化
(b)人格およびその尊厳の理解の全面的発達
(c)すべての民族、先住民族ならびに人種的、国民的、民族的、宗教的および言語的集団の間の理解、寛容、ジェンダーの平等および友好の促進
(d)法の支配が規律する自由かつ民主的な社会にすべての人が効果的に参加できるようにすること
(e)平和の構築および維持
(f)人々が中心の持続可能な開発および社会正義の促進

4. 人権教育は次の要素を包含する。
(a)知識およびスキル――人権およびその保護のための仕組みについて学習し、かつそれらを日常生活の中で適用するスキルを身につけること
(b)価値観、態度および振舞い――人権を支える価値観を発達させ、かつそのような態度および振舞いを強化すること
(c)行動――人権を擁護および促進するための行動をとること

5. 人権教育のとりくみを奨励するため、加盟国は行動のための具体的かつ国際的な枠組みをさまざまな形で採択してきた。人権広報資料の開発および普及に焦点を当てた「世界人権広報キャンペーン」、国内レベルで包括的、効果的かつ持続可能な人権教育戦略を策定および実施するよう奨励した「人権教育のための国連10年」(1995年~2004年)およびその行動計画、ならびに、「世界の子どものための平和および非暴力に関する国際10年」(2001年~2010年)などである。

6. 2004年には、経済社会理事会は、人権委員会決議2004/71を歓迎し、総会に対し、第59会期において、2005年1月1日に開始され、かつ、人権委員会が定期的に指定する特定の部門/問題に関して国内で進められる人権教育の取り組みをさらに集中させるために段階的に構築される「人権教育のための世界プログラム」を宣言するよう要請した。

 B. 世界プログラムの目的

7. 人権教育のための世界プログラムの目的は次のとおりである。
(a)人権文化の発展を促進すること
(b)人権教育の基本的原則および方法論に関して、国際文書に基づき、共通の理解を促進すること
(c)国、国際地域および国際社会のレベルで人権教育に焦点が当てられることを確保すること
(d)関連のあらゆる主体による行動のための共通の集団的枠組みを提示すること
(e)あらゆるレベルでパートナーシップおよび協力を増進すること
(f)既存の人権教育プログラムを評価および支援し、成功している実践に注目するとともに、成功している実践を継続および(または)拡大しかつ新たな実践を発展させるための刺激を提供すること

 C. 人権教育活動の原則 [1]

8. 世界プログラムにおける教育活動は次のようなものになる。
(a)市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利ならびに発展に対する権利を含む人権の相互依存性、不可分性および普遍性を促進する。
(b)違いの尊重および理解、ならびに、人種、性、言語、宗教、政治的その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、身体的もしくは精神的条件等にもとづく差別に対する反対を醸成する。
(c)人権に関する慢性的問題および新たに生じてきた問題(貧困、暴力的紛争および差別を含む)について、人権基準と両立する解決策につながるような分析を奨励する。
(d)地域社会および個人が自己の人権上のニーズを特定し、かつそれが満たされることを確保できるようにエンパワーする。
(e)異なる文化的背景の中に根づいた人権の原則にもとづいて活動を進め、かつ各国の歴史的および社会的発展を考慮に入れる。
(f)人権保護のために地域、国、国際地域および国際社会で用意された人権文書および人権機構についての知識およびそれらを活用するスキルを醸成する。
(g)人権を向上させる知識、批判的分析および行動スキルを含んだ参加的教育手法を活用する。
(h)参加、人権の享有および人格の全面的発達を奨励する、欠乏と恐怖のない自由な教授・学習環境を醸成する。
(i)学習者の日常生活との関連を保ち、学習者が、人権を抽象的に表現された規範から自分たちの社会的、経済的、文化的および政治的状況の現実に置き換える方法および手段に関する対話に参加できるようにする。


II. 第1段階(2005年~2007年):初等・中等学校制度における人権教育のための行動計画


「世界人権会議は、......人権および基本的自由の尊重を強化するための教育を確保することが各国の義務であることを、あらためて確認する。......〔このような教育は〕国内的および国際的レベルの教育政策に統合されるべきである。」(ウィーン宣言および行動計画、第1部、パラグラフ33)
9. 人権委員会決議2004/71にしたがい、人権教育のための世界プログラムの第1段階(2005年~2007年)においては初等・中等学校制度に焦点が当てられる。

 A. 背景

10. 本行動計画は、国際人権文書によって定められた原則および枠組みをもとにしている。世界人権宣言、子どもの権利に関する条約および子どもの権利委員会が採択した関連の指針(とくに教育の目的に関する一般的意見1号(2001年))、1993年のウィーン宣言および行動計画、ならびに、平和、人権および民主主義のための教育についての統合行動枠組みに関する宣言などである。また、教育に関する国際的宣言およびプログラムも基にしている。

11. 世界教育フォーラム(2000年)で採択された「万人のための教育に関するダカール行動枠組み:集団的決意表明の達成」は、万人のための教育(EFA)の目標および数値目標の達成に向けたもっとも重要な国際的綱領であり集団的決意表明であって、世界人権宣言と子どもの権利条約が支持し、かつ共生の学習を志向した教育ビジョンを再確認した文書である。教育は、社会的結合を醸成し、かつ人々が社会変革への積極的参加者となれるようエンパワーすることにより、「持続可能な開発ならびに平和および安定」(パラグラフ6)を達成する鍵になると位置づけられている。ダカール枠組みの目標6は、すべての側面に関して教育の質を向上させること、および、とくに識字、計算および必要不可欠なライフスキルの面で、承認された測定可能な学習成果をすべての者が達成できるように教育の質の卓越性を確保することである[2]。そこでは、読み書き計算に留まらない、質の高い教育という概念の基盤が提示されている。質の高い教育とは、ダイナミックでなければならないと同時に、徹底して権利に根ざし、かつ民主的な市民性、価値観および連帯を重要な成果として包含するものである。

12. 権利に根ざした質の高い教育とは、「持続可能な開発に関する世界サミット」の実施計画に掲げられているように、持続可能な開発のための教育という概念を包含するものである。教育は、農村開発、保健、地域社会の関与、HIV/AIDS、環境、伝統的知識および先住民族の知識、ならびに人間的価値および人権といったさらに幅広い倫理的論点のような、重要な諸問題に対応するひとつのプロセスとしてとらえられている。さらに、持続可能な開発のための闘いを成功させるうえでは、「他の諸価値――とくに正義および公正――の支持と、われわれは他の人々と運命を共有しているという意識」[3]を強化するような教育が必要であるとも述べられているところである。人権教育のための世界プログラムは、国連持続可能な開発のための教育に関する10年(2005年~2014年)と相乗効果を生み、共通の関心事である諸問題に対応するための努力を連携させていくことになろう。

13. 国連ミレニアム・サミット(2000年)において国際社会が採択したミレニアム開発目標のひとつは初等教育にすべての者がアクセスできるようにすることの促進であり、これは依然として大きな課題である。いくつかの地域では就学率が向上しているものの、教育の質は多くの人々にとって低いままである。たとえば、ジェンダーにもとづく偏見、女子の身体的・情緒的安全への脅威ならびにジェンダーに配慮しないカリキュラムは、いずれも、教育に対する権利の実現の妨げとなりうる(A/56/326, para.94参照)。本行動計画は、権利に根ざした質の高い教育を促進することにより、このミレニアム開発目標の達成に貢献することを目指すものである。

14. 本行動計画は、とくに国連識字の10年(2003年~2012年)の枠組みにおいて加盟国その他が推進している、識字に対するすべての人の権利を促進するための行動の文脈にも位置づけられる。識字は、教育に対する権利を充足することに向けた、鍵となる学習手段のひとつである。

 B. 学校制度における人権教育

15. 人権教育は、教育に対する権利を構成する重要な一部として広くとらえられる。子どもの権利委員会が一般的意見1号で述べているように、「すべての子どもがそれに対する権利を有している教育とは、子どもにライフスキルを与え、あらゆる範囲の人権を享受する子どもの能力を強化し、かつ適切な人権の価値観が浸透した文化を促進するような教育である」(パラグラフ2)。このような教育は、「グローバリゼーション、新たなテクノロジーおよび関連の諸現象に駆り立てられた根本的な変化の時代につきまとう課題に対し、その人生の過程でバランスのとれた、人権に馴染んだ対応を達成する努力を行なううえで、すべての子どもにとって不可欠の手段」となる(パラグラフ3)。

16. 子どもの権利条約は、一般的意見が次のように強調しているとおり、教育が促進されるプロセスをとくに重視している。「その他の権利の享受を促進しようとする努力が教育プロセスのなかで伝えられる価値観によって阻害されてはならず、逆に強化されなければならない。これには、カリキュラムの内容だけではなく、教育プロセス、教育方法、および、家庭か学校かその他の場所かは問わず、教育が行なわれる環境が含まれる」[4]。このように、人権とは内容の伝達および経験の双方を通じて学習され、かつすべてのレベルの学校制度において実践されるべきものなのである。

17. この意味で、人権教育とは教育に対する権利に根ざしたアプローチを促進するものであり、次の要素を含むプロセスとして理解されるべきである。
(a)「教育を通じての人権」:カリキュラム、教材、手法および研修を含む学習のすべての要素とプロセスが人権の学習に資するようなものであることを確保すること
(b)「教育における人権」:教育制度においてすべての主体の人権の尊重および権利の実践を確保すること

18. したがって、初等・中等学校制度における人権教育とは以下を含む。
(a)政策― 教育に関わる首尾一貫した政策、法律および戦略を、参加型の方法で策定および採択すること。これらの政策等は、人権を基盤とし、かつカリキュラムの改善および教職員の養成・研修政策を含むものでなければならない。
(b)政策の実施― 適切な組織体制上の措置をとり、かつすべての関係者の関与を促進することによって、上述した教育政策の実施を計画すること。
(c)学習環境― 学校環境そのものを、人権および基本的自由を尊重・促進するようなものとすること。そこでは、学校に関わるすべての主体(児童生徒、教職員および学校管理者ならびに親)が、現実の例および諸活動を通じて人権と連帯を実践する機会が提供される。また、子どもが自分たちの意見を自由に表明し、かつ学校生活に全面的に参加できるようにする[5]
(d)教授・学習― 教授・学習のすべてのプロセスおよび手段が権利を基盤としたものであること(たとえば、カリキュラムの内容および目的、参加型でありかつ民主的な実践および方法論、現行教科書の見直し・改訂を含む適切な教材等)。
(e)教職員の教育および職能開発― 教職員および学校管理者に対し、着任前の研修および現職者研修を通じて、学校における人権の学習・実践を促進するために必要な知識、理解、スキルおよび能力を備えさせるとともに、適切な労働条件および地位を保障すること。
  以上の要素および関連の行動のあり方についての詳細な説明は、参考用として添付文書に記載する。

19. 教育に対する権利に根ざしたアプローチを促進することにより、人権教育は、教育制度が、すべての人に対して質の高い教育を保障するという根本的使命を果たすことを可能にする。したがって人権教育は、各国の経済的、社会的および政治的発展において基本的役割を果たす国の教育制度全体の実効性を高めることに貢献するのである。人権教育にはとくに次のような利点がある。
(a)子ども中心で参加型の教授・学習の実践およびプロセスならびに教職員の新しい役割を促進することにより、学習成果の質が向上する。
(b)すべての人を包みこみ、迎え入れるような環境とともに、普遍的価値、機会均等、多様性および差別の禁止を促進する権利に根ざした学習環境をつくりだすことにより、学校で学ぶことへのアクセスおよび参加を増進する。
(c)子どもの社会的・情緒的発達を支え、かつ民主的な市民性および価値観を導入することにより、社会的結合と紛争防止に寄与する。

20. 平和教育、市民性教育、価値教育、多文化教育、グローバル教育または持続可能な開発のための教育に向けて学校制度の中で行なわれているあらゆる努力にも、内容面および方法論の面で人権の諸原則が含まれている。これらのすべての教育において、本行動計画を参照しながら、教育に対する権利に根ざしたアプローチを促進することが重要である。教育に対する権利に根ざしたアプローチは単なる教授・学習に留まるものではなく、国レベルの教育改革の過程で学校部門の体系的改善を図るための基盤を用意することを目指している。

 C. 本行動計画の具体的目的

21. 人権教育のための世界プログラムの全般的目的(前掲第1部参照)を考慮しつつ、本計画では次の具体的目的を達成することが目指される。
(a)初等・中等学校制度における人権の包含および実践を促進すること。
(b)学校制度における包括的、効果的かつ持続可能な国家的人権教育戦略の策定、採択および実施ならびに(または)現行のとりくみの見直しおよび改善を支援すること。
(c)学校制度における人権教育の鍵となる要素についての指針を提示すること。
(d)国際社会、国際地域、国および地方の機関による加盟国への支援の提供を促進すること。
(e)地方、国、国際地域および国際社会の諸機関間のネットワーク化および協力を支援すること。

22. 本計画で提示する内容は次のとおりである。
(a)国際的に合意された諸原則にもとづく、学校制度における人権教育の定義
(b)国レベルでの実施のための具体的行動を提案することにより、学校制度における人権教育を発展および(または)向上させるための、利用者に優しい指針。
(c)異なる背景および状況に応じて修正可能な柔軟な指針。


III. 国レベルにおける実施戦略



 A. はじめに

23. 本計画は、初等・中等学校制度における人権教育を国レベルで発展・強化させるための刺激であり、手段である。本計画では、変革および向上の過程は異なる分野でいくつかの行動を同時に起こすことにより進められるべきであるという前提が貫かれている(添付文書参照)。そのような過程は、効果的となることができるように、広く受け入れられた開発サイクルの諸段階に沿って組織されるべきである。その国の背景、優先課題および能力にしたがい、かつこれまでに国レベルで進められてきた努力(たとえば人権教育のための国連10年(1995年~2004年)の枠組みの中で行なわれてきた努力)にもとづいて、行動のための現実的な目標と手段が確立されなければならない。

24. 本計画とその実施戦略では、学校制度における人権教育の状況は国によって異なることが認識されている。たとえば、人権教育が基本的に行なわれていない国もあれば、国レベルの政策とプログラムはあるものの、ほとんど実施されていない国もあるかもしれない。多くの場合には国際機関の支援を得て学校で草の根のとりくみやプロジェクトが行なわれているものの、それらが必ずしも国レベルの政策の一環にはなっていない場合もあれば、国レベルで完成度の高い政策と行動を定め、人権教育を熱心に支援している国もあろう。どのような状況であれ、人権教育の発展または改善は各国の教育課題のひとつとされなければならない。

25. 実施戦略は、第1に、国レベルで初等・中等教育に対して主たる責任を負っている教育省を対象としている。したがって、教育省はもっとも重要な指導者であり、主体である。実施戦略は他の関連の機関(後掲パラグラフ28-30参照)も対象としており、これらの諸機関は計画・実施の全段階で関与することが求められる。

 B. 実施戦略の諸段階

26. 本節では、学校制度における人権教育の計画、実施および評価の過程を容易にする4つの段階を提案する。これは、加盟国による本行動計画の実施に役立つ指針となるものである。

第1段階:学校制度における人権教育の現状分析

 行動
  • 対応すべき問題:「いまどのような段階にあるのか?」
  • 次の点に関する情報を収集・分析する。
    • 学校における人権教育の状況を含む、初等・中等学校制度の現状
    • 学校制度における人権教育に影響を与える可能性のある歴史的・文化的背景
    • 初等・中等学校制度で進められている人権教育のとりくみ(存在する場合)
    • 人権教育のための国連10年(1995年~2004年)の枠内で行なわれたとりくみの成果および欠点ならびにその過程で直面した障壁
    • 学校制度における人権教育への、政府機関、国内人権機関、大学、研究機関およびNGOといったさまざまな主体による関与
    • 国および国際地域のレベルで行なわれている優れた人権教育実践
    • 国内で行なわれている可能性がある同様のタイプの教育(持続可能な開発のための教育、平和教育、グローバル教育、多文化教育、市民性教育および価値教育)の役割
  • 添付文書に記載された参考にもとづき、どのような人権教育の措置および要素がすでに存在するかを確定する。分析のための他の要素としては、国際連合の条約機関に対する国別報告書、および、人権教育の国連10年の枠組みの中で国内的・国際的レベルで作成された報告書が挙げられる。
  • 学校制度における人権教育の有利な点、不利な点、機会および制約を分析・確定することにより、鍵となる特徴および分野を特定する。
  • 人権教育の存在および実施の状況についての結論を導き出す。
  • 有利な点および得られた教訓にもとづいてどのようにとりくみを進めていけるか、またさまざまな機会をどのように活用できるかについて検討する。
  • 不利な点および制約に対応するために必要な改善点および措置を検討する。
 結果
  • 初等・中等学校制度における人権教育についての国家的研究を実施する。
  • 学校制度における人権教育のための国内実施戦略の方向性を定めるための出版物、会議または公開討論等を通じ、研究の結果を広く普及する。
第2段階:優先課題の設定および国内実施戦略の策定

 行動
  • 対応すべき問題:「私たちはどこに、どのようにしてたどり着きたいのか?」
  • ミッション・ステートメント、すなわち学校制度における人権教育の実施の基本目標を定める。
  • 添付文書を参考にしながら具体的目的を確定する。
  • 国家的研究の知見をもとに優先課題を定める。優先順位の課題においては、もっとも切迫しているニーズおよび(または)利用可能な機会を考慮に入れることが考えられる。
  • 成果につながりうる可能性がある問題に焦点を当てる。「実際のところ、私たちには何ができるか?」
  • 特別に実施する諸活動に対し、持続可能な変革を確保しうるような措置を優先する。
  • 次のそれぞれの要素を特定することにより、国内実施戦略の方向性を定め、かつ具体的目的を利用可能な資源と連携させる。
    • 投入:利用可能な資源(人的資源、財源、時間)の配分
    • 活動(作業課題、担当、期限および達成目標)
    • 結果:具体的結果(たとえば新法、研究、能力構築セミナー、教材、教科書改訂等)
    • 成果:達成された結果
 結果
  具体的目的と優先課題を特定し、かつ2005年~2007年の実施活動の予定を少なくともいくつかは掲げた、初等・中等学校制度における人権教育のための国内実施戦略。

第3段階:実施および監視・評価

 行動
  • 目的を達成するという考え方を基本とするべきである。
  • 国内実施戦略を普及させる。
  • 国内実施戦略で計画されている活動の実施を開始する。
  • 定められた達成目標を活用しながら実施状況を監視・評価する。
 結果
  国内実施戦略の優先課題に応じて、結果は、たとえば法律、国内実施戦略の調整機構、教科書・教材の新規作成または改訂、研修コース、参加型の教育・学習の方法論、学校共同体のすべての構成員を保護する差別の禁止方針等の形態をとりうる。

第4段階:評価

 行動
  • 対応すべき問題:「私たちはそこにたどり着いたのか、どの程度上手に?」
  • 説明責任を果たすための手法、教訓を得るための手段、および次の段階に向けて考えられる諸活動を向上させるための手段として評価を行なう。
  • 実施状況を振り返るために、自己評価とともに外部の独立した評価も活用する。
  • 定められた目的の達成状況をチェックし、実施の過程を検討する。
  • 獲得された成果を認知し、広め、かつ喜び合う。
 結果
  • 初等・中等学校制度における人権教育のための国内実施戦略の成果に関する、国としての報告書
  • 実施過程全体を通じて得られた教訓にもとづく、今後の行動のための勧告
 C. 最低限の行動

27.加盟国は、世界プログラムの第1段階(2005年~2007年)中に、最低限、次の行動をとるよう奨励される。
(a)学校制度における人権教育の現状分析(第1段階)
(b)優先課題の設定および国内実施戦略の策定(第2段階)
(c)計画されている活動の実施の開始

 D. 主体

28. 本行動計画の実施に関する主たる責任は教育省にあり、教育省は、次のような関心事を扱っている関連の機関を通じてその責任を果たすことが求められる。
(a)教育政策
(b)プログラムの計画
(c)カリキュラムの開発
(d)教授・学習教材の開発
(e)教職員の養成・着任前研修および現職者研修
(f)教授・学習の方法論
(g)包括的な教育
(h)広域行政圏/州/地方行政
(i)調査研究
(j)情報の普及

29. 本行動計画実施のためにはその他の諸機関の緊密な協力が必要であり、とくに次のような機関が挙げられる。
(a)教員養成大学および総合大学の教育学部
(b)教職員組合、職能団体および資格認定機関
(c)国、連邦、地方および州の立法機関(教育、開発および人権に関わる議会委員会を含む)
(d)オンブズマンおよび人権委員会のような国内人権機関
(e)ユネスコ国内委員会
(f)たとえば国際連合児童基金(ユニセフ)国内委員会その他の地域団体のような、国/地域のグループ/団体
(g)国際的非政府組織の国内支部
(h)親の団体
(i)学生団体
(j)教育研究機関
(k)国および地域の人権資源・研修センター

30. また、これ以外にも次のような関係者の支援が必要である。
(a)関連するその他の省庁(福祉・労働・司法・女性・青年)
(b)青年団体
(c)メディアの代表
(d)宗教団体
(e)文化的・社会的指導者ならびに地域共同体の指導者
(f)先住民族およびマイノリティ・グループ
(g)産業界

 E. 財政

31. 第2部で述べたように、国の教育制度において人権教育を進めることは教育制度の実効性を向上させる役にも立ちうる。人権教育は教育改革を支える指針となる諸原則を提示し、かつ、世界中の教育制度が現在直面している課題に対応する一助となるのである。そのような課題としては、教育に対するアクセスおよび教育における機会均等、社会的包括および結合に対する教育の寄与、教職員の役割および地位、児童生徒・社会にとっての教育の意味、児童生徒の成績の向上および教育の管理運営などがある。

32. このことを念頭に置けば、人権教育のための財源は、国の教育制度全般に配分される資源の枠組みの中でも、とくに次のような措置をとることによって用意することが可能である。
(a)本計画を実施するため、質の高い教育に対してすでに配分が予定されている国内資金を最適な形で活用すること。
(b)本計画に掲げられた行動にもとづいて外部資金および配分実務の調整を図ること。
(c)公的部門と民間部門との間で目的が明確なパートナーシップを構築すること。


IV. 行動計画の実施の調整



 A. 国レベル

33. 本行動計画を実施する主たる責任は各国の教育省が担わなければならない。教育省は、国内実施戦略の立案、実施および監視・評価の調整を担当する関連の部局を指定または強化するべきである。

34. 調整担当部局は、教育省内の関連部局、他の省庁および関係する国内の主体(前掲第3部、パラグラフ28-30参照)の参加を得ながら国内実施戦略の立案、実施および監視・評価を進める。これとの関連で、これらの主体による人権教育連合の設置を促進することも考えられる。

35. 調整部局は、この分野における国内の進展についての最新のかつ詳細な情報を国際連合諸機関調整委員会(後掲パラグラフ38参照)に提供するよう求められる。

36. 調整部局はさらに、国際連合の条約機関に提出される国別報告書の作成を担当する関連の国内機関とも緊密に協力し、これらの報告書に人権教育の進展が記載されるようにする。

37. 加盟国はまた、国レベルで、人権教育に関するとりくみおよび情報(さまざまな背景および国々で進められているすばらしい実践、教材、行事)を収集・普及する資料センターを指定および支援することも奨励されるところである。

 B. 国際的レベル

38. 人権高等弁務官事務所、ユネスコ、ユニセフ、国連開発プログラム(UNDP)その他の関連の国際機関(世界銀行を含む)から構成される国連諸機関調整委員会を設置し、本行動計画にもとづく活動の国際的調整を担当させる。調整委員会の事務局体制は人権高等弁務官事務所が整える。

39. 調整委員会は定期的に会合を持ち、本行動計画の実施のフォローアップ、資源の動員および国レベルでの行動の支援を行なう。これとの関係で、調整委員会は、国際連合の条約機関の委員、教育への権利に関する特別報告者等の他の関連の国際的・地域的機関、専門家および主体を随時その会合に招待することができる。

40. 調整委員会は、本行動計画がフォローアップされ、国内実施戦略を国連組織全体が支えるようにするため、国連の各国駐在チームまたは国際機関の国内代表との連携を担当する。これは、国内人権保護組織を支援するための国連の行動を国レベルで調整するよう求めた事務総長の改革プログラム(A/57/387 and Corr.1, action 2)に沿った対応である。

41. 国連の条約機関は、締約国の報告書を審査するさい、学校制度において人権教育を実施する締約国の義務に重点を置き、かつその重点を総括所見に反映するよう求められる。

42. さらに、人権委員会のあらゆる関連のテーマ別および国別機構(たとえば特別報告者および特別代表、とくに教育への権利に関する特別報告者、ならびに作業部会)は、その委任事項に関連するかぎりにおいて、学校制度における人権教育の進展に関わる情報をその報告書に体系的に記載するよう求められる。

43. 調整委員会は、本行動計画の実施状況をより効果的に監視・評価するため、地域的および準地域的機関・組織の援助を求めることを検討してもよい。


V. 国際的な協力および支援



44. 本行動計画の実施に向けた国際的な協力および支援は次の諸機関によって提供される。
(a)国連組織
(b)その他の国際的政府間機関
(c)地域的政府間機関
(d)教育大臣の地域的機関
(e)教育大臣の国際的・地域的フォーラム
(f)国際的・地域的非政府組織
(g)地域的人権資源・資料センター
(h)国際的・地域的金融機関(世界銀行、地域開発銀行等)ならびに二国間資金提供機関

45. 資源を最大化し、重複を避け、かつ本行動計画の実施の首尾一貫性を確保するため、これらの主体がおたがいに緊密に連携することが必要不可欠である。

46. 国際的な協力および支援の目的は、本行動計画の第3部で取り上げた国内実施戦略の枠組みの中で、初等・中等学校制度における人権教育のための国内および地域の能力を強化することにある。

47. 上述の諸機関は、とくに次のような行動を検討することが考えられる。
(a)国内実施戦略の策定、実施および監視・評価(関連の専門的手段の開発を含む)について教育省を支援すること。
(b)関係する他の国内の主体、とくに全国的および地域的非政府組織、職能団体その他の市民社会組織に対して支援を提供すること。
(c)優れた実践ならびに利用可能な資料、制度およびプログラムについての情報を、伝統的および電子的手段を通じて特定、収集および普及することにより、国、国際地域および国際社会の各レベルでの関係者間の情報共有を促進すること。
(d)すでに存在する人権教育関係者のネットワークを支援するとともに、国、国際地域および国際社会の各レベルでの新たなネットワークづくりを促進すること。
(e)教職員、教職員の養成・研修担当者、教育行政官およびNGO従事者を対象とした効果的な人権研修(参加型の教授・学習の方法論についての研修を含む)を支援すること。
(f)国レベルで進められる学校における人権教育の実施に関する調査研究(その向上のための実際的措置に関する研究を含む)を支援すること。

48. 本行動計画の実施を支える資源を動員するため、国際的および地域的金融機関ならびに二国間資金提供機関は、教育に関するそれぞれの資金提供プログラムを本行動計画および人権教育一般と連携させる方法を模索するよう求められる。


VI. 評価



49. 世界プログラムの第1段階(2005年~2007年)の終了時、各国は、本行動計画にもとづいて実施された行動の評価を行なう。評価にあたっては、法的枠組みおよび政策、カリキュラム、教授・学習の過程および手段、教科書の改訂、教職員の養成・研修、学校環境の改善等、多くの分野で達成された進展を考慮に入れるものとする。加盟国は、国連諸機関調整委員会に対し、最終的な国別評価報告書を提出するよう求められる。

50. この目的のため、国際的および地域的諸機関は、評価のための国内的能力の構築または強化のための援助を提供する。

51. 諸機関調整委員会は、関連の国際機関、地域機関および非政府組織と協力しながら、国別評価報告書にもとづいて最終評価報告書を作成する。同報告書は総会第63会期に提出される。

(翻訳:部落解放・人権研究所、アジア・太平洋人権情報センター 翻訳協力:森実)

Endnote:

1. 本節は、人権教育のための国連10年(1995年~2004年)のために策定される人権教育のための国内行動計画に関する指針(A/52/469/Add.1 and Add.1/Corr.1)をもとにしている。

2. 教育の目的に関する子どもの権利委員会の一般的意見1号(2001年)によれば、ライフスキルとは、「充分にバランスのとれた決定を行ない、紛争を非暴力的に解決し、健全なライフスタイル、良好な社交関係および責任感を発達させる能力であり、批判的に考える方法であり、創造的な才能であり、かつ、人生の選択肢を追求するために必要な手段を子どもに与えるその他の能力などのことである」(パラグラフ9)。

3. UNESCO, Education for Sustainability. From Rio to Johannesburg: lessons learned from a decade of commitment (Paris, 2002), p.11.

4. パラグラフ8。委員会は、一般的意見のパラグラフ12で、「知識を蓄積することに主たる焦点を当て、競争を煽り、かつ子どもへの過度な負担につながるようなタイプの教育は、子どもがその能力および才能の可能性を最大限にかつ調和のとれた形で発達させることを深刻に阻害する可能性があることが、強調されなければならない」とも強調している。

5. 「学校生活への子どもの参加、学校共同体および生徒会の創設、ピア・エデュケーションおよびピア・カウンセリング、ならびに学校懲戒手続への子どもの関与が、権利の実現を学習および経験するプロセスの一環として促進されなければならない」(一般的意見1号(2001年)、パラ8)。

To the page top