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2025年のUN80(国連80周年)の機会を捉え、国連では国連機関の再編を含む国連改革の議論が進んでいます。国連憲章にも多国間主義にも公然と背を向ける超大国が現れるなかで、国連そのものが創設以来の危機に陥っており、21世紀にどのように国連憲章に規定されている使命を追求し、国連の3つの柱、すなわち「平和と安全保障」「人権」「開発」に貢献していけるかどうかの瀬戸際に立たされていることが背景にあります。
2025年7月に国連総会で採択された決議79/318号では「UN80イニシャティブ」が打ち出されました。そこで強調されているのは「活動の重複や断片化の解消」「一貫性の強化」「効率化」「説明責任の強化」であり、さらに「デジタル技術の活用を通じたデータに基づく課題対応」が挙げられています。
「UN80イニシャティブ」を具現化することを目的として「①事務局の効率化」「②マンデート(加盟国の決定に基づく任務)履行の見直し」、そして「③構造とプログラムの再構成」の3つの作業が進行中ですが、2025年9月に発表された③に関する事務総長報告
「パラダイムを変える:団結して成果を出す(Shifting Paradigms: United to Deliver)」では、主要分野として「平和と安全保障」「新たな人道コンパクト」
「持続可能な開発」と並び、「人権」が挙げられ、それぞれに関し「課題」「目標」「行動」の3分野に分けて方向性が示されています。
人権に関する「課題」としては以下の点が挙げられています。
それらを踏まえ、「目標」として掲げられているのが 「未来への協定」の「行動46」で決定された「人権分野で活動している国連機関の調整と協力を向上させ、活動の重複を避ける」ことであり、そして「行動」で示されているのが、人権高等弁務官を座長として国連システム全体により構成される「国連人権グループ(UN Human Rights Group)」の設置です。「国連人権グループ」の調整はOHCHR(国連人権高等弁務官事務所)のニューヨーク事務所が担う予定になっています。
「国連人権グループ」設置の背景にあるのは、開発(11)、平和と安全保障(7)、人道支援(5)の各分野には、それぞれ括弧内で示した数の国連各機関のトップによる調整の場が存在するにもかかわらず、人権にはそれが存在しないという懸念すべき状況です。人権分野の活動に対する予算は国連の全予算の3%にすぎないという状況もありました。
「国連人権グループ」の設置とあわせ、人権保障の観点から注視が必要と思われるのは、UN Women(国連女性機関)とUNFPA(国連人口基金)の統合提案です。これについては、ジェンダー平等/女性の人権実現を統合的に扱うUN Womenと、性と生殖に関する健康/権利や人口課題を担うUNFPAには異なる専門性と役割があるので両機関の統合を効率化の観点から検討するべきではなく、統合はSDGs目標5(ジェンダー平等の実現)の推進体制を弱体化させることにつながるとして多くの加盟国や世界の女性団体から懸念が示されています。日本でも(一社)SDGs市民社会ネットワークのジェンダーユニットが国連改革におけるジェンダー平等の強化に関する提言への賛同署名を取りまとめ、外務省に提出しました。ヒューライツ大阪も賛同団体に加わりました。
国連はこれまで何度も自らの改革を打ち出してきました。そのことを振り返るなら、「UN80イニシャティブ」が目指している「活動の重複や断片化の解消」「一貫性の強化」「効率化」「説明責任の強化」は決して新しいテーマではありません。それらが想定された成果を上げてきたとは言えないなかで、現下の創設以来の危機が発生しているとも言えます。
21世紀に信頼に値し成果を出せる組織として再活性化ができるのか、国連はかつてない重要な岐路に立たされています。国際社会が育んできた国際人権基準が一層の保障に向けて歩み続けることができるかどうかを左右する問題でもあります。
<参考>