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国際人権ひろば No.187(2026年05月発行号)

人として♥人とともに

アフガニスタンの女性と少女の今

三輪 敦子(みわ あつこ)
ヒューライツ大阪所長

 ウクライナ(2022年2月)、ガザ(2023年10月)、イラン(2026年2月)と武力紛争が次々に発生し、日々、命の危険にさらされながら多くの人たちが生活する状況が各地で続いています。同時に、新たな武力紛争の影に隠れ、紛争状態が続いているにもかかわらず、私たちの関心が薄れている場所が世界には存在します。そのこと自体が不正義以外のなにものでもありませんが、そうした状況で女性と少女が被っている過酷な影響は、さらに見過ごされがちです。

 どの場所で発生するものであれ、個人がさらされる攻撃や暴力に軽重はつけられないとしても、新たに発生する紛争に世界の関心が移るなかで、女性と少女が 「ジェンダー・アパルトヘイト」とも呼ばれる人権侵害を経験しているにもかかわらず、世界の目が十分に向けられていない場所として、今回のコラムではアフガニスタンを取り上げます。

 アフガニスタンでは、2021年8月にタリバンが権力を掌握しました。タリバンが首都カブールを制圧したことを受け、滑走路に多くの人が集まり国外に脱出しようとした映像を憶えている方もいらっしゃると思います。現在も多くの国はタリバン政権をアフガニスタンを代表する政府と認めていません。

 タリバンは、政権復帰直後は、女性の権利を尊重すると表明し、国際社会も希望をつなぎました。しかし、5年近くが過ぎようとしている現在、アフガニスタンの女性と少女の人権状況は苛烈を極めています。

 アフガニスタンは現在、中等教育以上の教育を女性に禁じている世界で唯一の国であり、6年間の初等教育以降、女性は一切の教育の機会を奪われます。このような状況に対し、ユネスコは、暫定政権からの圧力を受けつつ、日本ではLINEにあたるWhatsAppというアプリを使って利用できるオンライン教育プラットフォームを支援しています。2025年8月の声明で、ユネスコのアズレ事務局長(当時)は、「アフガン女性の教育に対する権利を完全に無条件で回復させるために国際社会が力をあわせることが必要」と強調しました。

 また、ほとんどの職場、そして公園といった公共の空間からも女性は閉め出されており、家を出ることすらままならないほど移動の自由も制限されています。公共の場で活躍する女性の姿はテレビにも公的なイベントにも見当たりません。新たに出された布告では、DVや性的暴力の被害女性が被害を訴える際には男性の後見人が同行する必要があり、また夫の許可なく親戚の家を訪ねた女性は訪問先の親戚とともに刑務所に送られます。

 医療機関を受診しようとしても、女性であることを理由に断られる場合もあります。妊産婦死亡が5割増加するとの見通しもあるなど妊婦の健康が懸念されていますが、児童婚により10代で出産する女性の健康リスクはさらに深刻です。

 タリバンが政権に復帰する直前の時点では国民議会議員の28%は女性でしたが、タリバンが政権に復帰した時点で事実上、国民議会は解散し、女性議員は姿を消しました。当時の女性国会議員の多くは国外に亡命し、亡命先のギリシャやカナダで、アフガニスタンに帰国する日を待ち望みながら、国際刑事裁判所(ICC)に訴えることを含め活動を続けています。2026年3月に欧州議会の人権小委員会に招かれた亡命女性国会議員は、現状を「女性をめぐる戦争」と表現し、女性の存在を消すためにタリバンは政権に復帰したのであり、それは文化などではなく犯罪として扱われるべき問題だと語っています。

 タリバンが政権に復帰して4年になるのを前に、2025年8月、UN Womenのアフガニスタン事務所長は、「もしアフガニスタンの女性と少女への抑圧を国際社会が許せば、どこであっても女性と少女の権利を否定しても構わないというメッセージを世界に送ることになり、それは限りなく危険な前例になる」と訴えました。

 アフガニスタンを「危険な前例」としないためには、アフガニスタンの女性と少女の現状を国際人権基準が踏みにじられた状態と理解し、女性と少女、そして多様な民族の人権が保障される、自由で公正な選挙を経た正当性ある政府が築かれるよう国際社会が働きかける必要がありますし、日本政府の貢献にも期待します。アフガニスタンに戻り女性と少女の人権に尽力する日のために活動している亡命女性国会議員の粘り強い強靭さに心から敬意を表するとともに、彼女たちのことを忘れないこと、連帯する意思を示し続けることは、あらゆる場所の女性と少女の人権と深くつながっていると感じています。



<参考資料>