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国際人権ひろば No.144(2019年03月発行号)

人として♥人とともに

「国内人権機関」再考

三輪 敦子(みわ あつこ)
ヒューライツ大阪所長

 2018年を通じ、ヒューライツ大阪は、世界人権宣言70周年を記念して様々な事業をおこないました。その最後のイベントとして、2018年12月に、世界人権宣言大阪連絡会議と共に開催したのが「世界人権宣言70周年記念大阪集会」です。集会では、「国際人権基準の進歩・成果・課題と日本」というテーマで国連女性差別撤廃委員会委員(当時)の林陽子さんに基調講演をお願いしました。

 林陽子さんからは、世界人権宣言80周年に向けての課題も提起いただきました。林さんが、「人権の基盤(インフラ)の未整備」として指摘された問題の一つが「国内人権機関の未設置」です。国内人権機関は、日本では、過去に2度ほど設置に向けた機運が盛り上がった後、すっかり議論が下火になった感があります。今回は、この国内人権機関という、ちょっと硬い名前をもった組織について、改めて考えてみたいと思います。

 国内人権機関は、正式には「人権の伸長と保護のための国内機関(national institutions for the promotion and protection of human rights)」と呼ばれる組織です。国連加盟各国が議論を重ね、1993年に採択されたパリ原則(国内人権機関の地位に関する原則)に則って各国が設置します。パリ原則は、国内人権機関の任務を以下のように規定しています。

 

① 国内法や規程が国際人権基準に則ったものになるよう政府に助言
② 国内における人権侵害に関する状況の調査と改善点の勧告
③ 国際人権条約の実施に関する政府への助言と支援
④ 人権教育や啓発の推進
⑤ 人権侵害に関する個人からの申立の調査と平和的解決の模索

 

 また、国内人権機関がその任務を遂行するために、組織には以下のような要件が求められます。

 

① 法律に規定された明確な任務および権限
② 独立した地位
③ 人事・財政に関する独立性と自律性

 

 国際人権基準が各国で確実に実施され、個人の人権を各国政府が適切に保障することを促進するために、国内人権機関が果たす役割は大きいと言えるでしょう。

 国内人権機関がパリ原則に則って設立され、適切に活動しているかどうかを確認するために「国内人権機関世界連合(Global Alliance of National Human Rights Institutions: GANHRI)」という組織があり、国連人権高等弁務官事務所が事務局を務めています。前身である国内人権機関国際調整委員会(International Coordinating Committee of National Human Rights Institutions: ICC)同様、国内人権機関がパリ原則に則った組織であるかどうかを評価し、三段階でランク付けし、公表しています。

 2018年12月の時点で、世界の122カ国で国内人権機関が設置されています。そのうち、A認定(完全にパリ原則を遵守)を受けているのは79機関、B認定(部分的にパリ原則を遵守)を受けているのは33機関、C認定

(パリ原則に不適合)を受けているのは10機関です。アジア太平洋地域の国内人権機関でA認定を受けているのは、以下の16の国と地域にある国内人権機関です。

 

アフガニスタン、オーストラリア、インド、インドネシア、ヨルダン、マレーシア、モンゴル、ネパール、ニュージーランド、フィリピン、カタール、韓国、サモア、スリランカ、パレスチナ、東チモール

 

 ちなみにアジア太平洋地域では、B認定には7つ、C認定には2つの国と地域の国内人権機関が存在します。

 国内人権機関世界連合は、毎年、会合を開いていて、そうした場が、各国の国内人権機関がお互いの経験から学び、自国における国際人権基準の浸透を促す貴重な機会になっていることがうかがえます。そのことにより、子どもへの虐待や暴力、女性・在日外国人・被差別部落出身者・障害者などへの、複合差別を含む差別や不平等を始め、よりよい保障と救済に向かう人権があります。

 国連自由権規約委員会は、1998年の政府報告書審査以来、一貫して日本に国内人権機関の設置を勧告してきています。また、2017年におこなわれた国連人権理事会の普遍的定期審査では、日本政府は国内人権機関の設置に関する勧告を検討するとしています。各国の努力と経験に学び、日本に国際基準の人権意識と制度が根付くために、国内人権機関の設置に向けた検討が真剣におこなわれることに期待したいと思います。


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