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国際人権ひろば No.74(2007年07月発行号)

NEWS IN BRIEF

■ 1年目を終えた国連人権理事会


  国連人権理事会は07年6月11日から18日開催の第5会期において、理事会の運営方法、人権委員会の特別報告者などの特別手続や、「国連各加盟国の人権状況を定期的に審議」する手続(UPR)について合意し、1年目の作業を終了した。
  06年3月の国連総会は、人権委員会を廃止して人権理事会を設立する決議を採択した。その決議では、人権理事会は総会の下部機関として設立され、総会の過半数による多数決で選出された47カ国で構成、会期は定期的に年3回以上、全体で10週間以上開催されることが合意された。同理事会は同年6月に第1会期を開催し、07年6月の会期で5回の通常会期と4回の特別会期を開催したことになる。特別会期は、理事会が緊急事態に早急に対応できるよう、メンバーの3分の1以上の支持で開催することができ、7月の第1回と11月の第3回はパレスチナ、8月の第2回はレバノン、11月の第4回はスーダンのダルフールのそれぞれの人権状況がとりあげられ、調査団の派遣などが決議されている。
  また、06年の総会決議は、これまでの人権委員会の下の特別報告者などの特別手続について、理事会の第1会期から1年以内に必要に応じて改善と合理化に向けた見直しを行うとしており、理事会はUPRや運営のルールなどとともに、政府間作業部会を設置し、これらについて議論を続けていたが、なかなか合意が得られず、各部会で出された意見をもとに議長が作成した文書がようやく最終日の夜中に合意され、コンセンサスによる採択に至った。

UPR


  新しい人権理事会の目玉となる、UPRについて、原則や方法などが合意された。審査は、国連憲章、世界人権宣言、対象国が締約国である人権諸条約、人権理事会のメンバーに立候補した際の「公約」に加えて、適用され得る国際人道法に基づいて行われる。UPRは、他の人権メカニズムを補完するものであり、重複してはならないとされた。また、NGOを含むステークホルダーの参加も原則にあげられている。
  審査はまず理事会のメンバーから、特に任期が1年および2年の国から行われる。日本は現在、任期が2年のメンバーである。審査は4年ごとに行われるように1年に48カ国の審査を行う。審査は理事会のメンバーから構成される作業部会で行われ、対象となった国の人権状況の評価、勧告や結論、技術援助、対象国の自発的なコミットメントを含む報告を対象国との協議の上で採択し、その成果は理事会の全体会議で採択される。また、UPRを理事会の独立した議題とすることも合意された。

特別手続


  特別報告者などの特別手続については、特定国を対象とする国別報告者の廃止を求める国、特別報告者などの行動規範を求める国など、特別手続の縮小、制限につながり得る議論が出されていたが、最終的にベラルーシとキューバの特別報告者をのぞいて、国別、テーマ別の手続が継続されることで合意された。
  一方、特別報告者などの人選について、人権委員会のもとでは、特別報告者などは人権委員会の委員長が、事務総長の特別代表は人権高等弁務官の助言をもとに国連事務総長が任命していたが、新たに、前もって作成された候補者リストから理事会の議長が提案し、理事会が任命することが合意された。人権高等弁務官事務所が政府、地域、国際機関やNGOなどが推薦する候補者のリストを作成し、理事会の地域グループから任命されるメンバーによって構成される協議グループが、そのリストからその特別手続に適した専門性、経験を有する候補者を議長に提案し、議長がさらにその中から適切な候補者を選び、理事会に諮ることになる。
  一方、アフリカ・グループの提案に基づく特別報告者などの独立性、公平性を強調した行動規範に関する決議が、あわせて採択された。

人権小委員会を廃止、諮問委員会を創設


  人権委員会の下部組織であった、人権保護促進小委員会(人権小委員会)は理事会の第1会期で最終会期を開催することが決定され、代わって人権理事会のシンク・タンクの役割を努める人権理事会諮問委員会の設置が決まった。諮問委員会は国連加盟国が推薦する候補者の中から、理事会が選出する個人の資格による専門家18人によって構成される。諮問委員会の任務と利益の対立が起こり得る、政府、または他の組織、団体の意思決定を行う地位にいる者は委員になることはできない。
  諮問委員会は、理事会の要請を受け、調査・研究を行い、決議や決定を採択することはできない。諮問委員会は、その任務を行うにあたり、国家、国内人権機関やNGOなどと対話することが求められ、これら機関、団体などは同委員会の作業に参加することができる。
  諮問委員会は、理事会の許可なしに下部機関を設置することはできないが、小委員会の下に設置されていた、先住民族に関するなどの作業部会や社会フォーラムの作業を続けるための適切なメカニズムについて、理事会の第6会期において決められることとなった。

  そのほか、重大で継続的な人権侵害を取りあげる1503手続に代わる手続や、会期の議題を含む理事会の運営に関するルールなどが合意に含まれている。
  6月19日、各国政府代表は、文書の採択を歓迎する発言を行ったが、合意が妥協であることを強調する代表も多く、特に、議題にパレスチナの人権状況が含まれたことについて、批判する国もあった。潘国連事務総長も20日、理事会の合意を歓迎する一方、特定の地域が常設の議題にあげられていることに失望感を表明している。

参照:国連人権高等弁務官事務所 人権理事会第5会期