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国際人権ひろば No.67(2006年05月発行号)

特集 米国における人身売買と性的虐待に対する取り組み Part3

「行方不明および搾取された子どもの全米センター」搾取された子どもユニットの活動

クリスティナ・フェルナンデズ (Christina Fernandez)
「全米センター」搾取された子どもユニット・スーパーバイザー
ジェニファー・リー (Jennifer Lee)
同、子ども被害者身元特定プログラム・マネージャー

  インターネットの到来は通信・交流の新しい道を世界中の消費者に提供している。そのなかには、子どもを狙う性的搾取者も含まれている。「行方不明および搾取された子どもの全米センター(NCMEC)」は1997年、「搾取された子どもユニット(ECU)」を設置し、オンラインの性的搾取の高まる脅威に対して立ち上がったのである。以来、ECUは一般市民、保護者および法執行のための子どもの性的搾取に関する資料センターとして活動してきた。

■ サイバー・ティップライン


  1990年代後半、インターネットの利用が爆発的に広がり、コンピューターが米国の各家庭に定着するようになると、インターネットの陰の部分も大いに明らかになってきた。子どもを狙う人々はインターネットを自分たちの目的に合わせてねじ曲げて使うことができることにすぐに気づき、間もなく、子どもポルノの商業サイトや子どもポルノを取り引きするニュースグループが容易にアクセスできるようになった。性的加害者がチャット・ルームやインスタント・メッセージを通して犠牲者を誘いだしはじめ、「オンライン・プレデター(捕食者)」という用語がアメリカの辞書に現れた。推定3,000万人以上の子どもがインターネットにアクセスしていることを考えると[1]、新しい潜在的犠牲者のプールができたことを意味する。オンラインで起こる子どもの性的搾取を報告する中心的機関がないことも問題となった。
  この差し迫った必要に対して、1998年、議会の任命を受けて、サイバー・ティップラインの取り組みが開始された。「インターネット911」として知られるこのサイトには、被害者や、あるいは容疑者の居場所、虐待の種類や程度にかかわらず、どのような子どもの性的搾取でも通知することができる[2]。サイト[3]にある通知用紙で、誰でもオンラインの子どもポルノ、子どもに対する性的行為の勧誘、子ども買春、子ども買春ツアー、家族外で起こる子どもへの性的いたずら、要請がないのに子どもに送られるわいせつ物、誤解を招くドメイン名などを通知することができる。
  1999年、電子サービス・プロバイダー(ESP)に、自己のサーバーで見つかった子どもポルノをサイバー・ティップラインに通知しなければならないとする連邦法が制定された[4]。米国内にあるESPの数があまりに多いため、ECUは常勤のESPコーディネーターをおいて、ESPを登録し、技術サポートを提供するが、ESPの登録過程の中でコーディネーターはそれぞれのESPと緊急連絡先を確保する。この情報は法執行にとって緊急にESPの代表と連絡しなければならない場合、非常に役立っている。
  一旦サイバー・ティップラインが通知を受け取ると、ECUの分析員はそれを慎重に調査する。通知されたウェブサイトまたはニュースグループを訪れ、文書にしたり、通知した人に接触をとり、追加情報をとることから容疑者に関してEメールや一般データベースを検索するなど行う。ECU分析員はインターネット上にある多様なプログラムやアプリケーションに関わる通知を処理できるよう厳しいトレーニングを受けている。分析員がその侵害がどの管轄にあるか確認すると、適切な法執行機関に通知され、さらに捜査が行われる。ECUは米国司法省少年司法および非行防止局から資金を得ている「子どもに対するインターネット犯罪タスクフォース」とパートナーシップを組み、その他、NCMECに連邦捜査局(FBI)、入国管理関税局、郵便捜査局の職員がいるという幸運にも恵まれている。捜査の際、連邦機関の連絡員がECU分析員や法執行機関を支援することもある。
  サイバー・ティップライン通知の処理の他、ECU分析員は法執行に対して他のさまざまな技術支援を行っている。例えば、特定の容疑者やスクリーン名に関してサイバー・ティップライン上で過去に遡って調査を行ったり、特殊なEメール検索を行ったり、子どもの性的搾取を捜査する他の法執行官に紹介するなどの例がある。また法執行機関も特定の容疑者に対し捜査を開始する前にECUに連絡し、貴重な時間と資源を無駄にしないよう他の機関が既に捜査をはじめていないか確認することもある。
  サイバー・ティップラインの通知の数は開始以来、毎年着実に増え続けている。2004年に受理した件数は前年よりも39%増加した。2005年7月前半時点で週約1,000件から3,000件の通知を受け取っている。サイバー・ティップラインの非常に優秀で熱心な職員によって、搾取者の居場所が特定され、法執行機関に連絡されるが、この通知がなければ、その搾取者は誰にも知られないまま、自由に子どもを搾取し続けたであろう。

■ 被害者身元特定プログラム


  2002年までサイバー・ティップラインがECUの活動の中心であった。しかし、その年のある判決以降[5]、コンピューター上でつくられ、およびコンピューター上で操作された子どもの性的虐待の画像は、画像の制作に子どもが利用されていなければ違法な子どもポルノではないとされた。裁判所はそのような画像は実際の被害者、「本当の」子どもがいないので犯罪ではないと判断した。
  今日、被疑者は押収された子どもポルノが「バーチャル」または「モーフ」であると主張し、裁判所は検察に子どもの実際の身元を立証するよう指示することが多くなっている。子どもポルノの子どもの身元を特定することは非常に困難または不可能でさえあるので、この要件により何千件もの起訴が先に進めなくなるのである。検察はNCMECの「子ども被害者身元特定プログラム(CVIP)」の助けを求めるようになった。
  このため、NCMECは2002年の秋、CVIPと「子ども認識特定システム(CRIS)」をつくった。このシステムを使ってCVIPの分析員は連邦法執行機関と協力して検察が加害者を起訴し、より重い処罰を求刑できるよう支援している。分析員はまた子どもポルノ制作者や利用者により被害を受けた多くの子どもや、また無惨な画像を販売、取引や頒布する個人の身元を特定しようとしている。
  CRISは過去の捜査で法執行により身元の特定された子どもの被害者を含む画像ファイルをスキャンして選び出すようCVIPが開発したコンピューター・プログラムである。連邦および地方法執行機関や検察は押収された禁制品をNCMECに派遣されている連邦法執行職員に提出し、特定された子どもの調査を要請することができる。CRISによる調査に加えて、CVIP分析員がすべてのファイル、画像およびビデオに目を通し、徹底した報告が出せるようにしている。
  2005年7月1日現在、CVIPは法執行機関から3,000件以上の画像の調査要請を受け、これらの機関に身元特定された子どもの情報を提供してきた。これらの報告は子どもの被害者に関する具体的な情報を含まないが、その被害者の存在を検証し、証言することができる法執行機関の連絡先をあげている。さらに2005年7月1日現在、NCMECは子どもの性的搾取画像で取りあげられた子どもを400人以上確認し、200万以上の画像をCRISで処理してきた。CVIP分析員は30分の間に1,000件の画像を調べることができ、公判日程に間に合わせようとする検察にこの処理時間は感謝されている。
  しかし、CVIPの最も重要な機能は虐待されている画像のなかの、身元の特定されない子どもを救出する努力である。これらの子どもはまだ虐待者の手で苦しめられているかも知れず、探し出されなければならない。証拠を調査している間、CVIP分析員は性的虐待の場所の手がかりとなり得るものがあるかどうか身元の特定できない子どもの画像を詳細に調査する。CVIP分析員が手がかりの可能性があるものすべて文書にあげていくと、特定の管轄域が示されることがある。管轄権を有するような地域が発見されると、CVIP分析員は子どもの被害者を捜すようその地域の適切な法執行機関の支援を要請する。開設以来CVIPは12人以上の今まで身元が特定されていなかった被害者の発見に関わってきた。
  CVIPは連邦機関、法執行機関および検察にとって不可欠な資源となってきた。身元の特定できた子どもの数はインターネット上に流通する画像の総数に比べるとほんの僅かでしかないが、分析員は身元特定された画像がネット上に広範に流通し、同じ被害者が複数のコレクションに現れていることを知っている。つまり、少数でも身元特定のできた被害者の写真を有しているということは、CVIPが何千件もの捜査や起訴を支援する能力を支えることになるのである。最も重要なことに、CVIPの分析員たちはその強力な分析力、忍耐力と鋭い目で毎日、まだ知られていない子どもの性的虐待の被害者の身元を特定し、加害者の手からこの子どもたちを助け出そうと努力しているのである[6]

1. More Online, Doing More. Washington, DC: The Pew Internet & American Life Project, 2001, p.2
2. アル・ゴア副大統領, America Links Up Summit, 1997年12月
3. www.cybertipline.com
4. 42U.S.C.A./13032
5. 司法長官v. Free Speech Coalition(Ashcroft v. Free Speech Coalition, 533 U.S. 234 (2002))
6. NCMECとECUについて、さらに詳しく知りたい方は1-800-THE-LOST、あるいはwww.missingkids.comへ。
(訳・岡田仁子)

※「行方不明および搾取された子どもの全米センター」は、1984年に議会の指示により非営利の民間団体として設立され、子どもの誘拐と性的搾取を防止し、行方不明の子どもの捜索、誘拐や性的搾取の被害者、その家族や関係者の支援をすることを目的とする。(詳しくはセンターのホームページ参照)