MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. 国際人権ひろば
  4. 国際人権ひろば No.36(2001年03月発行号)
  5. 反人種主義・差別撤廃世界会議・アジア地域準備会議およびNGOフォーラム報告

国際人権ひろば サイト内検索

 

Powered by Google


国際人権ひろば Archives


国際人権ひろば No.36(2001年03月発行号)

国連ウォッチ

反人種主義・差別撤廃世界会議・アジア地域準備会議およびNGOフォーラム報告

~2001年2月17日~18日(NGOフォーラム)、19日~21日(政府間会議)、イラン・テヘラン~

川本 和弘(かわもと かずひろ)
ヒューライツ大阪

反人種主義・差別撤廃世界会議

 1997年、国連総会は人種主義に反対する世界会議を2001年8月に南アフリカで開催することを決定した。その背景には、「民族浄化」やグローバル化、インターネットによる差別煽動など、新たな様相を見せる人種主義に世界が協力して闘う必要性があるとの認識がある。また、人種主義という概念が狭く限定されないように、正式名は「人種主義、人種差別、外国人排斥、関連する不寛容に反対する世界会議」としている。この世界会議では宣言と行動計画が採択され、その後は加盟国の措置実施状況が定期的にモニタリングされることになる。したがって、この世界会議は単に会議の開催だけで終わるものではなく、その前後のプロセスが重要となる。

テヘランでのプロセス

 世界会議にむけたプロセスとして、2000年5月に第一回世界会議準備会議がもたれ、具体的な議題などが検討された。また、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、アメリカの各地域では、具体的なテーマを地域的特徴に基づいて深めるために、専門家セミナーがすでに開催されている。さらに、地域ごとの準備会議も行われており、今回のイラン・テヘランでのアジア地域会議がその最後となった。

 これらの会議・セミナーは基本的には国連加盟国の政府間会議であるが、手続きを踏めばNGO(非政府組織)にも参加の機会(文書提出、発言、傍聴など)が与えられている。これは国連のここ何年かの世界会議の傾向であり、NGOの参加を推進するメアリー・ロビンソン人権高等弁務官の意向も反映して、この世界会議、および関連する会議にはNGOへの参加資金援助も行われている。

 今回のアジア地域準備会議では、アジアの28の加盟国の代表が出席し、アジア地域の実情に応じた議題を討議し、地域会議の宣言と行動計画が採択された。NGOの側は、この政府間会議の前に二日間にわたるNGOフォーラムを設定した。アジアのNGOが結集し、NGOの宣言と勧告を作成しそれを政府間会議にぶつけるという手順になる。

NGOフォーラム

 地元イランの団体を含む約220人が参加したNGOフォーラムは、6つのテーマ(ジェンダーと人種主義、移住と人身売買、カースト、国内マイノリティ [民族/宗教マイノリティ]、先住民族、グローバル化と人種主義)をグループに分かれて討議するワークショップをメインに進められた。各ワークショップではそれぞれのキーとなる問題を討議し、併せて勧告を含む文書をつくることとした。二日目の全体会でのワークショップ報告では、インド政府の意向を反映したグループが、カースト問題は人種主義の世界会議の議題に含むべきではないと主張し、多くのNGOの反発を受けた。また、議題から離れてのもう一つの議論は、イスラムの慣習でイランの法律にも定められた女性の頭部へのスカーフの着用義務であった。 人権の観点から受け入れ難いという女性参加者と現地イランの団体の女性との意見の対立である。

アジア地域準備会議(政府間会議)

 アジア地域準備会議の参加者は、アジア地域の国連加盟国代表、そしてオブザーバーとして他地域の加盟国、専門機関代表、国連機関、国連人権条約機関、特別報告者、政府間機関、国内人権機関、NGOを含めて全体で約400人となった。

 時間の大半は一般的討議(general debate)に費やされた。しかし、実際は各国政府の代表またはオブザーバーが原稿を読み上げるのみで、それらに対しての反応や討議は傍聴した範囲では全くなかった。一般的討議と並行して、宣言・行動計画のための草案委員会も行われた。NGOの発言機会は第二日目の午後、議場に草案委員会も立ち会って1時間に限定して与えられた。NGOでは場合によっては退場による抗議行動も検討されたが、結局、全体声明文と各テーマごとのワークショップでまとめた文書を使ってのアピールとなった。

 最終日、宣言と行動計画が採択された。会議前に準備されていた草案がほとんどそのまま採択された形となった。 この意味をどう解釈すべきか、分析が必要だろう。また、NGOの声も反映されなかった。政府間会議の終了後、NGO全体では振り返りの集まりがもたれたが、今回のNGOのロビーイングは失敗だったという批判が出た。併せて、NGO調整委員会(コーディネートをする)の働きや透明性、情報不足など、多くの点での批判も出た。調整委員会メンバーはこれらの意見を受けて調整の改善をめざしている。

今後のプロセス

 アジア地域準備会議を終えて、すべての地域会議と専門家セミナーの結果、NGOによる文書などがまとめられ検討されるセッション間会議が3月初旬にジュネーブで行われた。すでに世界会議の宣言と行動計画の草案ができており、本会議まで検討され修正が加えられていく。また、5月には第二回世界会議準備会議が同じくジュネーブで2週間にわたって行われ世界会議の準備の詰めが行われる。アジアのNGOはこの準備会議に影響を与えるべく4月の下旬にNGO会議をネパールで開催する。人種差別の被害者の声をできる限り届け、世界会議までのプロセスをよりよいものにするために。

 日本国内では世界会議に向けた実行委員会が結成されています。テヘランでの会議のより詳しい報告をホームページ(www.hurights.or.jp)で掲載しています。また、アジア地域会議での宣言、行動計画の翻訳も進めています。