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国際人権ひろば No.号外版:「ジュネーヴ・スタディツアー2010」(9月12日~9月18日)の感想文 (2010年11月発行号)

ジュネーブ・スタディ・ツアーに参加して

太平 満恵

ジュネーブには国際機関と緑がいっぱい
 国連欧州本部(パレ・デ・ナシオン)を一通り案内していただいた感想は、とにかく広いということ。壁には寄贈された絵やタペストリーなど数々の美術品があり、展覧会も常に行われているという。場所はアリアナ公園内で、国連の建物の中にも外にも大きな木々がのびのびと育っていた。これほど大きい木は、日本では山奥に行かないとお目にかかれないのではないかと思う。アリアナ公園には国際赤十字も建っている。国連から道路を隔てた丘側にあり、国連の職員がお昼を食べに、その食堂まで行けるほどの近さである。この辺りは本当に国際機関が隣接していて、国連前から続くなだらかな丘の道を10分ほど上がればILO(国際労働機関)があり、さらにもう5分ほど登ればWHO(世界保健機関)がある。とにかく、施設の周りの緑の豊かさに驚いた。こんなに近くに大きくて立派な国際機関があるのに、それぞれの建物の周囲はたくさんの緑に囲まれていて、殺伐とした感じが全くない。
 
ジュネーブから学ぶ国際感覚を磨く方法
 ILOには3週間前からにインターンとして来ている日本の大学院生の女性がいた。彼女は労働環境における女性の賃金差別に関心を持っておられるとのこと。インターン期間は3ヶ月間。今後の活躍が期待される。彼女を始め、日本の女性が国際機関で活躍することは、今の日本の閉塞的な状況にとっての光だと思う。日本にいると日本の中の常識に囚われて、現在の国際的な流れという時代感覚を失いやすいからだ。それには言語の問題もあろう。ジュネーブ市役所の方の話しによれば、スイスには公用語がフランス語、ドイツ語、イタリア語、ロマンシュ語の4つがあるが、自分がフランス語話者なら、ドイツ語かイタリア語を勉強し、国際的な共通語である英語も勉強するという。彼らも努力して言語を身に付け、お互いのコミュニケーションに心を砕いている。私たちも日本語と英語は全然違うからと諦めたりせず、国際感覚を磨くために、英語やその他の言語の習得をすべきなのだと思った。
 
初めての国連人権理事会
 スタディ・ツアーが国際人権基準の実施状況について審議される人権理事会の開催期間に合わせて日程が組まれていたため、短時間ではあったけれども会議を傍聴することができた。日本の女性問題について溜飲の下がるような報告書を書いたクマラスワミ氏が出席していた人権理事会を傍聴したということに、私はとても感動した。私は単なる傍聴者であったが、同席しているような気分で興奮した。
 
国連人権理事会への期待と現実のはざまで
 人権理事会の説明をしてくださった人権高等弁務官事務所の職員に対し、参加者から日本政府は人権条約等についてNGOや特別報告者から批判を受けても日本独自の問題として政府は受入れない。勧告等が活かされるためには政府の仕組みを変えていかなければいけないのではないかという質問が出た。それに対する回答は、国に対する批判は、することに意味があるとのことであった。日本政府は、聞いて反論している。ということは関心を示しているということ。それが無い国はたくさんある。会議に参加して終わり。報告すらしない人もいるだろう。人権問題について自分たちが間違っているのか、国内法が間違っているのかを考える機会となっている。何も変わらないかもしれないけれども継続して討議していくことが必要であり、誰かが監視していかなければならないことであると。
 
 このような考え方は、私が関わってきたアムネスティのそれと共通すると思う。国際的な人道法を遵守していない政府や団体に対し、人権侵害について非難し、国際法の遵守を求める声を上げ、国際的な注目を集め、人権侵害を改善または抑止していくというアムネスティの活動を説明した後には「アムネスティ活動には成果がありますか」とよく質問された。それに対して、「多くの場合はないけれども、改善された例もある。その数少ない成果を励みに、少しでも活動の成果が表れるように一緒に活動していきましょう」と私は答えていた。国連もNGOも同じような問題を抱え、一向に改善が見られないような状況であっても、息長く続けるというスタンスをとっていることに共感を覚えた。そして少し残念でもあった。淡々と丁寧に説明をしてくださった職員の方たちに感謝したい。ここでは穏やかな気性でなければ勤まらないほど大変な仕事なのではないかと想像された。
 
人権を守る社会にするために
 国連の職員は人権が大切なのは理念ではわかっているけれども「実際にはどうすればいいのでしょうか」と聞かれるという。国連内であってもそうなのだから、日本で人権について教育機関や企業、個人でから受ける同じ質問に、憤ってばかりいてはいけないと思った。それぞれに丁寧に対応することに、日本の人権活動の活路が見出せるのではないか。人権そのものは普遍的であるものの、その適用において、個別の状況に合わせて噛み砕いていくことが必要なのだと。日本では「人権」という言葉さえはばかれる嘆かわしい状況であるが、国連の内部においても、人権は政治的なイメージが強く、「人権の主流化」と目標を掲げなければ軽視されてしまう。それが現実なのだ。国連内の人権活動から学ぶことは多い。
 
参加者から学ぶ
 スタディ・ツアーの参加者の方たちがとても多彩で楽しかった。参加者から学ぶことが多く、ツアーに出なくても十分に「スタディ」できるほどの人たちに出会えた。ジュネーブに行って感じたことからはかけ離れるかもしれないが、この企画がなければ出会えなかった人たちではないかと思い、最後にこっそりスタディ・ツアーの感想に加えたい。