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国連人権高等弁務官事務所、12月末に迫るミャンマー軍事政権による総選挙に深刻な懸念を表明(11/28)

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2025年11月28日、12月28日から開始が予定されているミャンマー総選挙に関して、深刻な懸念を示しました。以下、OHCHRのプレスリリースの日本語訳です。

 2025年12月、一部のミャンマー国民は、軍事政権によって一方的に実施される選挙で投票を開始します。国軍に管理されたこの投票は、市民の命を危険にさらす脅威と暴力に満ちた雰囲気の中で実施されることになるでしょう。
 悪化する治安状況と、市民を保護するための措置が欠如していることから、選挙に自主的に参加する、あるいは参加を強いられる投票者の安全に対する重大な懸念を引き起こしています。
 また、この選挙は、国軍が抑圧している環境下で行われます。多くの主要政党が排除されているほか、2021年以降、民主的に選ばれた政治家をはじめ3万人以上の軍事政権に反対する人々が拘束されています。
 選挙過程には深刻な差別の存在も浮上しており、ロヒンギャ、タミル(インド系の人々)、グルカ(ネパール系の人々)、中国系住民などのコミュニティの人々が投票から排除されています。市民社会や独立メディアはほとんど声を上げることができない状況に置かれています。国軍は反体制派を特定するための大規模な電子監視を強化しており、これが投票所で使用されることへの懸念も高まっています。
 さらに、国軍は国内の広域地域を統制できておらず、この選挙が意義ある形で、かつ代表性を確保して全国を網羅することは不可能です。戒厳令が現在も施行されている56群区は選挙から排除され、31群区に関しては、候補者不在のため、第1回投票(訳注1)では実質的な投票は行われません。
 今回の選挙のプロセスは、ミャンマーを危機から安定へと導き、民主的かつ市民による統治の回復を促すものとは程遠い状況にあることから、フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官は、この選挙がむしろ国内全域で不安、恐怖そして分断をさらに深めるのはほぼ確実であると述べました。最優先されるべきは、国軍による暴力を終結させ、人道支援の流れを確保することです。
 このような状況を踏まえれば、恐怖の中で国外に逃れたミャンマー国民を、いかなる国家であれ強制的に帰国させることは極めて不当です。深刻な人権侵害が続く中で、人権高等弁務官は、米国に対し、ミャンマー出身者に適用されているプログラムである一時保護資格(TPS)(訳注2)の終了を再考するよう要請しています。

(訳注1)
 投票は、2025年12月28日と2026年1月11日、そして日程未定の3回に分けて実施されるとされています。

(訳注2)
 一時保護資格(TPS)プログラムとは、自国へ安全に帰還できない国の国民に対し、一時的な滞在を認める米国の制度です。ミャンマーについては、2021年5月25日以降、軍事クーデター後の危機的状況を踏まえて適用されてきました。しかし、トランプ政権は11月24日、ミャンマー国民は安全に帰国できると主張し、TPSを終了させる方針を11月25日付で通知しました。TPSは通知から60日後に正式に失効することになっています。
 日本でも、ミャンマー情勢を踏まえ、在留を希望するミャンマー出身者に対し「緊急避難措置」が講じられており、在留および就労が認められています。

(訳:山本 恵理・ヒューライツ大阪インターン)

<出典>
https://www.ohchr.org/en/press-briefing-notes/2025/11/concerns-over-myanmars-upcoming-elections
Office of the High Commissioner for Human Rights: Concerns over Myanmar's upcoming elections (28 November 2025)

<参考>
https://www.uscis.gov/humanitarian/temporary-protected-status/temporary-protected-status-designated-country-burma-myanmar
U.S. Citizenship and Immigration Services: Temporary Protected Status Designated Country: Burma (Myanmar)
https://www.uscis.gov/humanitarian/temporary-protected-status
U.S. Citizenship and Immigration Services: Temporary Protected Status
https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00036.html
出入国在留管理庁(日本):本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置

(2025年12月08日 掲載)