イスラエルが米国の支援を受けて2025年2月に創設し、5月末から活動を本格化させた非政府組織「ガザ人道財団(GHF)」に対して、国連の専門家らは連名で深刻な懸念を表す声明を8月5日に出しました。
専門家らは、ガザへの支援を名目に活動を展開するGHFについて、「人道支援が国際法に重大に違反する形で、軍事的・地政学的な隠れた目的に利用されうることを示す、極めて憂慮すべき事例である」と指摘し、「イスラエルの情報機関、米国の契約企業、そして実態が不明な非政府主体が絡み合っており、国連の枠組みによる強固な国際的監視と行動の緊急性を浮き彫りにしている」と述べます。
「いかなる状況においても、戦争犯罪が一時的な救済と引き換えに黙認されれば、免責が常態化するおそれがある。それどころが今回は、ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪で非難されている当該国に、ジェノサイドの被害を受けた人びとへの食糧供給を監視もなく免責したまま任せている。このあからさまな偽善に非常に動揺している。」
GHFは、これまでパレスチナ難民支援を担うUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)をはじめとする国連の諸機関が行ってきた支援業務を引き継ぐ形で設立されましたが、それ以降、イスラエル軍および外国の軍事請負業者が、GHFが運営する「配給拠点」と称される場所で支援を求める人びとに無差別に発砲し続けています。食料を求めて殺害された人はすでに約1,400人、負傷者は4,000人を超えています。GHFの活動が本格化した2025年5月末以降、少なくとも859人がGHFの周辺で殺害されました。とりわけ、女性、子ども、障害者、高齢者など、最も脆弱な状況にある人びとにとっては、支援にアクセスすることが著しく困難になっています。
専門家らは、「このような仕組みを"人道支援"と呼ぶことは、イスラエルによる人道を装った偽装行為の一部であり、人道支援の営みとその基準への侮辱である」と強く批判します。
このような事態は、住民の90%以上が強制移動させられ、ガザでの死者数がすでに6万人を超えているという悲劇的状況のなかで発生しており、ガザの保健省は既に180人が栄養失調により死亡し、そのうち93人が子どもであると報告しています。
「親の腕のなかで、飢えにより命を落としていく子どもたちを目にして、奮起しないわけにはいかない。」
「支援を妨げたり遅らせたりすることは、単に非人道的であるというだけではない。市民を飢えさせることを意図して行われる場合、それは戦争犯罪である。今回のケースは、詳細に記録され、国際的に非難されているジェノサイドの文脈において起きている」と専門家らは指摘します。
「食料、水、医薬品、その他の重要なサービスへのアクセスの確保は、慈善ではなく法的義務である。とりわけ、それが違法に占領されたパレスチナの地である場合には、なおさらである。国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエルによる占領を違法と認定し、イスラエルに対して軍の撤退、入植地の解体、パレスチナ資源の搾取と人種的隔離の停止を命じている。イスラエルはこの判断に従うべきであり、国連加盟国はその履行を支援しなければならない。」
専門家らは、「GHFを解体し、その運営責任を問うことで、人道支援の信頼性と効果を回復しなければならない。そして、国連や市民社会の経験豊富な人道関係者が、命を守る支援活動の管理と配給を再び担うべきである」と述べ、イスラエルによる数多くの国際法違反を踏まえ、すべての国連加盟国に対し、イスラエルに対する全面的な武器禁輸措置を講じること、パレスチナ人に被害を与える可能性のある貿易・投資協定を停止すること、企業の責任追及を行うことを求めています。
*署名した国連専門家一覧(抜粋)
フランチェスカ・アルバネーゼ(1967年以降占領下のパレスチナ地域における人権状況に関する特別報告者)
小母方智也(現代的形態の奴隷制に関する特別報告者)
シオバン・マラリー(人身売買、特に女性と子どもに関する特別報告者)
トラレン・モフォケン(最高水準の身体的・精神的健康を享受する権利に関する特別報告者)
他、国連特別報告者・作業部会メンバー計30名以上
【出典】
UN experts call for immediate dismantling of Gaza Humanitarian Foundation
(2025年08月13日 掲載)