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米国トランプ政権、ユネスコから再び脱退へ(7/22)

 米国のトランプ政権は7月22日、米国がユネスコ(国連教育科学文化機関)から脱退する決定を、ユネスコのアズレ事務局長に伝えました。米国はトランプ政権1期目の2018年にユネスコから脱退しましたが、その後、バイデン前政権の意向を受け、2023年に再加盟していました。今回の脱退は2026年12月31日に発効します。脱退の通告を受け、アズレ事務局長は同日、深い遺憾の意を示しました。以下、米国国務省とユネスコ事務局長による声明の日本語訳です。

米国国務省声明:米国、国連教育科学文化機関(ユネスコ)から脱退
2025年7月22日

本日、米国はユネスコのオードレ・アズレ事務局長に対し、ユネスコから脱退する決定を通知しました。米国政府は、ユネスコへの関与を続けることが米国の国益にかなうものではないと判断しました。

ユネスコは、分断を招くような社会的・文化的な理念を推進しており、国連の「持続可能な開発目標」に過度なまでの重点を置いています。これは、「米国第一」の外交政策とは相容れない、グローバル主義的かつイデオロギー色の強い国際開発アジェンダです。ユネスコがパレスチナを加盟国として承認した決定は、米国の政策に反しており、同機関内における反イスラエル的な言説の拡散を助長するものです。

米国の国際機関への関与については、今後、明確かつ確固たる信念のもと、米国の国益の推進に重点を置いていきます。

ユネスコ憲章第2条第6項(訳注)に基づき、米国の脱退は2026年12月31日付で発効します。それまでは、米国はユネスコの正式な加盟国としての地位を維持します。

ユネスコ事務局長オードレ・アズレ声明:米国のユネスコ脱退について
パリ・2025年7月22日

ドナルド・トランプ大統領が米国のユネスコからの再度の脱退を決定したことを、誠に遺憾に思います。この決定は2026年12月末に発効します。

この決定は、多国間主義の基本原則に反するものであり、特に、世界遺産登録を目指す地域社会やユネスコ創造都市ネットワークへの登録を目指す都市、そして大学機関など、米国の多くのパートナーに対して影響を及ぼす可能性があります。

この発表は残念ですが、予想されたものであり、ユネスコは対応の準備を進めてきました。

近年、ユネスコは大規模な構造改革を実施し、財源の多様化を進めてきました。2018年以降の取り組みの成果により、米国からの拠出金の減少を埋め合わすことができており、米国の拠出金は、他のいくつかの国連機関では負担割合が40%に対して、ユネスコは総予算の8%にとどまっています。一方、ユネスコ全体の予算は着実に増加しています。今日、多くの加盟国や民間寄付者からの安定した支援により、ユネスコの財政基盤は以前にも増して強固なものとなっています。2018年以降、これらの自発的な拠出金額は倍増しています。

現段階では、ユネスコとして職員の人員削減を検討していません。

2017年にドナルド・トランプ大統領が最初の脱退を決定したにもかかわらず、ユネスコはその使命が平和に寄与できるあらゆる分野で活動を促進し、その任務の重要な役割を実証してきました。

ユネスコは、2018年に開始したイラクのモスル旧市街の再建という、ユネスコ史上最大規模の取り組みを成功裏に完了しました。また、人工知能の倫理に関する、世界初かつ唯一の国際的な規範設定文書を採択し、ウクライナやレバノン、イエメンなど紛争地域における文化と教育を支援する主要なプログラムを展開してきました。さらに、生物多様性や世界自然遺産の保全、女子教育の推進にも積極的に取り組んでいます。

米国が今回の脱退理由として挙げている点は、状況が大きく変化し、政治的緊張も緩和された現在においても、7年前と同じです。しかし今日のユネスコは、具体的で行動志向の多国間主義のための稀に見る合意形成のフォーラムとなっています。

米国の主張は、特にホロコースト教育や反ユダヤ主義との闘いの分野において、ユネスコの実際の取り組みと矛盾しています。

ユネスコは、これらの課題に関して責任を持つ唯一の国連機関であり、その活動は、ワシントンDCのアメリカ・ホロコースト記念博物館、世界ユダヤ人会議およびそのアメリカ支部、アメリカ・ユダヤ人委員会(AJC)といった著名な団体から一致して高く評価されています。ユネスコはこれまで85か国に対し、ホロコーストやジェノサイドについて教育ツールや教員研修を提供し、ホロコースト否定やヘイトスピーチとの闘いを推進してきました。

資源が減少することは避けられないものの、ユネスコはこれらの使命を引き続き遂行していきます。

ユネスコの目的は、世界のすべての国を歓迎することであり、米国は現在も将来も歓迎されます。

今後も、米国の民間部門、学術界、非営利組織(NPO)のすべてのパートナーと協力し、米国政府および議会との政治的対話を継続していきます。

訳注:ユネスコ憲章第2条6項には、加盟国の脱退に関する規定が定められており、加盟国は事務局長にあてた通告によってユネスコから脱退することができます。この通告による脱退は、通告が行われた年の翌年の12月31日をもって効力を生じるとされており、また、その脱退は発効時点で該当国がユネスコに対して負っている財政上の義務には影響を及ぼさないことが明記されています。

(訳:山本 恵理・ヒューライツ大阪インターン)

<出典>
https://www.state.gov/releases/office-of-the-spokesperson/2025/07/the-united-states-withdraws-from-the-united-nations-educational-scientific-and-cultural-organization-unesco/
U.S. DEPARTMENT of STATE: The United States Withdraws from the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization (UNESCO)

https://www.unesco.org/en/articles/withdrawal-united-states-america-unesco-statement-audrey-azoulay-director-general
UNESCO: Withdrawal of the United States of America from UNESCO: statement by Audrey Azoulay, Director-General

<参照>
https://www.mext.go.jp/unesco/009/001.htm
文部科学省:国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章)/The Constitution of UNESCO


(2025年07月31日 掲載)