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ILO、憲章第33条に基づき、ミャンマー軍政に対して制裁を発動する決議を採択(6/18)

 国際労働組合総連合―アジア太平洋組織(ITUC - Asia Pacific)は6月5日、国際労働機関総会 (ILO総会) においてミャンマー軍事政権に対する制裁措置の発動権限を含むILO憲章第33条決議が採択されたことを受け、これを歓迎するとともに、国際的な行動を呼びかけました。以下はその声明の日本語訳です。

[ジュネーブ2025年6月5日]
 第113回国際労働総会(ILO総会)において、ミャンマーの軍事政権に対してILO憲章第33条の発動を盛り込んだ決議が、全会一致で採択されるという画期的な決定がなされました(内容は末尾記載の参照文書7〜9ページ。制裁措置は、ILOが国連機関に対して経済支援をはじめとする対ミャンマー支援の停止や縮小を求めることを可能とする内容)。国際労働組合総連合(ITUC)は、ILO創設から100年におよぶ長い歴史の中で、第33条 の適用が決議されたのは今回でわずか3回目であることから、この決議を歴史的な取り組みとして歓迎します。

 今回の異例の措置は、軍事政権によって現在も続く、かつてない規模の基本的労働権および人権の侵害がいかに深刻であるかを浮き彫りにすると同時に、2021年2月の違法な政権奪取以降、系統的な抑圧が続いている状況に対し、国際社会による強い非難を表明するものです。またこの決議は、とりわけ労働組合員に対する暴力的な攻撃、広範囲に及ぶ強制労働、市民的自由の破壊といった軍事政権の行為が、ILO第87号条約(結社の自由および団結権の保護に関する条約)および第29号条約(強制労働に関する条約)に対する重大な違反であることを明確に示しています。

 国際労働組合総連合-アジア太平洋組織の吉田昌哉書記長は、「いままさに、決断の時です」と述べたうえで、次のように語りました。「本日の決議は、国際社会が協力して進めてきた努力の終着点ではなく、新たな始まりでなければなりません。軍事政権の責任を追及し、結社の自由とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が完全に実現された民主的なミャンマーの再建を支援するための、国際的な取り組みの出発点となるべきです」

ILO憲章第33条がミャンマーにとって意味すること
 この決議は、ILO調査委員会の勧告を完全かつ効果的に履行するよう求めています。勧告には、例えば「労働組合指導者に対するあらゆる形態の暴力、拷問、非人道的な扱いを直ちに停止すること」や、「労働組合活動や平和的なデモ、さらには政権に批判的な意見を表明したために拘束されているすべての人々を無条件で釈放すること」などが含まれています。

 重要なのは、この決議がミャンマー国やその市民を対象としたものではなく、正当性や説明責任を欠いたまま実権を握り続けている軍事当局を対象としている点です。決議は、ILOの構成主体である各国政府、雇用者団体、労働組合に対し、いかなる形であれ軍事政権による継続的な人権侵害を助長・支援しないよう、軍事政権との関係を見直し、必要な措置を講じることを求めています。これには、抑圧や強制労働の永続化につながるような物資やサービスの提供、投資の流れなど、あらゆる形態の協力が含まれます。

ミャンマーの労働組合代表からのメッセージ
 第113回ILO総会の全体会議において、ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)のマウン マウン会長は、ミャンマーの労働者、ミャンマー労働同盟、そして国民統一政府の三者代表団を代表して、各国代表団に向けて録画による声明を発表しました。マウン マウン会長は、軍事政権が国際労働基準を無視し、労働者や市民社会に対する残虐な弾圧を続けていることを指摘し、ILO憲章第33条に基づく決議に対する強力かつ即時の支持を要請しました。

 マウン マウン会長は次のように述べています。「ミャンマーが第33条の措置の対象となるのは今回が2度目 であり、これはミャンマー軍が労働者の権利を悪質かつ広範に侵害している現状を反映しています」

マウン マウン会長はILOに対し、以下の対応を求めました。
・労働組合活動を理由に拘束されている、ミャンマー産業・クラフト・サービス労働組合連盟(MICs-TUFs)のテット ニン アウン事務局長および、ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)のキン ス ス ライン氏を、即時かつ無条件で釈放すること。
・軍事政権に抗議して市民的不服従運動(CDM)に参加した30万人以上の公務員を復職させること。

 マウン マウン会長は、軍による弾圧の結果、何百万人もの人々が正規・非正規の移民としてタイ、マレーシア、その他の近隣諸国に避難を余儀なくされており、これがASEAN域内の広範な不安定化を招いていることを強調しました。さらに、無差別の空爆、強制徴兵、発砲、学校・病院・宗教施設への攻撃など、市民が日々直面している恐怖についても言及しました。

 また、マウン マウン会長は、ILOの構成組織、国際労働組合総連合(ITUC)、および国際産業別労働組合組織(GUFs)による今回の決議推進に対し、深い感謝の意を表明しました。あわせて、ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)としても、ILOによる決議の実施状況のモニタリングを引き続き支持する姿勢を改めて表明しました。

 そしてマウン マウン会長は、次のように明言しました。「ミャンマーは崩壊していません。ミャンマー国軍こそがミャンマーを崩壊させようとしているのです」

ミャンマーとの国際的な連帯
 国際労働組合総連合―アジア太平洋組織(ITUC - Asia Pacific)は、ミャンマーの労働者との連帯を再確認し、民主主義、人権、そして労働組合の自由の回復に向けた闘いへの継続支援を誓いました。

 国際労働組合総連合―アジア太平洋組織の吉田昌哉書記長は次のように述べました。「この歴史的決議は、転換点となるべきものです。今、問われているのは、国際社会がこの非難を具体的な行動で裏付けることができるかどうかです。軍事政権を孤立させるだけではなく、自由と民主主義のために闘い続けているミャンマーの労働者や労働組合員の声に、どう応えていくのかが試されています」

(訳:山本 恵理・ヒューライツ大阪インターン)

<出典>
https://www.ituc-ap.org/news-and-updates/breaking-ilo-invokes-article-33-on-myanmar-ituc-asia-pacific-hails-decision-and-calls-for-global-action
BREAKING: ILO invokes Article 33 on Myanmar; ITUC-Asia Pacific hails decision and calls for global action (5 June 2025)

https://www.ilo.org/ja/resource/%EF%BD%89%EF%BD%8C%EF%BD%8F%E6%86%B2%E7%AB%A0%E3%80%81%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E5%AE%A3%E8%A8%80
国際労働機関:ILO憲章、フィラデルフィア宣言

<参照>
https://www.ilo.org/sites/default/files/2025-06/ILC113-Record-2A-%5BSECTOR-250602-001%5D-Web-EN.pdf
International Labour Organization: Reports of the General Affairs Committee, International Labour Conference - 113th Session, Geneva, 2025

(2025年06月30日 掲載)