東京電力福島第一原子力発電所の多核種除去設備(ALPS)で浄化処理されたALPS処理水の取扱い、特にその海洋放出に関して6名の特別報告者*が懸念を表明し、日本政府に情報の提供を求める書簡(2025年3月19日付)を送っていたことに対し、日本政府は5月16日に回答を提出しました。
特別報告者らによる書簡では、ALPS処理水の安全性レビューに関し、国際原子力機関(IAEA)が2023年7月に公表した包括的報告書(2023年IAEA報告書)において海洋放出による人や環境への影響は無視できる程度と報告していることを認識しつつ、IAEAによるレビューで用いられた安全基準のうちいくつかは古く、「正当な科学的裏付けを提供するものとして適切とは思われない」と指摘し、また、海洋放出によって影響を受けた人々が救済を受ける権利を確保するために日本政府がとった措置、あるいはとることを想定している措置などについて情報提供を求めていました。
日本政府は、ALPS処理水の取扱いについて専門家グループによる長年にわたる包括的な議論を経て海洋放出が選択されたとし、「安全基準を満たしていることを確認した上で実施されるため、環境や人体への影響は考えられません」と回答しています。また、2023年IAEA報告書において海洋放出が国際安全基準に合致し、「人及び環境に対する放射線影響は無視できるほど」であると結論付けられたことを複数回にわたって強調しています。
2023年8月にALPS処理水の海洋放出が開始されて以来、2025年5月時点で12回の放出が完了しています。
*6名の特別報告者は以下の通り。
マルコス・オレリャーナ「有害廃棄物」特別報告者
アストリッド・リアノ「環境と人権」特別報告者
マイケル・ファクリ「食糧の権利」特別報告者
ジーナ・ロメロ「平和的集会・結社」特別報告者
パウラ・ガヴィリア「国内避難民」特別報告者
ペドロ・アロホ-アグド「水と衛生」特別報告者
【出典】
特別報告者6名からの情報提供要請に対する日本政府の回答(東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水)(外務省ウェブサイト)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/pagew_000001_01661.html
(2025年06月11日 掲載)