MENU

ヒューライツ大阪は
国際人権情報の
交流ハブをめざします

  1. TOP
  2. 資料館
  3. ニュース・イン・ブリーフ
  4. 国連人権高等弁務官事務所、ミャンマーの平和、包摂性、民主主義への願いを実現するための道筋を示す報告書を作成(5/26)

ニュース・イン・ブリーフ サイト内検索

 

Powered by Google


ニュース・イン・ブリーフ Archives


国連人権高等弁務官事務所、ミャンマーの平和、包摂性、民主主義への願いを実現するための道筋を示す報告書を作成(5/26)

 国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) は5月26日、7月の人権理事会に提出するミャンマーに関する報告書の概要を発表しました。報告書は、ミャンマーの人権状況を分析し、民主主義の実現に向けた道筋を示す内容です。以下、同事務所のプレスリリース全文の翻訳です。

[ジュネーブ2025年5月26日]
 数年間にわたる苦しみと虐待に直面しながらも、ミャンマーの大多数の人々は軍事的権威主義と暴力に対して、団結して立ち向かっているという報告書を人権高等弁務官事務所はこのほど作成しました。報告書では、力による国軍の支配に終止符を打ち、民主化を望むミャンマーの人々の願いを支援するため、国際社会に対して決意を新たにするよう求めています。

 フォルカー・トゥルク人権高等弁務官は、「2021年にミャンマー国軍がクーデターによってミャンマーの民主的な道を閉ざして以来、鎮まることのない暴力と、日常生活すべての領域に関わる残虐行為によって深刻化する人権危機を、ミャンマーは耐え抜いている」と述べます。

 「過去数ヶ月にわたり、わたしたちの現地事務所ではあらゆるエスニックコミュニティ、セクター、年齢、性別、居住地などにわたるミャンマーの人々からの相談を受けており、特に将来のビジョンに関する若者たちの声を入念に聞き取っている」と高等弁務官は語りました。「彼ら / 彼女らは一つの思いを胸に結束しています。それは、武力による支配を望まず、平和で包摂的かつ民主的な社会を切望しているということです」

 2025年7月の国連人権理事会に提出される予定の報告書は、人道危機に対して根本的な対策がなされていないことを強調しており、現実には、軍による政治的・経済的権力の集中、刑事免責の常態化、軍の利益を優先した法律や制度の濫用、そして構造的な人種差別、かつ排除と分断に基づく統治制度が見受けられるとしています。

 報告書は平和、包摂性、民主主義への願いの実現のために、説明責任、グッドガバナンス(良い統治)、持続可能な開発、国際的および地域的なレベルでのステークホルダーのアクションの4つの分野に着目しています。

 加えて、報告書は女性、若者、市民社会組織、草の根ネットワーク、民主化促進アクターとメディアを「変革の担い手」として位置づけています。報告書での様々な証言が軍事政権のコントロール下にある機関や経済構造の解体を求め、特に国軍自らの利益を目的とした経済搾取や天然資源の収奪について強調しています。

 元政治囚たちは、司法機関が人権侵害に加担していることを強調しており、裁判官は独立した権限を持って判決を下すことを怠り、証拠不十分のまま個人に有罪判決を下し、何千人もの人々を投獄していると指摘しています。また、法の専門家は、司法システム全体が軍事政権に従属的であるため、人々からの信用を再び得るためには、根本的な制度の見直しが必要だと述べています。

 さらに、マイノリティやロヒンギャ、その他の周縁化されたコミュニティに対する人権侵害と虐待を含め、過去の人権問題への認識が広がっています。犯罪行為を行ったすべての人物は、国際基準に沿った法の裁きを受けるべきです。報告書は、国内法、国際法、またはハイブリッドな法制度を通じた刑事責任の追求が、移行期の法的措置の一環として重要であることを強調しています。アウンサンスーチー氏を含む全ての政治囚の解放が必要であることも、報告書内で一貫して述べています。

 報告書は、地域コミュニティによる地域レベルの独自の機関の設立とガバナンスの確立が成し遂げられていることを指摘し、ミャンマーの多くの地域では、より多くの女性が参加し、ボトムアップ型の民主的組織が構築されつつあることを述べています。

 さらに、報告書によれば、避難を余儀なくされた人々のほぼ全員が、安全が確保され次第、故郷に戻り、公平で民主的な社会の構築に貢献したいという意思を示していることが明らかになっています。こうした人々を支援するために、現時点で最も実践的な支援策の一つは、彼らが庇護を求めている国における、正規のより長期的な法的地位の付与です。これは、医療、教育、雇用機会へのアクセスを可能にするものであり、特にロヒンギャの人々にとって不可欠です。なぜなら、彼ら / 彼女らにとって、安全性、国籍、持続可能な帰還に不可欠の諸権利などの前提条件がまだ整っていないからです。

 ミャンマーのラカイン州における食料不安の深刻化が続く中、避難先のバングラデシュでの人道支援予算は大幅な削減を迫られ、持続的かつより多くの支援が緊急で必要となっています。ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国* や他のステークホルダーは、ロヒンギャの人々が直面する困難を解決するために、国境を超えた支援の道を模索すべきです。

 ミャンマーの人々は、より効果的で断固たる対応を求めています。具体的には国際社会による適切で的を絞った制裁措置の導入や、民主勢力と新たな統治機構による政治的関与を求めています。

 「この報告書は、人権を最前線に据え、人権こそが中核的な存在となるような新しいミャンマーを見据えて、より踏み込んだ計画を立てていくことの重要性を示しています」とトゥルク氏は述べています。「強さと知恵、そして揺るぎない信念を持つ多くの個人やグループが存在し、より包摂的で民主的な未来に向けての土台を築いています。彼ら / 彼女らこそが平和な未来を実現するための輝く希望の星なのです」

*訳注:2025年5月27日、ASEANは戦闘が続くミャンマー情勢に関する首脳声明を発表し、3月に発生したミャンマー地震の後、国軍と民主派勢力が一時停戦を発表したことを評価するとともに、停戦のさらなる延長と拡大を求めました。また、すべての当事者に対し、民間人および公共施設への攻撃を直ちに停止するよう要請し、ミャンマー国内のステークホルダー、ASEAN加盟国、外部関係機関などの連携によって、暴力の即時停止と効果的な人道支援の実現を図るよう求めました。
 一方、ASEAN加盟国の国会議員で構成されるASEAN人権議員連盟(APHR)は5月30日、その声明を批判する声明を発表しました。APHRは、ASEAN首脳声明が一般的な合意に依拠しすぎるあまり、人権保護と民主化の実現に向けた具体的な仕組みや、独立した監視システムが不在であると指摘しています。さらに、停戦の実施を担保する強制力のある仕組みが存在しないため、ASEAN域内の人権が政治の影に埋もれ、軍の残虐行為による影響が拡大する可能性に警鐘を鳴らしています。

(訳:山本 恵理・ヒューライツ大阪インターン)

<出典>
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2025/05/myanmar-un-report-maps-pathway-fulfil-aspirations-peace-inclusivity-and
Myanmar: UN report maps pathway to fulfil aspirations for peace, inclusivity and democracy (26 May 2025)

https://asean.org/wp-content/uploads/2025/05/FINAL-ASEAN-Leaders-Statement-on-an-extended-and-expanded-ceasefire.pdf
ASEAN Leaders' Statement on an Extended and Expanded Ceasefire in Myanmar (27 May 2025)

https://aseanmp.org/publications/post/asean-vision-2045-falling-short-on-human-rights-and-democratic-reform-says-aphr/
ASEAN Vision 2045 Falling Short on Human Rights and Democratic Reform, Says APHR (30 May 2025)

(2025年06月06日 掲載)