*「ナクバ」とは、1948年5月のイスラエル建国に前後して70万人以上のパレスチナ人が故郷を追放された悲劇をあらわす言葉で、アラビア語で「大厄災」を意味します。毎年5月15日を「ナクバの日」としています。
「被占領地のパレスチナ人および他のアラブ人の人権に影響を与えるイスラエルの慣行を調査する特別委員会」(以下、特別委員会)は5月5日から5月9日までヨルダン・アンマンへの年次現地調査を行い、ミッションの終了声明を発表しました。特別委員会は、1967年以降にイスラエルが占領したパレスチナおよびその他のアラブ領土におけるイスラエルの慣行を調査するため、1968年12月に国連総会によって設立されました。現在、マレーシア、セネガル、スリランカの3カ国の国連常駐代表によって構成されています。
声明によると、2023年10月7日以来、ガザでは52,760人が、西岸地区でも925人が殺害され、さらに数万人がいまも瓦礫の下に埋もれています。その多くは女性と子どもです。特別委員会は、2024年11月に第79回国連総会に提出した報告書においても、イスラエルの政策と慣行が「ジェノサイドの特徴と一致する」と結論づけていましたが、そのころよりも状況はさらに悪化していると述べます。
「イスラエルは、より広範な植民地主義的野望の一環として土地の没収を急速に拡大しながら、占領下にある人々に対し、想像を絶する苦しみを与え続けている。私たちが目の当たりにしているのは、まさに第二のナクバである可能性が非常に高い」と、特別委員会は警鐘を鳴らします。
今回の現地調査において、特別委員会は数多くの関係者から直接の証言を聞き、イスラエル政府の政策、行動、慣行が、民間人の大量かつ無差別な殺害、強制失踪、民族浄化、そして占領およびアパルトヘイト体制のもとにある人々の完全な隷属へとつながっていると指摘します。
特別委員会は、現地調査で得た証言に基づいて「拷問およびその他の残虐、非人道的、あるいは品位を傷つける処遇または処罰、なかでも性暴力が、イスラエル軍および治安部隊によって体系的に行われており、イスラエルの刑務所や軍事拘禁施設において広く蔓延している」と述べ、「その手段はまるで、人間を辱め、価値を貶め、恐怖を植え付けることを目的とした教本である。最初にセクシュアルハラスメントや局部への不適切な接触があり、次に性的虐待、レイプの脅迫、そして実際のレイプへと続く。これには棒や警棒といった異物を用いた集団レイプも含まれ、被害者は男性、女性、そして子どもにまで及ぶ」と非難しています。
特別委員会の訪問は、イスラエル政府がガザへの人道支援を完全に封鎖することによって食料に対する権利を「兵器化」している状況下で行われました。
「食料トラックがわずか数キロ先にあるというのに、政府が人々を餓死させるためにこのような非道な政策を実行している世界など想像することすら困難である。にもかかわらず、これがガザに生きる人々の過酷な現実なのだ。」
特別委員会は、イスラエルが協議の要請に応じず、イスラエル本国、占領下パレスチナ地域、あるいは占領下のシリア・ゴラン高原に入ることを認めなかったことに遺憾の意を示し、同国がこのように国連任命機関との関与を一貫して拒み、国連安全保障理事会および総会の決議や国際司法裁判所の拘束力のある命令や勧告をも無視し続けていることは、「国連加盟国としての国際法上の義務を完全に無視している証」であると評しています。
「イスラエルは、自らの行動、政策、慣行について、占領下パレスチナ地域およびシリアのゴラン高原におけるおぞましい犯罪に対して一切責任を問われることはないという、完全な免責のもとにあると確信しているようである」と述べ、「この占領は終わらなければなりません。そうして初めて、深刻な人権侵害も終わるのです。免責が容認されてはならない」と訴えます。
特別委員会は、影響力を持つ諸国に対し、あらゆる政治的・経済的圧力、そしてあらゆる手段を用いてイスラエル政府に違法な政策や慣行を中止させ、既に行われた多数の戦争犯罪および人道に対する罪について責任を問うよう強く求めています。
「封鎖は今すぐに解除されなければならない。また、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)は、その独自の任務を遂行し、必要不可欠なサービスを提供できるようにされなければならない。武器の販売および軍事支援も、民間企業や国営企業を通じたものも含めて、停止しなければならない。世界は沈黙してはならない。」
特別委員会は2025年10月に報告書を国連総会に提出する予定です。
【参照】
UN Special Committee on Israeli practices in occupied territories warns of a second Nakba
https://www.ohchr.org/en/press-releases/2025/05/un-special-committee-israeli-practices-occupied-territories-warns-second
(2025年05月15日 掲載)