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企業と人権に関する条約案を提出

経過

 2014年6月、国連人権理事会は、企業の活動を規律する法的拘束力のある国際人権条約案を起草する政府間作業部会を設置し検討することを決議し、これまで3回の会期が開催され、条約案の範囲、形式、内容などについて議論が行われてきました。
 政府間作業部会の第4回の会期が2018年10月15日から19日に開催されるのに先立ち、議長国を代表してエクアドルの政府代表部が、これまでの議論と2018年に開催された非公式会合の内容を踏まえ、企業の活動による人権侵害の被害者への司法へのアクセスと救済の確保を趣旨とする条約案の文書を作成し、2018年7月19日に人権高等弁務官に送付しました。

概要

 条約案は対象を、多国籍的性格を有する企業活動としており、いわゆる多国籍企業に限定していません。多国籍的性格を有する企業活動は、二つ以上の国の管轄において起こる、管轄内の行動または人が関わる、または影響を及ぼす、自然人、法人による、電子手段を含む営利を目的とする経済活動と定義されています(第4条2)。
 一方、条約案では直接企業に義務を課すのではなく、締約国に、企業活動による人権侵害の被害者が、迅速に救済を得られるよう、裁判所などへのアクセスを保障すること、救済の法手続きについて情報を提供し、権利請求の手続きの際に支援すること、人権侵害を迅速に、徹底的に捜査すること、国内外の判決を含む救済の執行のための制度をつくること、手続きの前後、およびその途中において、被害者、その代理人及び家族をプライバシーの侵害、脅迫や報復から保護することなどの義務を課しています(第8条)。
 また、企業活動による人権侵害の防止のために、締約国に、領域内のまたは管轄下にある多国籍的性格を有する企業活動を行なう企業に対し、その活動の人権に対する影響をモニターし、防止することを含むデュー・ディリジェンス義務を果たすことを確保し、違反に対して相応の責任及び補償を科すことを義務づけています(第9条)。
 締約国間で、捜査や司法手続きの際の共助を行うことも規定しています(第11条)。また実施措置については、締約国はとられた措置に関する報告を、締約国によって選出された個人の専門家による委員会に提出し、その委員会が報告を検討し、見解や勧告を提供すると規定しています(第14条)。

今後の動き

 10月の作業部会では、この条約案をもとに交渉が行われる予定です。2014年の政府間作業部会設置の決議も賛成20、反対14、棄権13と意見が割れ、作業部会の参加国の間でも拘束力のある文書をつくることには消極的な意見が出されていました。この条約案は、経済界などからの反対が大きい、企業の直接の義務を外し、人権侵害の防止と被害者の司法へのアクセスと救済を中心においています。

(構成:岡田仁子)

<参照>

(2018年08月10日 掲載)